首藤康之
東京公演レポート |
3月中旬からの全国公演を控え、東京での「白鳥の湖」の公演がひとまず千秋楽を迎えた3月12日。ストレートプレイ作品「SHAKESPEARE'S
R&J」への出演を終えた首藤康之が、夜の部の公演に王子役で登場した。
その一週間前の3月5日に王子役デビューを果たし、この日が三度目の出演となった首藤演じる王子は、物語の冒頭から圧倒的な孤独感に色濃く包まれた存在。しなやかで美しい踊りとこまやかな演技の中に、何人にも侵しがたい意志の強さを感じさせる。人生において高く掲げた理想がついえ、絶望した瞬間に白鳥に出会う、そんな王子の物語を演じてみせた。
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ザ・スワン/ザ・ストレンジャー役としてコンビを組んだのは、前二回の公演と同じく、ジェイソン・パイパー。ザ・スワンのときも、ザ・ストレンジャーのときも、クリストファー・マーニー扮する王子を相手にしたときよりも数段アグレッシブな姿勢で、首藤演じる王子に立ち向かっていく姿が強く印象に残った。その結果、第三幕の男同士のタンゴ・デュエットの場面も、他のコンビが踊るときよりも鮮烈なエロティシズムを濃厚にただよわせるものとなっていた。
終演後、客席はスタンディング・オベーションとなり、他公演と重なるハード・スケジュールの中、王子という難役を踊りこなした首藤の力演、そして半月あまりの東京公演を無事終えたダンサーたちの熱演を、熱狂的にたたえた。約半月の全国公演を経て、4月6日、再びオーチャードホールに舞い戻ってくる「白鳥の湖」。物語のさらなる深化を心から期待したい。
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text by 藤本真由(フリーライター)
photos by 瀬戸秀美© |