牧阿佐美バレエ団の若手として注目を集めていて、「ローラン・プティの世界」にも出演する菊地研氏と、AMP「白鳥の湖」のスターダンサー、アダム・クーパー氏の対談が行われました。
対談を進めるうちに、弱冠18歳の菊地氏が、大先輩であるアダム氏からアドバイスをうける形になり、そのアドバイスを受け、きっと素晴らしい舞台をみせてくれることでしょう。
海外での活動も多いお二人に、海外での仕事の時に心がけていることや、同じ役を何度も踊ることについての気持ちなどを伺いました。

――― どうやったらアダムさんのようにセクシーな表現をダンスで出せるようになるのでしょうか?「ノートルダム・ド・パリ」でフェビュス役を演じるうえで必要だと思うので教えてください。
アダム:難しい質問ですね(笑)。でも、実は簡単なことなんですよ。セクシーな表現は、周りが自分の雰囲気に反応してくれることで、ますます出しやすくなります。あまり頑張って色気を出そうとしない方が良いです。自分を信じてしっかりやれば大丈夫です。

――― アダムさんは、いつそのセオリーに気づいたんですか。
アダム:他の人を見ていると、外見だけで一生懸命に表現しようとしすぎる人からは、内面的なものを感じられませんでした。心で踊ることがとても大切だと思っています。自分が演じているキャラクターの気持ちがわかっていれば、自然と踊りにも表れてくるので、表面的に作ろうとしない方が良いと思います。

――― 18歳の頃には、何を考えてバレエをしていましたか。
アダム:かなり昔のことなので覚えていませんね(笑)。
18歳の頃は、かなりプレッシャーを感じていました。菊地さんと同じように良い役をもらっていたので、周囲からの期待もありましたからね。けれど、周りのプレッシャーに負けないで、踊るのが好きだから自分が踊りを始めたという、初心を忘れないで楽しんでやることが大事です。それと広い視野で自分がおかれている立場を見ていれば大丈夫だと思います 。

――― ポジティブな出会いを活かして自分の運命を引き寄せる人は違うと思いますか。
アダム:ダンサーの寿命は、ある意味では他の職業に比べて短いですね。活躍している間はともかく、ありとあらゆるチャンスをつかむようにした方が良いと思います。ただ待っていないで、自分から積極的に捜すような努力が必要だと思います。日々いろいろな事を学習して、いろいろなスタイルで踊るうちに成長していけると思います。
僕自身もロイヤル・バレエにいるだけの時期は楽だったのですが、その後にいろいろな活躍の場を得てずいぶん成長したと思います 。

――― 失敗したときはどうするですか。
アダム:失敗したことはありません。(笑)
けれど、やはり経験して失敗したことが勉強になって、二度とやらないわけで。もっと追求した方が良い出会いもありますので、色々とトライすべきです 。

――― バレエダンサーになろうと決めたのはいつですか。
アダム:小さい頃は、音楽、演技、歌など人前で演じることをいろいろやっていました。ダンスの道に進むと決めたのは14歳の時で、特にバレエだけと決めていたわけではないのですが、兄がたまたまロイヤル・バレエ団に入っていたこともあり、16歳の時にロイヤル・バレエ団に入って、一生懸命努力しているうちに、正式なカンパニーのメンバーになったんです。ただ意識的にバレエダンサーをやろうと決めたわけではありません。

――― プレッシャーの克服の仕方を教えてください。
アダム:稽古場では、なるべく明るい雰囲気を作るようにしています。あまりきまじめになると、プレッシャーを感じてきます。特に振付をやっている時は、プレッシャーを一番強く感じます。だから一緒に仕事をするダンサーは、エゴが強い人、気難しい人は、やりづらいので避けるようにしています。とにかく人生はダンスだけでなく、もっと大切なものがあるんだというぐらいの気持ちで楽しむようにしています。
なんであろうと楽しい面はかならずあるので、楽しむことが先決だと思います。


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