5月より順次ロードショー Bunkamuraル・シネマ
フランス音楽にバランシンとミルピエが振付けた「水晶宮」と「ダフニスとクロエ」
片や名振付家ジョージ・バランシンが第2次世界大戦直後にパリ・オペラ座バレエのために創った作品。もう一演目は、同バレエの次期舞踊監督に就任する、気鋭のバンジャマン・ミルピエの振付作品。二つの組み合わせの新鮮さが話題を呼んだ『水晶宮』と『ダフニスとクロエ』が早くも上映される。
まずバランシンの『水晶宮』は、『カルメン』などの作曲家ビゼーが18歳の時に作曲した『交響曲ハ長調』の4つの楽章に、忠実に振付けられ、各々クリスチャン・ラクロワが今回新たに手がけたルビー、サファイヤ、エメラルド、ダイヤの色を表わすチュチュが、芸術の都パリのバレエ・カンパニーであることを物語っている。踊り手たちも、こうした華やかさに合わせ、この夏のオーチャードホール「エトワール・ガラ2014」でも好評だった、今年エトワールに昇進したばかりのアマンディーヌ・アルビッソンが第一楽章でマチュー・ガニオと組み、これからのパリ・オペラ座を担うこと必至の才能を見せた。こうして、その時代その時代の最もきらめくダンサーが踊り継いできた、文字通りの同バレエの至宝。ソロ、パ・ド・ドゥ、そして群舞まで。正確な舞踊テクニックとかもし出されるオーラに酔いしれたい。
エルベ・モローとオーレリ―・デュポンというベテランのエトワールが、主役のダフニスとクロエを踊る『ダフニスとクロエ』は、古代ギリシャのロンゴスが書いた神話的な物語。エーゲ海のレスボス島を舞台にした牧歌的なラブストーリーに目をつけた、バレエ・リュスのディアギレフが、『ボレロ』などで知られるラヴェルに作曲を依頼。振付はフォーキンで、伝説のバレエダンサー ニジンスキーが踊るという、世界のバレエ史でも輝く演目だ。
これを今回の世界初演では、コンテンポラリー作品に冴えを見せるバンジャマン・ミルピエが全く新しいアプローチで振付。ダニエル・ビュランが担当した舞台装置は、カラフルな色の円や正方形などを天井から吊り下げて、各場面の物語背景を抽象的に表現したところが、ミルピエの創り出した世界観にマッチしている。加えて、特筆すべきなのは、フィリップ・ジョルダン指揮のパリ・オペラ座管弦楽団が演奏する音楽の深さ、豊かさ。ジョルダンはミルピエとほぼ同世代で、ミルピエがこれからのパリ・オペラ座バレエを牽引していくに際しての、力強いパートナーとなることは間違いないだろう。こうした古典バレエとは一味違う作品も観逃せない。
文:佐藤友紀