©Jean-Pierre Maurin

フランスで最もチケットがとれない人気歌劇場の来日

世界を舞台に目映い活躍をみせる指揮者、大野和士。しかしそれ故に、日本で彼の指揮によるオペラに接することはなかなか難しい。その渇きを癒してくれるのが、この7月に行われるリヨン歌劇場との待望の再来日公演だ。演目はフランス・オペラの珠玉の逸品≪ホフマン物語≫である。
「リヨン歌劇場はレパートリーが広く、近現代の作品をよく採り上げる斬新さも特徴ですが、何といってもフランス人のオーケストラですから、フランスらしいエレガントなロマンティシズムの面もお聴きいただきたいと考えました。それにはこの≪ホフマン物語≫は最適です」(大野談:以下同)

 このオペラは、自動人形、病に冒された歌手、そして妖艶な遊女と、主人公ホフマンが幕ごとに相手を変えて物語が進められる。「フランス的な優雅さやエスプリ、そういうエッセンスがたくさん込められている作品です。その上とてもシリアスな思想的論争も込められており、一筋縄ではいかない内容ですね」

演出の冴えと、充実の歌手陣の幸福なマリアージュ

今回の来日公演では、最新の研究の成果が盛り込まれた校訂版をベースに、才人ロラン・ペリーが演出を担当している。「彼の演出プランは、観客の想像力を刺激することを狙ったものです。各幕のそこここに暗い場所や何も置いていないところがたくさん出てきますが、そういう空間と音楽とが相俟って、観客は自ずと想像力を掻き立てられてゆくことになります」

 過去を描く第2~4幕の各ヒロインと、現在の場面に登場するステッラという歌手の4役を、パトリツィア・チョーフィが演ずるのも注目だ。タイプが異なるこれらの役をひとりで担うのは、真の実力者でなければ不可能である。
「最初のオランピアはコロラトゥーラですし、次のアントニアはリリコで、ジュリエッタはスピントと、女声ソプラノの基本タイプをすべてこなさなければなりません。しかしそれが作者の意図ですので、可能な歌い手がいる時はそうしています。チョーフィは高い声はもともと素晴らしく、さらに中音域も充実してきて、見事に歌い分けますよ」

 主役のホフマンはジョン・オズボーンとレオナルド・カパルボが担当。
「現代最高峰のホフマン歌いたちです。自信をもってお薦めします」

©三好英輔
提供:東京フィルハーモニー交響楽団

大野和士

現在フランス国立リヨン歌劇場首席指揮者およびトスカニーニ・フィル首席客演指揮者。ミラノ・スカラ座デビュー以来、メトロポリタン歌劇場、パリ・オペラ座、バイエルン州立歌劇場、グラインドボーン音楽祭などに出演。紫綬褒章受章ほか受賞多数。

フランス国立リヨン歌劇場
オッフェンバック:歌劇『ホフマン物語』

※全5幕、原語[フランス語]上演、日本語字幕付き

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