フランス人建築家が手がけた時代を超えて愛される建築

 Bunkamuraはオーチャードホール、シアターコクーン、ザ・ミュージアム、ル・シネマといったホールを中心に、ギャラリーやショップ、カフェ、レストランを併設したカルチャー施設。当時としては珍しい複合的な施設形態とともに、注目を集めたのがモダンな建物だった。

 建築デザインは、フランス人建築家ジャン=ミシェル・ヴィルモット。ルーブル美術館の内装をはじめ、最近ではオルセー美術館の改装を手がけた世界的な権威として知られる存在だ。

ヴィルモットが求めるエスプリあふれる空間

「フランスらしいデザインをわざわざつくろうとは思わない。私が選ぶ素材や色の組み合わせのどこかに、生まれ育った文化や香りがおのずと表現されるものだ、というのが彼の考え方でした」と振り返るのは設計者としてプロジェクトを担った石本建築事務所の石井誠社長。左右に円筒を配したファサードをはじめシンメトリーを基調に、金属、石、ガラスといった自然のマテリアルの持ち味を生かし、近代的でありながらエスプリが薫る空間に仕上げている。このように、素材や光を巧みに用いて独自の世界観を表現するのがヴィルモットの真骨頂。
「我々が大切にしたのは時間に耐えるものであるということ。フランスも日本も伝統的に、時を経て古びない文化やスピリットを持っている。絵画、音楽、そして建築を含めて、その魅力を感じていただきたい」。

 こうしてヴィルモットとともに作り上げた建築デザインは25年を経た今もなお色あせることなく、時間とともに美しさを増すばかり。どうすれば訪れる人々が心地よく過ごせ、アートを楽しめる環境をつくれるか……。そんな作り手の思いが隅々に染み渡る。
「なぜか引き寄せられ、ワクワクさせるもの」を、Bunkamuraの空間にちりばめたと石井氏は語った。

 竣工を完成とせず、日々使われ年月を経るほどに魅力を増す。開館から四半世紀、彼らが建築デザインに込めた思いは、今なおBunkamuraの随所に輝きを放っている。

シンメトリーなデザイン、美しい二重構造の壁(ダブルウォール)や、そこに用いられる天然の素材は、ヴィルモットデザインの特徴の一つ。

MESSAGE de Jean-Michel Wilmotte

Bunkamuraは私にとって重要なプロジェクトであり、私の経歴においても傑出しています。日本とその素晴らしい文化への愛情が芽生え、また素敵な人々にも出会い、生涯の友となりました。これからも幸運を。