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2024.05.27 UP

まち歩き

文化が薫るまち歩き -戸栗美術館編-〈神泉・奥渋谷エリア〉

戸栗美術館の周辺には、閑静な高級住宅街である松濤のほか、かつて花街として栄えた歴史を持つ円山町など、大人が落ち着いて時間を過ごすことができるエリアが並んでいます。その中でも、風情豊かな日本文化の香りが漂っていて「渋い」をたしなむことができる、おすすめのスポットを歩いてみましょう。

\ 戸栗美術館の魅力に渋アート視点で迫る! /
「渋アートと巡る ── 戸栗美術館」 はこちら>

 ■ 渋谷区立 鍋島松濤公園 

紀州徳川家と佐賀鍋島家ゆかりの自然豊かな公園が松濤の住宅街に

戸栗美術館がある渋谷区松濤の閑静な住宅街を歩いていると、緑のある一角が目に入り、思わず足が向かいます。ここは、地元の住民はもちろん、遠くから訪れる人々にも長年愛されている癒やしの自然スポット「鍋島松濤公園」。江戸時代に紀州徳川家の下屋敷があった場所で、明治時代に土地を譲り受けた鍋島家が茶園「松濤園」を開き、茶園廃止後に池を中心とする一画を児童遊園として開放した歴史をもつ、由緒ある公園です。

園内は十数分程度で巡ることができ、まち歩きの合間にちょっと散策するのにちょうどいい広さ。自然湧水池とその端に建つ水車小屋がシンボルで、池の周りのベンチに座ってのんびり眺めていると、アオサギも浮島でゆったりとしていて、心地よい落ち着きが感じられます。春には桜やツツジ、梅雨時にはアジサイなど四季の草花が敷地内を彩るので、季節ごとに訪れるのも楽しめそうです。また、建築家の隈研吾氏がメタセコイヤなどさまざまな種類の木材を用いてデザインした公共トイレ「森のコミチ」も必見です。周囲の樹木と調和していて、まるで公園の自然の一部のようです。

公園に溶け込むように建っている公共トイレ「森のコミチ」。5つの小屋(トイレ)は小径でつながっていて、まるで森の中に入っていくような感じ。
世界的な建築家やデザイナーが公共トイレを手掛ける「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの17カ所あるトイレの中のひとつ。ヴィム・ヴェンダース監督による映画『PERFECT DAYS』に登場、主演の役所広司さん演じる清掃員の平山さんはこのトイレも掃除しています。

 ■ 器 まるかく 神泉 

現代の器と古き良き時代の器との一期一会を楽しめるセレクトショップ

戸栗美術館で陶器を鑑賞し「自宅にも素敵な器が欲しい」と思った後にぜひ立ち寄りたいのが、神泉町で江戸末期~昭和のアンティーク器と現代作家の器を豊富に取り扱っている「器まるかく 神泉」。戸栗美術館から10分ほど歩いて山手通りに出ると、外観からして雰囲気の良い器屋さんが大通り沿いに見えます。そして店内に足を踏み入れると、優しいぬくもりを感じさせる木目の棚や机に、お料理がより美味しく見える皿や鉢、手に馴染みやすい碗、趣のある急須や湯呑など、普段使いにもハレの日にも良さそうな逸品が常時1,000点以上並んでいます。

落ち着いた色合いの無地の器だけでなく、可愛らしい絵や模様が描かれたものもあり、時間を忘れてずっと目移りしてしまいそう。繁華街から離れた静かなお店で一つひとつじっくり手に取りながら、この世に二つとない一点物とのワクワクできる出会いを楽しんではいかがでしょうか。

料理をよそう皿や鉢から、季節の花を生ける花瓶まで、センスの良い器がズラリ。全国の作家たちから定期的に新作が届くそうで、お店を訪れるたびに新しい器との出会いを楽しめそう。
 

戸栗美術館スタッフおすすめスポット①

■ いちのや 神泉

埼玉県川越に本店を構える天保3年(1832年)創業の老舗うなぎ屋。注文を受けてから捌くうなぎは、ふわふわで肉厚。代々受け継がれてきたタレと絶妙に絡み合って「美味しい!」の一言です。
★「器まるかく 神泉」のおとなり

 ■ 円山町わだつみ 

花街の風情を残す日本家屋でこだわりのそばと和食を堪能する

神泉町と隣り合っている円山町は、かつて大正時代から戦後にかけて花街として栄え、最大で130軒以上の置屋がありました(詳しくはこちらのコラムで)。

この一帯を約300年前から見守り続けている道玄坂地蔵と同じ敷地には、置屋の面影を残した日本家屋が今も残っていて、4つの飲食店が営業しています。古民家風に構えられた小さな門をくぐって石畳の回廊を進むと、赤色の橋が架かった風流な中庭が見え、早くもワクワク感が高まります。その一角の奥座敷に店を構えているのが「円山町わだつみ」。和の情緒あふれる店内の窓から中庭を眺めながら、茹で立ての手打ち蕎麦や旬の食材を用いた天ぷらを堪能できます。

ゆったりと風情豊かなひと時を過ごしていると、まるで花街時代へタイムスリップしたような気分に! 週末には華道や書道などの催しが不定期に開催され、さまざまな切り口で文化を体験できるのも魅力です。

右)四季の移ろいを楽しめる中庭
左上)人気の和牛ひつまぶしの春らしい姉妹メニュー「鴨の薔薇ひつまぶし」
左下)年始恒例のイベント「書初めの会」(同じ建物の2階にある「料亭三長」の広間で開催)
※イベントの開催情報はお店のホームページでご確認ください。

 ■ かんたんなゆめ 渋谷 

伝統とオリジナリティを融合した創作和菓子を奥渋谷の和風モダン空間で味わう

美術鑑賞やまち歩きに疲れてひと息つきたくなったら、大人が楽しめる落ち着いた雰囲気の“奥渋谷エリア”神山町の人気和菓子店「かんたんなゆめ 渋谷」へ足を延ばしましょう。坂を上がった高台にたたずむピンクの建物に「ここが和菓子店?」と戸惑いながらドアを開けると、和風モダンな店内には都会の喧騒を感じさせない、静かでゆったりとした時間が流れています。

クリームチーズとレモンを餡に用いた練り切り「嬉々」など、店主の寿里さんが「日常に溶け込み五感で楽しめる和菓子」を目指して考案した創作和菓子の数々は、四季を感じさせる繊細なあしらいと洋菓子を思わせる新感覚の味わいを楽しむことができ、どれを選べばいいか迷ってしまいます。店内の棚に飾られている全国の焼物茶碗から好きなものを選び、宇治抹茶をカジュアルに頂くことができるのも嬉しいポイントです。さらに練り切りワークショップも定期的に開催していて、和菓子の奥深い魅力にハマりそう。

ライチとグレープフルーツの吉野羹(左写真の最左)は、心地よい春の風で舞う花々をイメージしたそうです。季節デザインの練り切りを作成するワークショップも定期的に開催されています。
※ワークショップ情報とお申し込みはお店のホームページでご確認ください。

 

戸栗美術館スタッフおすすめスポット②

■ KIHARA TOKYO

有田焼・波佐見焼の産地商社である株式会社キハラが奥渋谷に構える直営店。有田焼の伝統と技術でモダンにアレンジしたシンプルな器は、青い絵付けも美しく、普段使いしたくなるものばかりです。
★「かんたんなゆめ」から徒歩約3分

ファッションやエンターテイメントの発信地・渋谷でも、駅から少し離れるだけで、こんなにもさまざまな「渋い」を堪能できるとは驚きでした。松濤の閑静な住宅街に建つ戸栗美術館で優雅な芸術鑑賞体験を過ごした余韻のまま、ぜひ足を延ばしてみてください。いずれのスポットも落ち着いた渋谷の顔を感じていただけるでしょう。

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■■スポット情報■■
*それぞれ外部サイトに遷移します*

渋谷区立 鍋島松濤公園〈戸栗美術館から徒歩約3分〉
 東京都渋谷区松濤2-10-7
 TEL:03-3463-2876
 [営業時間] 24時間利用可
 https://www.city.shibuya.tokyo.jp/shisetsu/koen/kuritsu-koen/park_nabesima.html

器まるかく 神泉〈戸栗美術館から徒歩約10分〉
 東京都渋谷区神泉町20-4
 TEL:03-3463-3225
 [営業時間] 11:00~19:00
 [定休日]  水曜
 https://marukaku.jp/

円山町わだつみ〈戸栗美術館から徒歩約10分〉
 東京都渋谷区円山町6-1
 TEL:03-6455-0267
 [営業時間] 11:30〜15:00 (LO 14:30)、18:00〜22:00 (LO 食事21:15/ドリンク21:30)
 [定休日]  日曜および不定休(祝日除く)
 https://wadatsumigroup.com/

かんたんなゆめ 渋谷〈戸栗美術館から徒歩約8分〉
 東京都渋谷区神山町41-3
 TEL:050-5362-1781
 [営業時間] 12:00~18:30
 [定休日]  月曜と不定休
 https://linktr.ee/kantannayume

 

*2024年5月現在の情報です。
*営業時間・定休日が急遽変更になる可能性もあります。各HP等でご確認の上、お出かけください。

 

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