印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション

Columnコラム

1勤勉な実業家が集めたしっとりとしたコレクション
2バレエの話ですが、オーチャードホールではなくザ・ミュージアムです!

バレエの話ですが オーチャードホールではなく ザ・ミュージアムです!

エドガー・ドガ 《リハーサル》 1874年頃、油彩・カンヴァス © CSG CIC Glasgow Museums Collection

ドガの作品《リハーサル》を見て思い出したのは、パリのマレ地区の路地裏にあったバレエ学校です。向かいがレストランで、床まである大きな窓から見えるレッスンを眺めながら外で食事をすることができました。練習風景で印象深かったのはダンサーたちの優雅な身のこなしと、チュチュと呼ばれるキュートなスカート。パリは本当に素敵な街だなとつくづく思ったものです。
ドガがバレエという主題に興味を持ちはじめたのは40代からで、彼もダンサーの動きに魅了されていました。当時はパリ・オペラ座の席を年間購入する会員は楽屋や練習風景を見ることができ、裕福な家庭の出であったドガはその特権を利用して多くのシーンを描くことができたのです。
ドガは他の印象派と違って見たものを直接カンヴァスに描くことはせず、スケッチや写真をアトリエで合成して作品にしていました。ここでも観る者の視線はまず中央でアラベスクのポーズを取る女性に向けられ、次はその手の先、画面右の群像に移ります。そのベクトルは画面左の螺旋階段の動きに吸収され、また練習中の一群に戻って行くようになっています。全体を支配する透明感と軽さも特徴です。主因は半透明のチュチュですが、大きな窓と向こうが見える螺旋階段、そして床に映った少女たちの薄い影もそれを後押ししています。
英国ではドガのバレエの絵は1870年代に既に注目されていました。バレルを筆頭とするフランス好きのスコットランド人は特にこれらの作品から、パリの香りを感じ取ったのでしょう。そしてこの名作を、バレエが上演され、リハーサル室もあるBunkamuraで堪能できるのは、なんと素敵なことではないでしょうか。

(ザ ・ ミュージアム 上席学芸員 宮澤政男)

1勤勉な実業家が集めたしっとりとしたコレクション
2バレエの話ですが、オーチャードホールではなくザ・ミュージアムです!