若き日のルーベンスは、8年間イタリアに滞在し、多くの芸術的刺激を得て、画家として大きく成長しました。その後、アントワープに戻ったルーベンスは、大規模な工房を構えて、ヨーロッパを代表する画家の一人として、数々の傑作を生み出します。本展では、ルーベンスの絵画芸術の魅力を、彼の自筆作品を中心に紹介します。
さらに、ルーベンスの工房に焦点を当てて、工房の助手たちが、どのようにルーベンスの制作を補助したのかを探るとともに、工房で助手として活動した画家たちの、自立した画家としての興味深い作品も展示します。また、人物画家としてのルーベンスは、静物、動物、風景などを専門とする画家たちとも共同で、数多くの作品を制作しました。このような専門分野を異にする画家たちとの共同制作についても紹介します。そして、巨匠ルーベンスの名声を広めたのが、彼の油彩画の構図を再現した版画でした。ルーベンスによる版画制作の取り組みについても明らかにします。
このように、本展は、さまざまな視点からルーベンスの多彩な芸術活動に迫り、彼の時代のアントワープにおける絵画芸術の隆盛を紹介する試みです。とは言え、何よりも、まず第一に、素晴らしい作品を間近でご覧いただけたらと願っています。
監修:中村俊春(京都大学大学院文学研究科教授)