2024.07.08 UP
文化が薫るまち歩き-五島美術館編-〈上野毛・二子玉川エリア〉
国宝《源氏物語絵巻》をはじめとする数々の名品を所蔵する五島美術館は、世田谷区上野毛の閑静な住宅街の中に建っています。上野毛は豊かな緑に覆われた崖が連なる国分寺崖線上にあり、街なかに流れる爽やかな風を心地よく感じながら、ほっとひと息つくことのできるエリアです。その中から、美術鑑賞とともに“和”と親しんで落ち着いたひと時を過ごす、おすすめの「渋い」スポットをご紹介しましょう。
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■ 富士見橋
都会の真ん中にいながら美しい富士山が見える絶景橋
世界遺産にも選ばれている日本の名峰・富士山。その良好な眺望が楽しめる128景233地点が「関東の富士見百景」として選定されていて、その1つに選ばれているのが、五島美術館前の道路と東急大井町線が交差する場所に架かっている「富士見橋」です。幅の小さな橋ですが、富士山側の歩道には車除けのポストが設置されているので、車を気にせずに立ち止まることができます。電車が足元を通り抜ける光景と共に、晴れた日には二子玉川方面に富士山を眺めることができて、思わず写真を撮りたくなります。
またこの橋は、世田谷区で整備した散歩道「おもいはせの路」のルートの一部になっているので、国分寺崖線上に点在する古代の遺跡や由緒ある寺社も合わせて巡り、季節の流れを感じながら歴史に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。
撮影当日は残念ながら雲に霞んで見えませんでしたが、ビルとビルの間から覗く富士山が見られるスポットです。
■ 蕎麦 はやかわ
名店出身の店主が素材にこだわって提供する二八蕎麦が絶品
東急大井町線上野毛駅前の交差点を渡ってすぐ、白壁に暖簾がなびく清楚な外観のお店が見えます。ここは、広尾の名店「蕎麦 たじま」で修行を積んだ早川泰弘さんが、「上野毛の地域に根差したおいしい蕎麦屋を目指したい」という思いから2018年にオープンした「蕎麦 はやかわ」。店内も白木を基調に和紙製シェードペンダントライトを配置した和モダンな雰囲気で、ゆったり落ち着いてくつろぎながら食事ができます。
お蕎麦のほかにも丼や出し巻き玉子などの一品料理もおすすめですが、初めて訪れたらぜひとも味わいたいのが、季節によって産地を選んだ蕎麦の実を自家製粉でひいた二八蕎麦。ひきたて打ちたての蕎麦は細くてコシがあり、そして喉ごしが滑らかで香りも心地よく余韻を引く絶品!食べ終わる頃に出される蕎麦湯も、蕎麦の風味がしっかりしていてホッとする味わいです。全国各地から取り揃えている日本酒を傾けながら蕎麦を楽しむのも粋でおすすめです。
時季ごとに厳選した2種類の蕎麦の実を、挽き方を変えて自家製粉、配合しているというこだわりのお蕎麦。何度でも訪れたくなる美味しさです。
■ アンクルサムズ サンドウィッチ
1978年創業の地元に愛されるサンドウィッチ専門店。木の造りによるアーリー・アメリカンスタイルな店内は居心地が良く、名物のBLTをはじめ60種類以上のサンドイッチを味わえます。
★「蕎麦 はやかわ」の向かい
■ カトリック上野毛教会
歴史のある教会建築の聖堂で静かに祈りを捧げる
五島美術館前の道路を直進して閑静な住宅街を歩いていると、白い十字架を配したファサードと特徴的な鐘楼がふと見えてきます。ここは、1952年に男子跣足カルメル会の修道院付附属聖堂として始まった「カトリック上野毛教会」で、早稲田大学の旧大学図書館や皇居内の桃華楽堂を手がけた名建築家・今井兼次氏が建物を設計。白亜の壁面を木造でフレーミングしたたたずまいが清潔感をにじませていて、教会ならではの気品を感じさせます。
ミサがない時間帯は自由に聖堂に入ることができ、敬虔な祈りを捧げたい方だけでなく、日常を離れて静かな時を持ちたい方たちが訪れています。聖堂の内部は木の温もりと採光のバランスが心地よく、厳かな空気に包まれながら長椅子に座っているうちに、心が澄み渡っていくようです。
左)周囲の風景に溶け込みつつ存在感を放っている鐘楼。
右)自然光がステンドグラスを通して柔らかく差し込んでいて、温かみがありながら厳かな雰囲気が漂う聖堂。背筋がのびて敬虔な気持ちになります。
■ 上野毛駅 駅舎
世界的建築家の安藤忠雄氏が駅舎を設計。上野毛通りをまたいで覆う大屋根など、モダンでシンプルなデザインが街の風景に溶け込み、“文化が薫るまち”上野毛を洗練された雰囲気に彩っています。
■ 帰真園
多摩川ゆかりの自然を再現した本格的な日本庭園
五島美術館から多摩川方面へ10分弱歩くと、国分寺崖線の緑と多摩川の水辺に囲まれた二子玉川公園にたどり着きます。この区民の憩いの場にも、おすすめの“渋い”スポットがあります。池泉回遊式の日本庭園「帰真園」です。世田谷区の豊かな自然と文化をふまえて2013年に作庭されたもので、多摩川本来の自然に回帰するという意味で「帰真園(きしんえん)」と名付けられました。
園内は多摩川の源流からこの地までの景観をテーマに、山から海までの渓流や森を縮景庭園として再現。緑が美しい庭園を散策することによって、多摩川ゆかりの自然を体験できるようになっています。水際を美しく見せるために芝生と池泉の境目に丸石を敷く“洲浜”や、青石をふんだんに用いて滝を表現した“滝石組”など、日本庭園の伝統的な技術も実に見事で、思わず足を止めて見入ってしまいます。また園内には、明治末期築の近代和風建築「旧清水家住宅書院」が移築復元されています。毎週日曜・祝日・第2月曜は内部を開放しているので、古き良き日本の風流な暮らしを体感してはいかがでしょうか。
左は洲浜。石を敷き詰めて水辺や海岸を表現しています。右の滝石組は、奥多摩にある鳩ノ巣渓谷の急流を摸しているそう。
明治期の近代和風建築として世田谷区登録有形文化財に登録されている「旧清水家住宅書院」。池泉に浮かぶ西ノ屋型灯篭は五島美術館が寄贈したもの。
書院と庭園が織り成す調和が美しく、時間が過ぎるのもゆったりと感じます。
■等々力不動尊
東京23区で唯一の渓谷「等々力渓谷」の斜面を利用した丘陵にある不動尊。関東三十六不動霊場 第十七番札所でもあり、江戸末期築の本堂に不動明王像が安置されています。展望台からの緑豊かな眺めと渓谷沿いの不動の滝は必見です。
※等々力渓谷公園は令和7年度まで一部立入禁止
★五島美術館から徒歩約25分
都市部のさまざまなエリアで開発が進む中、高い建物が少なく美しい緑が今も残されている上野毛は、文化の薫りを感じながら散策するのにぴったりな場所でした。閑静な住宅街ならではの穏やかな空気に心地よく浸りながら、豊かな文化や自然を身近に楽しんでみてはいかがでしょう。
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■■スポット情報■■
*それぞれ外部サイトに遷移します*
富士見橋〈五島美術館から徒歩約1分〉
東京都世田谷区上野毛三丁目3番、9番、10番、19番の街区にまたがる橋
https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/sumai/005/002/d00038436.html
蕎麦 はやかわ〈五島美術館から徒歩約5分〉
東京都世田谷区上野毛2-7-10 1階
TEL:03-6884-4614
[営業時間] 11:30〜14:30/17:30〜22:30(ラストオーダー21:30)
[定休日] 月曜
https://www.facebook.com/hayakawa.soba/?locale=ja_JP
カトリック上野毛教会〈五島美術館から徒歩約10分〉
東京都世田谷区上野毛2-14-25
TEL:03-3704-2171
http://www.kaminoge-church.jp/
帰真園〈五島美術館から徒歩約13分〉
東京都世田谷区玉川1-16-1
TEL:03-3700-2735(二子玉川公園ビジターセンター)
[開園時間] 9:00〜17:00(11~2月は16:30まで)
[休園日] 火曜、年末年始(12/29~1/3)
https://www.ces-net.jp/futako-tamagawa-park/
*2024年7月現在の情報です。
*営業時間・定休日が急遽変更になる可能性もあります。各HP等でご確認の上、お出かけください。
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