2026.02.20 UP
みる・まなぶ・ふかめる―五島美術館・月例美術講座―
美術館や博物館では、展覧会と合わせて楽しめるイベントがたくさん開催されています。作品を新しい切り口で眺めたり、興味や知識が広がる面白さを感じたりできるのが、イベントの醍醐味。
作品を見るだけでなく、そこから一歩踏み込み、美術を幅広く学ぶことで、鑑賞体験がより豊かになります。美術館・博物館のファンのみならず、初めての方にこそ体験していただきたいものばかりです。
このシリーズでは、渋アート連携施設で開催されるイベントを、渋アートスタッフが体験取材し、ご紹介します。
★レポートの最後には「渋アート×五島美術館コラボ プレゼント企画」も。どうぞ最後までご覧ください!
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今回、体験取材で訪れたのは、日本と東洋の美術品を味わえる五島美術館。
絵画や茶道具、陶磁器など名品の数々を、ジャンルごとの展覧会で楽しむことができます。
渋谷駅から電車に乗り、20分弱で東急大井町線 上野毛駅に到着。落ち着いた雰囲気の住宅街を5分ほど歩くと、緑の木々に囲まれた美術館が見えてきました。
*五島美術館のこだわりの建築や茶室、コレクションは、こちらの記事で詳しく紹介しています。
この日、筆者が参加したのは、「美の友会」会員限定のイベント「月例美術講座」。
五島美術館と大東急記念文庫の学芸員さんによる、絵画や陶磁器といったシリーズごとのレクチャーが、通年で開催されています。
「美の友会」とは、美術・歴史に興味をお持ちの方がさらに学びを深められる、五島美術館独自の会員制度で、展覧会に何度でも入場できたり、無料で講座を聴講できたりと、さまざまな特典を受けられるのが魅力です。
今回は、五島美術館 学芸部長の林克彦さんが担当する、考古鑑賞シリーズ「考古学からみた日本やきもの史②」のレポートをお届けします。
■日本や東洋の美術を幅広く学べる講座

考古鑑賞シリーズ「考古学からみた日本やきもの史②」会場の様子
五島美術館のコレクションに限らず、幅広い作品の解説を通して、日本と東洋の美術の多彩なジャンルを深く学べるのが、「月例美術講座」の大きな特徴です。スライドや配布資料を交えて分かりやすく教えてもらえるため、知見を広げたい方や、これから美術を学びたい方におすすめです。
シリーズを通して聴講するとより理解が進みますが、単独で聴いてみたい方も、気軽に参加できます。
開場の時間が近づくと、美術館のエントランスに続々とお客様が集まってきました。
案内に従って、本館から別館の講堂へ向かい、受付で資料代100円を支払います。支払いは現金のみなので、小銭を準備しておきましょう。

考古鑑賞シリーズ「考古学からみた日本やきもの史② 第1回 奈良三彩」の資料
資料には、スライドの内容や作品の図版がまとめられていて、開始前に目を通しておくと、テーマの全体像がつかみやすくなります。
この日は、50名ほどの会員の方が参加され、熱心に資料を読んでいる姿もあり、講座を楽しみにされている様子が伝わってきました。
■学芸員さんの専門的な視点で作品を深掘り

奈良三彩についてレクチャーする林克彦さん(写真は「唐三彩」)
考古鑑賞シリーズ「考古学からみた日本やきもの史②」の1回目では、奈良時代につくられた奈良三彩(ならさんさい)をテーマに、中国や日本の美術品を比較しながら、その特徴を教えていただきました。
三彩とは、2種以上の鉛釉系の色釉をひとつの器に掛け分けた陶器を指します。
はじまりは1〜2世紀頃、中国の後漢時代まで遡り、同じ時期にシリア周辺でも三彩が焼成されました。
やがて、唐時代に入ると、7世紀後半〜8世紀前半という短い期間に、唐三彩(とうさんさい)がつくられます。
素焼きした純白の陶胎に釉薬をかける前に、さらに白化粧という技法を施し、白さを際立たせているのが特徴です。唐三彩は、緑釉、黄褐釉、透明釉の3色が使われているものが多いそうです。
唐は大国だったため、その文化は周辺諸国に広く伝播していきます。
当時の日本でも、海外からやってきた文物を唐物(からもの)と呼び、大きな影響を受けていました。もともと、「から」とは、海の向こう側の国という意味でしたが、とくに中国の唐時代の輸入品がインパクトを与えたため、「唐」という漢字で表されたのではないかという説があります。
奈良時代に三彩がつくられた背景が分かり、「なるほど」と頷いている方が多くいらっしゃいました。
奈良三彩は、唐三彩の影響を受けているものの、白化粧は施しておらず、唐三彩とは異なるつくり方をしているとのこと。わずか100年の間に、日本独自のやきものが生まれていったことが分かりました。
ものとものを比較する考古学の視点で観察するのは、とても新鮮な体験で、作品の見方がぐっと広がります。
筆者は奈良三彩を初めて知りましたが、新しい切り口でやきものに触れるのが面白く、気づけばすっかりお話しに聞き入っていました。

スライドを映しながら、作品をひとつずつ丁寧に説明する林さん
講座の終了後、さまざまな角度からやきものを解説してくださった林さんに、講座の特徴についてうかがいました。
「『勉強になった』というご感想や、さらに知りたいと質問をいただく回もあり、熱心に学んでくださる方々に応えたいという思いでレクチャーしています。
専門的な内容ではありますが、みなさんに馴染みのあるエピソードも織り交ぜて、親しみを感じていただけるよう、工夫しています」
美術との接点を自然に持てるよう、参加者の立場を考えながら、講座がつくられていることを実感しました。
また、担当する学芸員さんによって、雰囲気や内容が異なるそうで、ほかのシリーズへの関心もますます高まりました。
■学びをきっかけに広がる新しい鑑賞体験

三彩万年壺 唐時代・8世紀 五島美術館蔵
体験取材を通して、美術の歴史を広く深く学ぶ面白さを、たっぷりと味わうことができました。「月例美術講座」で作品の特徴や背景を知ると、新たな切り口で展覧会を鑑賞する楽しみが生まれます。
「美の友会」で、いろいろなジャンルの美術品に出会い、学びの一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
■次回の月例美術講座・ギャラリートーク
●林さんが担当する考古鑑賞シリーズ「考古学からみた日本やきもの史②」は、2月28日(土)、3月28日(土)に開催予定です。2月は平安時代~室町時代の土器「かわらけ」、3月は中世の日本を代表する6つの陶器産地「六古窯」をテーマに、知られざるやきものの魅力に迫ります。
「美の友会」の詳細はこちら ※外部サイトに遷移します。
●展覧会ごとに開かれる「ギャラリートーク」は、「美の友会」に入会していない方も参加できるイベントです。学芸員さんによる、展示品にフォーカスした解説を聞くことができます。
イベント当日に展覧会チケットを購入すれば、無料で聴講が可能です。
※当日の正午より整理券が配布され、先着順で入場となります(椅子席100名)。
3月29日(日)まで開催中!五島島美術館『館蔵 中国の陶芸展』の詳細・ギャラリートークの日程はこちら
◆ ◇ ◆ 渋アート的視点 ◆ ◇ ◆
「美の友会」の定期入館証を提示すれば、展覧会や庭園に何度でも入場できます。「月例美術講座」と合わせて、ぜひ足を運んでみましょう。講座の前後に立ち寄って、美術品をじっくりと鑑賞したり、庭園を散策して四季折々の草花や景色に出会ったり──。
「美の友会」の特典を利用して、日本の文化をより深く味わってみてくださいね。

1月の庭園の様子
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
取材・文:浜田夏実
※本記事は2026年1月の取材に基づいて掲載しています。最新情報は渋アートサイト、五島美術館ホームページ等でご確認ください。
□五島美術館「美の友会」入会のご案内
五島美術館本館受付にて申込書に必要事項を記入し、会費を添えてお申し込み下さい(開館日のみ、郵送やメールでの手続きはできません)。
月例美術講座当日の入会も可能です。
○有効期間:入会の日より1年間、開館日のみ有効です(「定期入館証」発行)。
○会費:4,000円(年額・税込)
*内容は変更となる場合があります。最新の情報は五島美術館ホームページ「美の友会」ご案内ページをご確認ください。※外部サイトに遷移します。
\ 渋アート×五島美術館コラボ プレゼント企画/
五島美術館の展覧会を何度でも鑑賞でき、「美の友会」限定の「月例美術講座」もすべて無料で参加できるなど、さまざまな特典が魅力の「美の友会」。
渋アート特集コンテンツ「みる・まなぶ・ふかめる―五島美術館・月例美術講座―」公開に合わせて、今回の記事を見て「美の友会」に新規入会いただいた方に、五島美術館「館蔵 中国の陶芸展」出品作品のポストカード2種をプレゼントいたします。入会受付の際に「渋アートを見ました!」の一言をお忘れなく。この機会にぜひご入会ください!
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対象期間:2026年2月21日(土)~3月29日(日)(『館蔵 中国の陶芸展』開催中)
内容:「美の友会」新規入会時に「渋アートを見ました!」と言っていただいた方に、五島美術館「館蔵 中国の陶芸展」出品作品のポストカード2種をプレゼントいたします!
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□3月29日(日)まで開催中!

五島美術館『館蔵 中国の陶芸展』
会期:2026年2月21日(土)~3月29日(日)
展覧会の見どころや開催概要はこちら

