
12年間で24回のリサイタルを行うという、ピアニストとして大仕事に取り組む小山実稚恵。2005年11月30日、リサイタル開催に先駆けて、オーチャードホール・プロデューサーの黒田恭一をホスト役にマスコミ懇親会が開かれた。
すでに24回分のリサイタルのプログラムは発表済み。小山自身が一年以上も前から「ピアノを旅したい」という思いを原点に組み立てたものである。そのプログラムについて、黒田氏から質問されると...
「今まではリクエストされたものを弾くという、いわばパック旅行のようなものでした。それが今回は愛車、船や飛行機で思いのままに行く先を決めていく、究極の旅のようなもの。日常から離れて、旅をしたいと思っています。"12年24回"という回数にしたのは、1年は12ヶ月で、1日は24時間...人間の自然なリズムにあっていると思ったからです。それに1オクターブの半音の数は12あって、それぞれの音に短調と長調があり24の調から成り立っている。ピアニストとして、音楽の基本に戻りたいという思いもあります」
またリサイタルごとにつけられた"色"は彼女自身がそのプログラムからイメージするものをあらわしたそう。やさしい雰囲気で、常に笑顔で黒田氏や記者たちの質問に答える小山。これからの仕事への気負った雰囲気はなく、この"旅"を心待ちにしている様子だった。トークの合間には、彼女がこの12年間をともに旅するスタインウェイで演奏も披露してくれた。長い旅路は、来年6月いよいよスタートする。
text by 山下由美(フリーライター)