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ROFのメイン会場、テアトロ・ロッシーニ |
ロッシーニ・オペラ・フェスティバルは、毎年8月にイタリア中部マルケ州のペーザロ市で開催され、現在、ヨーロッパの音楽祭の中で最も注目されている国際フェスティバル。1980年、ペーザロ市が財団を設立し、全プログラムがこの町で生まれた作曲家ジョアキーノ・ロッシーニに捧げられ、ロッシーニ研究の世界的権威である“ロッシーニ財団”が編纂したクリティカル・エディション(批判校訂版)に基づいて、ロッシーニ作品が上演、演奏されます。学術研究とリンクしている音楽祭としては世界で唯一と言えるでしょう。その見識の高さと内容の確かさを支持する名だたる国際的アーティストたちが、毎年、ペーザロに集結して質の高い上演が行われています。
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テアトロ・ロッシーニの客席 |
名作「ランスへの旅」は今では世界各地の歌劇場で上演されていますが、実は、自筆譜が失われていたため19世紀後半から長い間、すっかり忘れられた作品でした。ロッシーニ財団がヨーロッパ中に散逸した楽譜の断片をかき集めて楽譜を編纂し、1984年のフェスティバルでクラウディオ・アッバードの指揮により約150年振りに蘇演されました。この歴史的名演が“ロッシーニ・ルネサンス”のきっかけとなり、次々と知られざるロッシーニ作品を世に送り出してきたフェスティバルの評価は一気に高まり、オペラ関係者のみならず世界の音楽愛好者からも注目される存在になったのです。
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テアトロ・ロッシーニのブックショップ |
フェスティバルはまた、イタリア・オペラの歌唱法ベルカント様式を引き継ぐ若手歌手たちを発掘し、アカデミア・ロッシニアーナで育成してロッシーニ歌手としてデビューさせることに力を注いでいます。実際に多くの有名歌手がペーザロから国際舞台へデビューしています。そのため、欧米の歌劇場関係者やエージェント、評論家たちが新人発掘のために、毎年、世界中から集まります。
近年、ロッシーニ・オペラの総本山ペーザロは人気沸騰。公演チケットやホテルは1年前から予約をしないと確保できないほどで、その評判は日本にも伝わり多くの日本人ファンが8月のペーザロを訪れます。ファンにとってペーザロは憧れの土地。オペラ・ブッファの作曲家、オシャレも大好きな食通だったロッシーニ。しかし実はブッファよりも多くのオペラ・セリアを書き、早々とオペラ界から引退してしまった作曲家の真価を、フェスティバルは28年間も世に問い、我々が従来抱いていたロッシーニのステレオ・タイプなイメージを見事に覆してみせます。
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第2会場「アドリアティック・アレーナ」のバール |
〔指揮者〕クラウディオ・アッバード、リッカルド・シャイー、マウリツィオ・ポッリーニ、ジュゼッペ・シノーポリ
〔演出家〕ピエル・ルイージ・ピッツィ、ジャン・ピエール・ポネル、ルーカ・ロンコーニ
〔歌手〕ダニエラ・バルチェッローナ、テレサ・ベルガンサ、モンセラート・カバリエ、ルネ・フレミング、カティア・リッチャレーリ、ファン・ディエゴ・フローレス、ルッジェーロ・ライモンディ、サミュエル・レイミーら国際的アーティストが多数参加。
アドリア海に面したペーザロは、イタリア中部のマルケ州、ペーザロ・ウルビーノ県の県庁所在地。ビーチリゾートとして非常に人気のある街で、夏のハイシーズンには多くのヴァカンス客でにぎわいます。1792年にペーザロで生まれたロッシーニは6歳までこの地で過ごしました。現在ロッシーニ・オペラ・フェスティバルは、旧市街にあるロッシーニ劇場と近郊のアドリアティック・アレーナ(2面舞台)の3会場で開催されています。市内には“ロッシーニの生家”(現在は博物館)やイタリアで最も古い音楽院の一つである“ロッシーニ音楽院”があります。
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ペーザロの町のシンボル、リベルタ広場のポーモドーロの彫刻 |
ペーザロから36キロ離れた山上の古都ウルビーノは、“マルケ州の宝石”と称されるルネッサンスの町。世界遺産に指定されている歴史地区の街並みや、ルネッサンス期に花開いた気高い芸術・文化の香りが魅力。画家ラファエッロはウルビーノ出身。画家ピエロ・デッラ・フランチェスカの作品は国立マルケ州美術館で見ることができます。