ビゼーのオペラによって世界中にその名をとどろかせた「カルメン」。 恋の情熱によるこの悲劇はフランス人の手によるものとはいえ、スペイン的な魅力にみちた物語であることに違いはない。

新作「カルメン」稽古風景
新作「カルメン」稽古風景

フラメンコを代表とするスペイン舞踊においても、これまでに数々の「カルメン」が作られてきた。カルロス・サウラ監督の映画でも知られるアントニオ・ガデスの「カルメン」はその代表的なものと言えるだろう。
 スペイン人がスペイン舞踊でスペインを象徴するものとみられている物語を表現する。ともすると、典型の罠に堕ちてしまうリスクをもおかして、この冒険にアイーダ・ゴメスが再度挑戦する。再度というのは、スペイン国立バレエ団芸術監督時代にも自らの主演で上演しているからである。その時は振付に現在同バレエ団監督のホセ・アントニオをむかえたが、今回は演出から振付まですべて彼女の手によるものだという。 音楽はアンダルシアの古都、コルドバ生まれのフラメンコ・ギタリスト、ホセ・アントニオ・ロドリゲス。 ドン・ホセにはアンントニオ・ガデス舞踊団でアントニオの引退後に彼から主役を引き継いだホセ・マヌエ、闘牛士にはやはりアントニオ・ガデス舞踊団などで活躍したプリミティーボ・ダーサと実力派舞踊家の共演が決定している。
 アイーダと共に素晴らしい舞台をみせてくれることだろう。
 2006年3月、世界で唯一のスペイン舞踊とフラメンコの祭典、ヘレス・フェスティバルで初演される予定の新作「カルメン」。スペインはもとより、世界中の舞踊関係者から注目されている。
  なお、日本では「サロメ」に続いてアイーダが出演したカルロス・サウラ監督の映画「IBERIA」(邦題「イベリア魂のフラメンコ」)からインスパイアされた小作品も上演されるという。 情熱と洗練。スペイン舞踊の粋を感じるための、必見舞台だ。

新作「カルメン」稽古風景
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texts by 志風恭子(スペイン舞踊ジャーナリスト)
photos by 木村金太


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