勅使川原三郎  佐東利穂子 オブセッション 振付・美術・照明・衣裳: 勅使川原三郎

映画『アンダルシアの犬』から着想した初のダンスデュエット

2010年5月20日(木)〜23日(日)

Bunkamuraシアターコクーン

勅使川原三郎インタビュー

流れの召還

音楽の悲しみはその音を見ることができないこと。
舞踊の切なさはその動きをとどめることができないこと。

勅使川原三郎は、2009年の春、ラ・フォル・ジュルネで、バッハの無伴奏チェロ組曲を踊った直後、別のホールに急ぎ移動し、ファニーが演奏するイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタを聴いた。
それは暗闇に何かを捜し求める孤独な言葉に似ていた。あるいは悲痛な叫びのようにも聞こえた。
彼はそこに、自らが究める方向の、次にあるものを確信したのだと思う。

その萌芽は、その後の公演「鏡と音楽」の中の、あまりにも艶やかなブクステフーデ作曲のソナタとなって現れた。いや、彼らのダンスが、バッハに先立つ17世紀の音楽を実にあざやかに見せてくれたのだ。
それは同時に、確かな光の軌跡として、今も私の網膜にとどめられている。

そして今年。勅使川原三郎と佐東利穂子とともに、ファニー・クラマジランと交差する。

音楽を愛するものはこの場所にいなければならない。
美しさを信じるものはこの時間に立ち会わなければならない。

そのとき、滞りすぎたこの世界に、動的な平衡が召還されることへの希望を私たちは知るだろう。

福岡伸一(分子生物学者)

ことばのない勅使川原三郎の作品を見るたびに、私はいつも、「ことばを使う精神科医は、なんと人間というものを知らないのか」と強い敗北感にとらわれる。
しかし、その敗北感は、いつの間にか甘美な歓びにかわるのである。
また、ほかのどんな表現からも得られない敗北感と歓喜が私を襲う。
それを期待して、『オブセッション』に出かけていこう。

香山リカ(精神科医)


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