写真家ドアノー/音楽/パリ

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2021.03.05 UP

本展をご覧いただいた写真家の方にコメントをいただきました②平間至さん

この原稿の依頼を受けた時に「写真家ならではのコメントをお願いします。」と言われとても困った。 それはドアノーがテクニックに優れた写真家だからだ。 代表作《パリ市庁舎前のキス》は、演劇学校の学生を雇って演出された写真にも関わらず、現実のカップルが目の前を通り過ぎたかの様な写真だ。本当のテクニシャンはテクニックを写真の中に仕舞い込んでしまうからだ。

 

ロベール・ドアノー《ムフタ―ル通りのアコーデオン弾き》1951年 ゼラチン・シルバー・プリント ©Atelier Robert Doisneau/Contact

 

今回のテーマでもある音楽は当時の人々にとって自由の象徴であったはずだが、《ムフタール通りのアコーデオン弾き》は沈んだ表情で生気のない演奏をしているように見える。背後には、彼の演奏にまったく興味を示さない群衆と観察している人。 この対比と違和感が見る人にストーリーを掻き立てる、とドアノーは思ったのではないだろうか? ドアノーはパリと言う特別の場所で、写真の二大要素とも言える記録性と表現性を縦横無尽に使い切り、鑑賞者を豊かな体験へと導いてくれる稀有な写真家だ。

 

 

平間至 Hirama Itaru

 

1963年、宮城県塩竈市に生まれる。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、写真家イジマカオル氏に師事。写真から音楽が聞こえてくるような躍動感のある人物撮影で、今までにないスタイルを打ち出し、多くのミュージシャンの撮影を手掛ける。近年では舞踊家の田中泯氏の「-場踊り-」シリーズをライフワークとし、世界との一体感を感じさせるような作品制作を追求している。2006年よりゼラチンシルバーセッションに参加、2008年より「塩竈フォトフェスティバル」を企画・プロデュース。2009年よりレンタル暗室&ギャラリー「PIPPO」をオープンし、多彩なワークショップを企画する等、フィルム写真の普及活動を行っている。
2013年には、俳優・綾野剛写真集「胎響」(ワニブックス)や、田中泯氏との写真集「Last Movement-最終の身振りへ向けて-」(博進堂)の発表と共に個展も行い、大きな注目を集めた。2012年より塩竈にて、音楽フェスティバル「GAMA ROCK」主催。2015年1月三宿に平間写真館TOKYOをオープンする。

 

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