写真家ドアノー/音楽/パリ

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2021.03.03 UP

本展をご覧いただいた写真家の方にコメントをいただきました①ハービー・山口さん

「ドアノー/音楽/パリ」という括り方がユニークだ。彼のスタイルや嗜好が浮き彫りになり、より深く彼のことを好きになった。無名時代に撮影された後のビッグスター、すでに当時の時代の顔となっている音楽家、下町のカフェで演奏するアコーディオン弾き、そうした被写体とドアノーがお互いを刺激し合いながら時は流れていったのだろう。

 

ロベール・ドアノー 《サン=ジェルマン=デ=プレのジュリエット・グレコ》 1947年 ゼラチン・シルバー・プリント ©Atelier Robert Doisneau/Contact

 

この写真展で新たに注目した写真があった。犬と一緒に撮影された有名になる前のシャンソン歌手、ジュリエット・グレコだった。若き美しいその姿は背景の建物共に紛れも無いパリの空気感をまとっている。カメラに媚を売る表情ではなく、手前のあくびをしている犬に視線を送っている。低いアングル、顔の半分を覆った影。完璧な構図。いつまでも見飽きることはなかった。この写真に限らずどんな被写体であってもドアノーにとって尊く、ドアノーの作品の中で主役を張っている。写真家が作品を撮る上で最も大切なものの一つが「被写体を愛する心」だ。彼が愛した街パリ、音楽に関わるものたちの愛しい姿。そうした愛溢れる写真は時を超えて私たちに生きる勇気を与えてくれている。

 

 

ハービー・山口 Herbie Yamaguchi

 

1950年、東京都出身。中学2年生で写真部に入る。大学卒業後の1973年にロンドンに渡り10年間を過ごす中、劇団で役者を経験、また折からのパンクロックやニューウエーブのムーブメントに遭遇し、ロンドンの最もエキサイティングだった時代を活写した。 帰国後もアーティストから市井の人々にカメラを向け続け、モノクロームの作品に残している。 その清楚な作風を好むファンは多く、「人間の希望を撮りたい」「人が人を好きになる様な写真を撮りたい」というテーマは、中学時代から現在までぶれることなく進行中である。 写真の他、エッセイ執筆、ラジオのパーソナリティーもこなす。2011年度日本写真協会賞作家賞。 現在大阪芸術大学、九州産業大学客員教授。

 

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