世界で唯一、侯爵家(君主)の家名が国名となっているリヒテンシュタイン。スイスとオーストリアにはさまれた小国ながら、世界でも屈指の規模を誇る個人コレクションを有し、その華麗さが宝石箱にもたとえられ世界の注目を集めています。
本展は、侯爵家秘蔵のルーベンス、ヤン・ブリューゲル(父)、クラーナハ(父)を含む、北方ルネサンス、バロック、ロココを中心とする油彩画と、ヨーロッパでも有数の貴族の趣向が色濃く反映された、ウィーン窯を中心とする優美な陶磁器、合わせて約130点で構成されます。絵画と陶磁器の共演は、優雅さとくつろぎが調和する貴族の宮廷空間へ誘ってくれることでしょう。
リヒテンシュタイン侯爵家は14世紀頃から収集活動を始めていたと考えられていますが、特にカール・オイゼビウス侯(1611-1684)は「美しい美術品を集めることにこそお金を使うべき」との家訓を遺しています。そしてコレクションに関して最も重要な人物は、その子ヨハン・アダム・アンドレアス侯(1662-1712)でしょう。彼は情熱をもって美術作品を収集しただけでなく、コレクションを家族信託遺贈とし、個人の所有ではなく家系に属するものとして侯爵家の跡取りのみが相続できるようにしました。リヒテンシュタイン美術館でもあったウィーンの夏の離宮を建設したのもこの侯爵です。こうしてコレクションを守る意識が代々受け継がれていたからこそ優れた芸術品は戦火をくぐり抜け、世界が注目する珠玉の作品を今なおわれわれが目にすることができるのです。
装飾が多く施された衣服をまとい、美しく着飾った聖女の優美な立ち姿をご堪能ください。
幼い聖母を優しく飾りたてる母親の愛情が感じられる作品です。ハプスブルクが統治していた関係で、ウィーンにはルーベンスやブリューゲルなどのフランドル絵画が多くもたらされました。
ヴァルトミュラーの驚くべき技量により、花や磁器、金銀細工といった多様な素材の質感が見事に描き分けられています。
当時は貴重だったホットチョコレートがこぼれないように、受皿に支えが付いています。華やかに装飾されたその姿からは、日常的に使用するものにも美しさが求められていたことがわかります。
美しく輝く金色に、色とりどりの花が描かれたこうしたティーセットがテーブルに並べられる様子は、まさに壮観だったことでしょう。