展覧会の構成と主な作品紹介

5月7日(木)より後期展示です。
以下の2作品が期間限定展示となります。
(その他の作品は通期展示です)

・サンドロ・ボッティチェリ《聖母子と洗礼者聖ヨハネ》 3月21日~5月6日
・偽ピエル・フランチェスコ・フィオレンティーノ《聖母子と洗礼者聖ヨハネ》 5月7日~6月28日

序章 富の源泉:フィオリーノ金貨

表にフィレンツェの百合の紋章、裏に守護聖人洗礼者聖ヨハネを刻印したフィオリーノ金貨は1252年に初めて鋳造され、中世から初期ルネサンス時代にかけて国際通貨となります。町の名にちなんで名づけられたこの金貨がフィレンツェをヨーロッパ経済の中心へと押し上げ、ひいてはルネサンスの繁栄を生み出したのです。

第1章 ボッティチェリの時代のフィレンツェ

ボッティチェリの《ケルビムを伴う聖母子》の額縁に貨幣の鋳造や銀行業、商人の活動を監督した両替商組合の象徴である金貨があしらわれているように、彼の時代のフィレンツェでは芸術と金融、商業活動は密に関わっていました。ここでは絵画だけでなく、当時の経済活動をうかがわせる資料や商人の仕事道具を紹介します。

第2章 旅と交易:拡大する世界

ヨーロッパ各地にフィレンツェの銀行の支店が開設され、旅行者や商人は現金に代わり信用状を携行して長旅に出られるようになります。交易は活発化し、フィレンツェにはヨーロッパだけでなく遠く中東からの商品も行き交いました。ここでは、航海図や、旅の道具、商品を輸送する船旅の様子を伝える絵画などを紹介します。

第3章 富めるフィレンツェ

13世紀以降、ヨーロッパではたびたび奢侈しゃし禁止令という贅沢を戒める条例が発せられます。
衣類や宝飾品のみならず、饗宴や婚礼、葬儀での節制を求める条例でした。金融、商業で富めるフィレンツェでも例外ではありませんでした。この章では、禁止の対象となった壮麗な婚礼や葬儀の様子を表した作品を展示します。

第4章 フィレンツェにおける愛と結婚

フィレンツェの商人や銀行家の寝室は、結婚生活・出産・死が展開されるプライベートな空間でした。寝室の調度のうちカッソーネ(長持)と呼ばれる婚礼家具や宗教画、出産盆(出産祝いを載せる盆)には、夫婦の社会的役割を示す図像が選ばれ、フィレンツェ・ルネサンスの社会が依って立つ価値観や美徳を伝えてくれます。

第5章 銀行家と芸術家

ルネサンス期のフィレンツェの名作の数々はメディチ家をはじめとする銀行家一族の注文によって制作されました。メディチ家から絶大な信頼を得ていたボッティチェリは、彼らの要望を満たす作品を生み出す理想的な画家でした。この章では、銀行家による注文作品とともに彼らの豪華な生活を偲ばせる品々を紹介します。

第6章 メディチ家の凋落とボッティチェリの変容

メディチ銀行の衰退とともにフィレンツェは危機の時代を迎えます。この頃、台頭した修道士サヴォナローラが行った「虚栄の焼却」では贅沢品や宗教上好ましくない芸術作品が燃やされます。ボッティチェリの晩年の作品はそうした時代の空気を反映しています。