ヴェルディ:オペラ『オテロ』(演奏会形式)全4幕(原語上演・字幕付き)

演奏会形式オペラ
オーチャードホールと東京フィルの歩み

オペラの(舞台演出なしの)演奏会形式は、ここ数年増える傾向にあると言われている。オペラの音楽そのものに集中して聴くことができると、演奏家にとっても聴衆にとっても好評だという。

実は、この形式をいち早く取り入れたのが、何を隠そう、オーチャードホールと東京フィルハーモニー交響楽団なのだ。1992年から10年間ほど、当時の同団の常任指揮者大野和士が、『オペラコンチェルタンテ』シリーズで、定番作品から上演機会の少ない珍しいオペラまで、幅広いレパートリーを紹介し、日本のオペラ・ファン拡大に貢献した歴史と伝統がある。

イタリア・オペラの申し子とも言えるバッティストーニという才能を得て演奏会形式が復活!2015年『トゥーランドット』(プッチーニ作曲)、2016年『イリス(あやめ)』(マスカーニ作曲)で圧倒的な成功をおさめ、バッティストーニのスターの座が確立したと言ってよい。そして今年2017年9月に、満を持して『オテロ』(ヴェルディ作曲)がオーチャードホールにお目見えする。

イタリア・オペラの申し子
アンドレア・バッティストーニ

2016年10月、若干29歳にして東京フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者に就任した若き俊英アンドレア・バッティストーニ。イタリアのヴェローナで生まれ、アレーナ・ディ・ヴェローナで子どもの頃から身に付けたイタリア・オペラのレパートリーは数知れない。特に、プッチーニやマスカーニ、そしてヴェルディといった19世紀イタリア・オペラ巨匠の作品を最も得意としている。

今回挑む『オテロ』について尋ねると、「2015年の『トゥーランドット』は、“誰も寝てはならぬ”などの名アリアも有名な、誰もが知っている作品。2016年の『イリス』は、どちらかというとあまり知られていない演奏機会の少ない作品。今年は、イタリア・オペラの歴史上重要な作品『オテロ』で勝負をかける」と意気込んでいる。

  • ©大久保惠造

    指揮・演出
    アンドレア・バッティストーニ

    1987年ヴェローナ生まれ。アンドレア・バッティストーニは、国際的に頭角を表している若き才能であり、同世代の最も重要な指揮者の一人と評されている。2013年1月よりジェノヴァ・カルロ・フェリーチェ歌劇場の首席客演指揮者に、年間にオペラ2作品、交響曲公演2プログラムを指揮する3年契約で就任。東京フィルハーモニー交響楽団では2015年4月より首席客演指揮者を務め、2016年10月首席指揮者に就任。

     東京では『ナブッコ』(二期会)等のオペラ、ローマ三部作等のプログラムで東京フィルを指揮し、そのカリスマ性と繊細な音楽性でセンセーションを巻き起こした。2015年東京フィルとのコンサート形式『トゥーランドット』では批評家、聴衆両者に対し音楽界を牽引するスターとしての評価を確立。東京フィルとは日本コロムビアより5枚のCDを発表している。
     注目すべきキャリアとしては、スカラ座、トリノ・レージョ劇場、カルロ・フェリーチェ劇場、ヴェニス・フェニーチェ劇場、ベルリン・ドイツ・オペラ、スウェーデン王立歌劇場、アレーナ・ディ・ヴェローナ、バイエルン国立歌劇場等と共に、東京フィル、スカラ・フィル、サンタ・チェチーリア国立アカデミー管、イスラエル・フィル、ベルリン・ドイツ・オペラ等世界的に最も著名なオーケストラ等とも多くの共演を重ねている。

     既に日本のメディアにも多数出演。最近では、『題名のない音楽会』、『ららら♪クラシック』など。この春には、自身初の音楽に関する著作の日本語版も発刊予定。マルチな才能を発揮している。

『オテロ』が持つドラマ性を
最先端のテクノロジーで彩る

今回は、これまでの演奏会形式オペラでは実現することができなかった、驚くような仕掛けを用意している。アコースティックな演奏のために作られたコンサートホールであるオーチャードホールの中に、最先端のテクノロジーを活用した新たな空間が出現する。その役を担うのは、今最も注目を集めるメディアアーティストの真鍋大度が率いるライゾマティクスリサーチだ。今回の企画のために、真鍋とバッティストーニが初めてミーティングを行った日、真鍋が発する言葉やアイデアにバッティストーニは魅了され、演奏会を共に創り上げられることに歓喜した。この新たなタッグが、英雄の内面の崩壊を描いた心理劇をどのように作り上げるのか、期待が膨らむ。

  • 映像演出
    ライゾマティクスリサーチ

    真鍋大度・石橋素主宰による技術と表現の新しい可能性を探求する部門。Rhizomatiksのなかでもメディアアート、データアートといった研究開発要素の強いプロジェクトを中心に扱い、まだ見たことのないモノ・コトを世の中に発表していく。ハード・ソフトの開発から、オペレーションまで、プロジェクトにおける全ての工程に責任を持つ。また、人とテクノロジーの関係について研究し、様々なクリエイターとのコラボレーションワークを実践していく。

    https://research.rhizomatiks.com

  • ©Shizuo Takahashi

    映像演出
    真鍋大度

    1976年東京生まれ。東京理科大学理学部数学科、岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)卒業。2006年Rhizomatiks 設立、2015年よりRhizomatiksの中でもR&D的要素の強いプロジェクトを行うRhizomatiks Researchを石橋素氏と共同主宰。プログラミングとインタラクションデザインを駆使して様々なジャンルのアーティストとコラボレーションプロジェクトを行う。米Apple社のMac誕生30周年スペシャルサイトにてジョン前田、ハンズ・ジマーを含む11人のキーパーソンの内の一人に選出されるなど国際的な評価も高い。

    http://www.daito.ws