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2024.12.22 UP

イベント

【イベント】
25ans(ヴァンサンカン)×Bunkamura「はじめての茶道の世界」開催レポート

渋アート連携施設の1つである五島美術館で、12月11日(水)に開催された『25ans(ヴァンサンカン)×Bunkamura「はじめての茶道の世界」』のイベントの模様をご紹介します。

今回ご紹介するイベントの詳細はこちら

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このイベントは、茶道の世界にはじめて触れる方向けに、お茶会での作法や立ち振る舞いなどの基礎知識を学びながら楽しく茶道の魅力に触れられる講座付きお茶会として、五島美術館の庭園内にある茶室「古経楼」にて開催されました。

五島美術館正門。イベント当日は、紅葉が赤く色づき、見ごろを迎えていました。

 

■展覧会とあわせて楽しむ、五島美術館ならではのお茶会体験

まずは五島美術館内の一室で、現在開催中の『館蔵 茶道具取合せ展』の見どころを五島美術館学芸員の菅沢そわかさんからお話しいただきました。

『館蔵 茶道具取合せ展』のチラシ

本展覧会では、茶碗・茶入・釜など喫茶に使用する道具や、軸・花入・香合など茶室の空間を構成する道具、食器・酒器をはじめとした茶事に用いられる懐石道具など、様々な茶道具が約90点展示されています。特に、展示室にしつらえられた五島美術館の茶室「古経楼」「松寿庵」「冨士見亭」の床の間原寸模型には実際に軸や花入が配され、まるで茶室で鑑賞しているかのようなリアルさを感じることができます。

菅沢さんからは展覧会の見どころ解説の他にも、茶事の流れや茶道具の種類についてなど茶道の基礎知識もお話しいただき、これから実際に体験するお茶会への期待が高まる事前講座となりました。

講座の後はいよいよ茶室「古経楼」に移動し、お茶会体験が始まります。

五島美術館本館から古経楼へは飛び石が配され、風情のある木戸を通って向かいます。

 

■特別な空間で、特別な体験を

五島美術館の庭園内にある茶室「古経楼」「冨士見亭」は共に国の登録有形文化財に登録され、現在は通常非公開となっています。「古経楼」は明治39年(1906)に造られ、大正10~11年(1921~22)に改修された茶室で、日本建築独特の温かみと厳かさを併せ持ち、室内のところどころに明治~大正期のモダンさが薫る建物。室内に入れるのは茶会に参加する時か、年2回行われる特別公開の時だけとなっており、まさに今回は貴重な機会となりました。

参加者の皆さんはまず「古経楼」の広間に上がり、身支度を整えます。今回は洋服でも参加OKですが、茶道具などを傷つけないようアクセサリーを外し、足袋の代わりに白い靴下を履くと、自然と心の準備も整ってくるような気がします。そしていよいよ茶室へと足を踏み入れます。

古経楼の茶室。庭先からは川崎・横浜方面を一望することができます。/ photo by Shigeo Ogawa

 

■おもてなしの心を感じるお茶会体験

今回の講師は、榎本宗白(そうはく)先生。裏千家の教授であり、代々続く稽古場を中心に多くの学校や企業での指導、さらには茶道の雑誌・書籍などの監修も務められています。

はじめに、榎本先生から茶道やお茶会の基本的な知識や茶道具についてのお話しを伺います。お茶会では参加者や季節にちなんだしつらえでお客様をお迎えするそうで、今回榎本先生が選ばれたお菓子(主菓子)や器などの道具は、「冬」や「年の瀬」にちなんだものを中心に「洋」の文化を取り入れたものもありました。

左)雪輪文様の茶碗と、今回のために榎本先生がデザインされた主菓子『濃栄類』
右)香合は聖書型、紙釜敷は冬にちなんだある曲の楽譜がデザインされたもの

また、床の間に掛けられた軸は『和敬清寂』。榎本先生が「今回のイベントに参加される皆さんに一番合うと思って」選ばれた軸で、茶道の基本の心なのだそう。こうした道具選びのひとつひとつにこめられた榎本先生のおもてなしの心を伺いながらレクチャーを受け、より深い学びを得られる時間となりました。

お菓子やお茶のいただき方のレクチャーでは「なぜその動きをするのか」など、なるほど!と思うようなお話しも。実践する際は、榎本先生のお弟子さんたちにサポートしていただきました。

参加した記念に写真を撮れるようにと、終了時に別室の床の間にもお茶、お菓子、軸、花入を飾っていただきました。すべて「冬」にちなんだものです。

 

イベント終了後は、もう一つの茶室「冨士見亭」の特別見学と共に、庭園の散策、展覧会鑑賞などを自由に楽しみました。

「冨士見亭」は履物を履いたまま腰かけて茶道を楽しむことができる『立礼席(りゅうれいせき)』と呼ばれるスタイルの茶室で、昭和32年(1957)に建てられました。大きな肘掛け窓から見る景色はまるでパノラマ写真のようで圧巻です。

「冨士見亭」の名前の通り、天気がいい日には窓から富士山が見えることも。/ photo by Shigeo Ogawa

当日は冬晴れの散策日和。五島美術館の庭園は木々が多く空気が澄んでおり、紅葉を楽しむのにぴったりでした。

 

参加者の皆さんも初めは緊張の面持ちでしたが、榎本先生の「茶道を身近に感じて、楽しんでもらいたい」という思いが伝わる語り口と初心者にもわかりやすい解説、そして何より自然なお心配りですぐに緊張がほどけ、皆さん最後まで楽しんで体験され、五島美術館の魅力もたっぷり楽しんだ様子でした。

 

渋アートでは今後も日本美術や文化が楽しめるイベントをご紹介してまいります。

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今回ご紹介したイベントの会場となった、五島美術館の茶室「古経楼」「冨士見亭」の特別公開が実施されます。現在開催中の展覧会とあわせて、ぜひ足をお運びください。

[展覧会情報]
五島美術館『館蔵 茶道具取合せ展』 詳細はこちら >
2024年12月10日(火)~2025年2月16日(日)

◆茶室「古経楼」「冨士見亭」特別公開
2025年1月30日(木)午前11時~午後3時
*当日入館者・入園者見学無料

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