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2024.11.29 UP

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【イベント】「大島紬特別トークショー」開催レポート

11月17日(日)に開催された「大島紬特別トークショー」の模様をご紹介いたします。

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本トークショーは、鹿児島県本場大島紬協同組合連合会(本場奄美大島紬協同組合、本場大島紬織物協同組合、藤絹商工協同組合)主催「大島つむぎコレクション2024」[11月15日(金)~17(日)] 内にて開催されました。
※イベントの詳細はこちら

大島紬は鹿児島県奄美大島発祥の絹織物で、そのルーツは1300年以上も前にさかのぼる伝統工芸品。精緻なデザイン、気品のある艶、軽くて暖かく、しわになりにくいしなやかな着心地が特徴です。

会場には、本場大島紬の反物がずらりと並び、中には美術品さながらの超絶技巧を駆使した絣も。機織り機の実演見学ブースでは職人技が間近で見られ、大島紬の小物や奄美・鹿児島のおいしい特産品が並ぶブースもあるなど、思い思いに大島紬の魅力を楽しめる空間となっていました。

機織り機の実演を間近で見学。図案通りの柄になるようにたて糸とよこ糸を一本一本、模様を合わせて織り上げていく作業には気が遠くなりそうです。30以上の行程を経て完成する大島紬は、それぞれの行程を担当する職人たちの熟練の技で紡がれたチームワークの結晶といえます。

 

トークショーの進行は、季刊誌『七緒』の鈴木康子編集長。山種美術館館長の山﨑妙子さんと、着物スタイリストの大川枝里子さんが登壇し、「大島紬で日本美術鑑賞に行こう」というテーマでお話しいただきました。

創設者の山崎種二氏が「絵は人柄である」という信念のもと、同時代の画家と直接交流しながら作品を集めてきたエピソードが、孫である山﨑館長から語られました。

 

山種美術館は1966年開館の日本初の日本画専門美術館です。
※こちらも合わせてご覧ください:『渋アートと巡る ── 山種美術館』

まず山﨑館長から、山種美術館の成り立ちやコレクションの特徴、12月8日(日)まで開催中の『特別展 没後50年記念 福田平八郎×琳派』と、次回展『特別展 HAPPYな日本美術 ―伊藤若冲から横山大観、川端龍子へ―』についてご紹介いただきました。

続いて、日本美術と着物のスタイリングのコラボレーションとして、大川さんが山種美術館の所蔵品からインスピレーションを得たスタイリングを、大島紬の代表的な種類《泥大島》《色大島》《白大島》の3パターンでご紹介。作品画像と合わせて紹介されたコーディネートはどれも印象的で、柄物の合わせ方や小物の選び方など、ご参加の皆さんも頷きながら聴き入っていらっしゃいました。

『特別展 没後50年記念 福田平八郎×琳派』にて展示中
「牡丹」 福田平八郎 1924年
《色大島》それぞれの緻密で繊細な表現がシンクロするコーディネートに。

 

コーディネートのポイントをお話しいただく中で、大島紬と日本美術との親和性の高さが浮き彫りになりました。写実的な表現とデフォルメされたデザイン、見立ての面白さや、色の合わせ方、余白の美など、共通する特徴がいくつも飛び出し、着物と日本美術を合わせてとらえることで、それぞれへの興味がより深くなっていきます。

美術館では絵だけでなく、例えば掛け軸であれば裂地の部分など表装も合わせて鑑賞することができます。山﨑館長によると日本画家の上村松園は表装にもこだわり、自ら表具屋に指定をしていたのだとか。また、大川さんからの「この作品が着物だったら?帯だったら?といった視点で鑑賞するのも面白いのでは」といった提案に、会場は笑いに包まれながらも納得の様子。美術鑑賞で感性を磨き、そこから普段のコーディネートのヒントをもらうことで、作品がさらに身近に感じられそうです。

 

『特別展 没後50年記念 福田平八郎×琳派』にて展示中
「彩秋」 福田平八郎 1943年
《泥大島》の着物に「琳派」にかけて光琳菊の帯を合わせたコーディネート。作品の色使いも参考に。

 

終始和やかな雰囲気でトークショーは終了しました。終了後は、皆さん展示されたスタイリングを間近で見ようとステージに集まり、それぞれ写真に収めていらっしゃいました。

山種美術館では年間を通して《きもの特典》というサービスがあります。この機会に着物で美術鑑賞はいかがでしょうか?

渋アートでは今後も日本美術や文化が楽しめるイベントをご紹介してまいります。

 

[展覧会情報]
2024年9月29日(日)~12月8日(日)
特別展 没後50年記念 福田平八郎×琳派 ※本展覧会は終了しました
2024年12月14日(土)~2025年2月24日(月・休)
『特別展 HAPPYな日本美術 ―伊藤若冲から横山大観、川端龍子へ―』

[山種美術館 最新情報]
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