渋アート

トピックス

2026.06.30 UP

展覧会

【展覧会情報】
渋谷区立松濤美術館「没後50年 髙島野十郎 展」

渋谷区松濤にある渋谷区立松濤美術館。7月4日(土)より開催される展覧会をご紹介いたします。

髙島野十郎(1890-1975)は、福岡県出身の洋画家です。東京帝国大学(現・東京大学)農学部水産学科を首席で卒業しながらも画家の道を選び、独学で絵を学んだ野十郎は、特定の美術団体に属さず、流行や時代に迎合することなく、自らの理想と信念にひたすら忠実であろうとしました。晩年に千葉県柏市へ移る前の約50年、途中に留学や帰郷を挟みながらも東京の渋谷や青山にアトリエを構えていた、渋谷区にゆかりの深い人物でもあります。

没後50年を機に開催する本展は、初公開作品や青木繁、坂本繁二郎、岸田劉生など関連する作家の作品、関係資料を含めた約170点を展覧する、髙島野十郎展としては過去最大規模の回顧展となります。「蝋燭」や「月」を主題とした代表作はもちろん、彼の芸術が形成されたルーツを遡り、自身のよりどころとしてきた仏教的思想を読み解きつつ、青年期や滞欧期の作品など、これまで大きく取り上げられなかった部分にも焦点を当てます。また、野十郎関係者による書簡やメモ等の資料から、彼がひとりの人間としてどのように生き、周囲とどのような関係を築いたのか、彼の人間像にも改めて迫ります。

「孤高の画家」と称されてきた髙島野十郎の新たな全貌をお楽しみください。


髙島野十郎《満月》昭和38(1963)年頃 油彩・画布 東京大学医科学研究所蔵

 

◇プロローグ:野十郎とはだれか

野十郎の回顧展が初めて開催されたのは昭和61(1986)年でした。それ以来、いくつかの展覧会や書籍で紹介されてきましたが、多くの人の目に触れてきたわけではありません。そこで本章では、まず野十郎の全体像を概観します。


髙島野十郎《からすうり》昭和10(1935)年 油彩・画布 福岡県立美術館蔵
からすうりは、月や蝋燭に並ぶ野十郎作品を象徴するモチーフ。

 


髙島野十郎《すいれんの池》昭和24(1949)年 油彩・画布 福岡県立美術館蔵
昭和55(1980)年、福岡県文化会館(現・福岡県立美術館)での展覧会「近代洋画と福岡県」に出品され、野十郎が“発見”されるきっかけとなった作品。

 

◇第1章:時代とともに

野十郎は初期に3年ほど参加した小さな絵画グループ「黒牛会こくぎゅうかい」の他には美術団体に属さず、作品の発表は個展のみに徹していました。一方で彼の作品には、当時多くの日本の若い画家たちをひきつけたゴッホや、岸田劉生らによる美術団体「草土社そうどしゃ」の影響がみられます。また、青木繁や坂本繁二郎などの同郷の画家たちとの交流も画業形成に寄与していると考えられます。
本章では、野十郎が写実の画風を確立させていく道程を、同時代の美術の中で捉え、「孤高の画家」と呼ばれる野十郎も、日本近代美術史に連なる画家の一人であることを紹介します。


髙島野十郎《田園太陽》昭和31(1956)年 油彩・画布 個人蔵

 

◇第2章:人とともに

野十郎と長年交流のあった洋画家・大内田おおうちだ茂士しげしは野十郎について「人間ぎらいは相変わらずで、結婚もせずにこのアトリエに一人住み、晴れれば畑で働き、降れば絵を描くという毎日であった」と書いています。
確かに、「黒牛会」と大内田を除くと画家との交わりはほとんどありませんでした。しかし野十郎は人を遠ざけていたわけではありません。彼は魅力ある人物だったようで、野十郎の絵を愛し、素朴で気骨ある生き方に共感する人たちが数多くいました。
本章では、野十郎に魅せられた人たちが守ってきた作品とともに、彼らが捉えた野十郎の生身の姿を紹介します。


髙島野十郎《蝋燭》大正時代(1912-26) 油彩・板 福岡県立美術館蔵
野十郎は生涯に渡って蝋燭を描いてきた。それらは個展で発表されることはなく、親しい友人やお世話になった人へ贈られた。

 


髙島野十郎《秋の花々》昭和28(1953)年 油彩・画布 個人蔵
雲仙岳と有明海の干潟を背景に秋の花々が咲き誇る。知人を頼って福岡に長期滞在していた際の作品で、個展に出品された後、大学時代の友人の手に渡った。


◇第3章:風とともに

本章では、ヨーロッパ留学中の風景や、日本全国を旅して描いた四季の風景を紹介します。
野十郎は一人気ままに旅に出ては、気に入った場所に長期間滞在して絵を描きました。目に見える風景だけでなく、匂いも光も空気までも味わい尽くし、その経験すべてを1枚の絵に凝縮していたようです。


髙島野十郎《小さき停車場》昭和5(1930)年 油彩・画布(厚紙貼) 個人蔵
グラスゴーのビショップトン駅を描いた作品。現在も同じ建物が残る。野十郎はパリやロンドンのような大都会の街角よりも、本作のような田舎の何気ない風景を好んで描いていた。

 

◇第4章:仏の心とともに

野十郎は、詩人で禅宗に帰依していた兄・宇朗の影響からか、青年時代から仏教に傾倒していました。「寫実の極致、やるせない人間の息づき――それを慈悲といふ」(髙島野十郎「遺稿ノート」より)と述べ、対象を写実的に描くことを慈悲の実践と捉えていた野十郎にとって、絵を描くことそのものが仏の教えに接近することでもありました。
本章では、野十郎が生涯よりどころとしていた広義での仏教をはじめ、広く宗教を予感させる作品を紹介します。


髙島野十郎《雨 法隆寺塔》昭和40(1965)年 油彩・画布 個人蔵

 


髙島野十郎《空》昭和23(1948)年以降 油彩・画布 個人蔵
本作の裏面には作品名とともに「色不異空 空不異色 色即是空 空即是色」という般若心経の一節が野十郎によって記されている。

 


髙島野十郎《割れた皿》昭和23(1948)年以降 油彩・板 福岡県立美術館蔵


高島野十郎《さくらんぼ》昭和32(1957)年 油彩・画布(板貼) 個人蔵
割れた皿、腐りかけて色が変わったさくらんぼ。形あるものはいつか失われ、命あるものはいつかは果てるという野十郎の思想を垣間見ることができる。


◇エピローグ:野十郎とともに

最後に、本展全体を振り返りながら、もう一度野十郎の作品をご覧いただきます。目の前のひとつひとつの作品を細部にいたるまで味わい尽くすことで、野十郎の眼差しや、絵描きとしての在り方を追体験することができるでしょう。


髙島野十郎《秋陽》昭和42(1967)年 油彩・画布 福岡県立美術館蔵

 


髙島野十郎《睡蓮》昭和50(1975)年 油彩・画布 福岡県立美術館蔵

 

■関連イベント

1.記念対談
「生きている野十郎―この世に85年、あの世に50年」
日時:8月23日(日) 15:00~(約90分) 地下2 階ホール
登壇者:貝塚健氏(千葉県立美術館館長)
    高山百合氏(福岡県立美術館学芸員)
※定員70 名(要事前申込、応募者多数の場合は抽選)
※無料(要入館料)

2.夏休み子ども美術教室
「観察スケッチに挑戦!お気に入りのものをじっくり見て描いてみよう」
身の回りのお気に入りのものを持参していただき、観察して描きます。 うまく描けなくても大丈夫!いつも何気なく見ているものでも、じっくり観察すると新たな発見があるかもしれません。
日時:8月13日(木)、14日(金) 14:00~(約90分~120分) 地下2 階ホール
講師:檜垣万里子氏(プロダクトデザイナー)
対象年齢:小・中学生(保護者同伴可)
※定員各回12 名(要事前申込、応募者多数の場合は抽選) 
※無料

☆1~2の申し込み方法や締切は、渋谷区立松濤美術館ホームページをご覧ください。※外部サイトに遷移します。

3.学芸員によるミニ講座「渋谷と髙島野十郎」
日時:7月19日(日) 10:30~(約60分) 地下2階ホール
※定員70名(事前申込不要)
※無料(要入館料)

4.学芸員によるギャラリートーク
7月12日(日)、24日(金)、8月15日(土)
各日10:30~(約40分)
※事前申込不要
※無料(要入館料)

5.館内建築ツアー
白井晟一設計の美術館建築を職員がご案内します。
7月10日(金)、17日(金)、24日(金)、31日(金)
8月7日(金)、14日(金)、21日(金)、28日(金)
9月4日(金)
各日18:00~(約40 分)
※各回定員約20 名(事前申込不要)
※無料(要入館料)

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「没後50年 髙島野十郎展」

開催期間:2026年7月4日(土)~9月6日(日)10:00~18:00(入館受付は17:30まで)
※金曜は10:00~20:00 (入館受付は19:30まで)
前期:7月4日(土)~8月2日(日)
後期:8月4日(火)~9月6日(日) 
※会期中、一部展示替えあり

休館日:月曜日[7月20日(月)は開館]、7月21日(火)、8月12日(水)

主催:渋谷区立松濤美術館、毎日新聞社

会場:渋谷区立松濤美術館
京王井の頭線 神泉駅 下車徒歩5分
JR・東京メトロ・東急電鉄 渋谷駅 下車徒歩15分
〒150-0046 東京都渋谷区松濤2-14-14
TEL:03-3465-9421
https://shoto-museum.jp/access/

※MY Bunkamuraでの本展覧会チケットのお取り扱いはございません。
 チケットの詳細は渋谷区立松濤美術館ホームページをご覧ください。※外部サイトに遷移します。

※展覧会の会期・開館時間・イベント等が変更・中止となる場合がございます。最新情報は渋谷区立松濤美術館ホームページまたはSNS等でご確認いただきますようお願いいたします。

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

鑑賞巡りのおともに♪
『渋アートMAP 2026 spring-summer』好評配布中!