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2026.03.05 UP

イベント

知られざる魅力に迫る!フォーカスする展覧会―2026年3月の展覧会紹介

美術館や博物館では、1つのテーマにフォーカスしてさまざまな角度から楽しめる展覧会が開催されます。有名な画家の回顧展や時代、国など、切り口も多種多様ですが、今回は普段あまりフォーカスされることがないアイテムの知られざる魅力を取り上げ、より深掘りして楽しむことができる3つの企画展をご紹介します。
鑑賞した後は、今までと違った視点で作品を見られるようになるかもしれません。

 

■浮世絵の脇役「表装」の知られざる美を、肉筆浮世絵と共に。 ―太田記念美術館

太田記念美術館
表装 ―肉筆浮世絵を彩る

2026年3月6日(金)~29日(日)

「表装」とは、絵画や書の保存・鑑賞のために、裂地や紙を用いて掛軸や巻物などに仕立てること。展覧会で解説されることや図録に掲載されることもあまりありませんが、表装は、絵を引き立たせる重要な役割を果たしています。

絵がより魅力的に見えるようさまざまな工夫が凝らされた表装には、画中の女性の着物と同じ模様や描かれた歌舞伎役者の定紋を用いたもの、作品の世界感を広げるようなデザインなど、表装を施した人のこだわりが随所に見られます。

また、江戸時代以降の表装には、豊かな服飾文化を背景に多彩な裂地が活かされており、可憐な模様の更紗や美麗な能装束、刺繍や染模様が鮮やかな着物を用いたものもあり、着物ファンも注目の展覧会です。

左:勝川春章《花魁図》、右:歌川国貞《七代目市川団十郎の暫》 ともに太田記念美術館蔵

太田記念美術館の600点を超える肉筆浮世絵コレクションから厳選された、優れた表装をともなう約40点が展示され、勝川春章、喜多川歌麿、葛飾北斎など巨匠たちの肉筆画を見られるのも大きな見どころ。脇役として見過ごされがちな表装に目を向け、肉筆浮世絵の魅力を味わい尽くす展覧会です。

 

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*きもの割引のご案内*
 会期中きもの(浴衣含む)を着てご来館された方は、入場料が100円割引に。
 ぜひこの機会にきものでお出かけください。
 (チケットご購入時に受付にてお申し出ください。)

 

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■長方形だけじゃない!知られざる『日本の硯(すずり)』の魅力に迫る―國學院大學博物館

國學院大學博物館
企画展「和の硯-SUZURI-」

2026年3月7日(土)~5月10日(日) *入館無料

硯にはさまざまな種類があるのをご存じですか?

中国で生まれ日本に伝わった硯は1300年以上の歴史をもっています。長い時間の中で材質も形状も様々に変化し、『和の硯』は丸みと温かさを加え、優美で雅趣をもった姿になりました。記録や伝達、表現に必要不可欠な道具として身近な存在であったがゆえに、硯自体にもカッコイイものや可愛いものなど、材質の違いだけでなく、見た目の装飾性も意識したものが作り出されていくことになります。

左:重ね硯箱(江戸時代) 硯:高島硯/滋賀県/佐野光一コレクション、右:嵯峨硯 人形硯〔舞妓型〕/ 佐野光一コレクション

この企画展では、硯の中でも日本の硯、『和硯(わけん)』に注目し、その魅力に迫ります。國學院大學で教鞭をとった故佐野光一教授が蒐集した純国産1,500面の中から厳選した約200面、江戸時代から現代のものまで、全国26産地の硯が展示されます。日本の石硯について、ここまでの種類と点数を集めた展覧会は国内初。この機会に、硯の魅力を堪能してみてはいかがでしょうか。

 

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■哲学の建築家・白井晟一の建築思想が宿る『図面』の魅力に触れる―渋谷区立松濤美術館

渋谷区立松濤美術館
サロン展 顕雲 ―白井晟一研究所の図面

2026年3月8日(日)~3月22日(日)  *入館無料
<同時開催>2026 松濤美術館公募展

“建築”が好きな方は、松濤美術館の佇まいにも心惹かれるのではないでしょうか。美しい曲線を持つシックな建物を設計したのは「哲学の建築家」と呼ばれた白井晟一(1905~1983)。彼は、1950 年代に設計した一連の公共建築や、戦後の建築・芸術界で巻き起こった「伝統論争」への参画で注目を集めた建築家で、1968 年度の日本建築学会賞を受賞した《親和銀行本店》や住居《呉羽の舎》、未完のプロジェクト《原爆堂計画》をはじめ、その作品は現在でも高い評価を受けています。

松濤美術館の外観。1981年に開館した、東京都で2番目に古い区立美術館です。(撮影:上野則宏)

そんな彼が主宰した白井晟一研究所は、精緻かつ優美な図面を作成したことでも類まれな存在でした。図面は、建築の形態とともに白井自身の設計思想を内包する媒介物で、それゆえに作成された図面には独特な精神性が漂います。
建築の展覧会では多くの場合、図面は写真や模型と同様に建築物を別の形で再現したものとして扱われますが、この展覧会では白井晟一の主宰する設計事務所が作成した原図面そのものに焦点を当て、その魅力をあますことなく感じられるはず。図面を通して、建築の新しい見方を知ることができるかもしれません。

 

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浮世絵、書、そして建築。そのメインとなるものを鑑賞する機会は多いですが、それらに影響を与え、かつ、なくてはならないものの存在を知ることで、より鑑賞に深みが出るはず。そんな脇役たちが主役としてフォーカスされる少しめずらしい展覧会に、足を運んでみてはいかがでしょうか。