2024.07.14 UP
【コラム】「渋い」をたしなむ~耳で「涼」を感じる伝統工芸~
7月文月(ふみづき):July
厳しい暑さがやってくる7月。和風月名は「文月」と呼ばれていますが、他には「涼月(りょうげつ)」という呼称も。旧暦7月は、厳しい暑さも次第におさまり涼しくなっていったことからこの呼称がついたようです。現在は、最高気温も毎年記録を更新するほどの猛暑日が続いていますね。
そんな厳しい暑さを少しでも吹き飛ばすために。今月は、耳で涼を感じる伝統工芸「風鈴」に注目します。
原宿『東郷神社』の境内にある緑豊かな日本庭園。鈴棚には“夢風鈴”が並んでいます。
“ちりん”という音が特徴の風鈴。この音を聞くと夏が来たなと感じる方も多いのではないでしょうか。
風鈴は、約2000年前の中国で誕生したと言われており、当時は現代のようなガラス製のものではなく、青銅製のガランガランと音が出る「風鐸(ふうたく)」が一般的、大きさも巨大だったようです。
また、風鐸は「占い」のアイテムに利用されていました。竹林に吊るし、風によって起こる音の変化や風向きで占いを行うことから、涼しさ目的では用いられていませんでした。
あるとき中国を訪問していた日本の僧侶によって風鐸が持ち帰られ、平安時代には寺の仏堂に利用されはじめました。目的も「占い」から「魔除け」へと変化、大きさも徐々にコンパクト化していき、さらに江戸時代にはガラス細工技術の発達により、現代のガラス製の風鈴へと姿を変えていったことが「風鈴」の始まりだと言われています。
日本で広く流通している風鈴は、江戸時代に登場した「江戸風鈴」が有名ですが、地域や伝統によって様々な姿・形へと派生していったことから、種類によって音の違いを楽しむことができるようになったようです。
(「wakore 和の暮らしメディア:涼を感じる夏の風物詩 風鈴(ふうりん)について」より抜粋)
風が吹くと心地よい音色につつまれます。ほんの少し、暑さを忘れられそう。
ホームセンターや雑貨屋さんでも見かけることの多い風鈴。音はもちろん、インテリアの一部として、この夏取り入れてみてはいかがでしょうか。
さらに、五島美術館でも「涼」を感じられる展覧会『館蔵 夏の優品展 一味爽涼』が7/28(日)まで開催中です。夏の情景を詠んだ古筆、日本画に表された消暑風景、ブルーをメインとした陶磁器など、涼しい展示室で、目で「涼」を感じられることでしょう。
#渋アート
#風鈴
※本コラムは展覧会開催時に執筆されたものです。五島美術館『館蔵 夏の優品展 一味爽涼』は終了しました。