2026.03.17 UP
みる・まなぶ・ふかめる―太田記念美術館・スライドトーク―
美術館や博物館では、展覧会と合わせて楽しめる講座など、たくさんのイベントが開催されています。作品を新しい視点で見られるようになったり、興味や知識が広がる面白さを感じられたりするのが、イベントの醍醐味。
作品を眺めるだけでなく、そこから一歩踏み込んで学び、鑑賞体験をより深めることができるため、美術館・博物館のファンのみならず、初めての方にこそ体験していただきたいものばかりです。
このシリーズでは、渋アート連携施設で開催される企画を、渋アートスタッフが体験取材し、ご紹介します。
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今回訪れたのは、15,000点にのぼる浮世絵のコレクションから、厳選した作品を展示する太田記念美術館。喜多川歌麿や葛飾北斎、歌川広重の代表作をはじめ、浮世絵の歴史をたどる幅広い収蔵品を、ユニークな視点で親しみやすく紹介しています。
掛軸の裂地やデザインなど、肉筆浮世絵の表装に着目した世界初の展覧会「表装 ―肉筆浮世絵を彩る」に足を運び、担当学芸員さんによるスライドトークを体験取材しました。
*渋アートスタッフによるレポートも!「表装 ―肉筆浮世絵を彩る」開催概要はこちら

JR原宿駅「表参道口」から徒歩5分の場所にある太田記念美術館。賑やかな通りから一本入ると、落ち着いた佇まいの建物が見えてきます。
スライドトークは、開催中の展覧会の作品について、詳しい解説を聴くことができるイベントです。ポイントを分かりやすく教えてもらえるため、興味のあるテーマを学んだり、普段あまり馴染みのない作品を理解したりするきっかけになります。
どなたでも気軽に聴講が可能で、美術館の講座に初めて参加される方や、さらに知識を深めたい方におすすめです。
ひとりで鑑賞するのとはひと味違う、スライドトークならではの面白さをたっぷりとご紹介します。
■見どころがよく分かる!新たな気づきに出会えるスライドトーク
イベント当日はちょうど展覧会の初日。お客様が続々と来場され、めずらしいテーマの企画を楽しみにされている様子が伝わってきました。
スライドトークに参加するには、展覧会の当日入場券とイベントの整理券が必要です。窓口で受け付けしてもらい、さっそく地下1階の視聴覚室へ。会場は満員となり、多くのお客様が来場していました。席を確保して、トークが始まるまで作品を鑑賞している方もいらっしゃいました。

スライドトークの様子。定員の50名に達し、会場は満席に。
スライドトークは、学芸員さんが、展覧会の見どころや作品の楽しみ方を丁寧に解説してくださるので、初めてふれる方も安心して聴講できます。
作者はどのような人物だったのか、表現にどんな特徴があるのなどがよく分かり、新しい視点を取り入れられるのが魅力です。

掛軸の各部分の名称を説明する、学芸員の赤木美智さん。今回の展覧会を楽しむにあたって、基礎的なポイントも学べるため、初心者の方も参加しやすいイベントです。
■作品を見比べる・拡大する―スライドならではの鑑賞体験

勝川春章《桜下詠歌の図》。本紙のみ(左)が投影された後、中廻し(ちゅうまわし)が施された状態の写真(右)が登場。表装が作品の雰囲気を際立たせているのだと実感しました。
今回のスライドトークを担当する学芸員 赤木美智さんのお話で、とくに新鮮だったのが、本紙(絵画の部分)のみの状態と、表装を施した後の印象を見比べるパートです。
短冊を手にする若衆とファンの女性たちを描いた、勝川春章《桜下詠歌の図》では、表装があるかどうかで、作品の見え方がまったく異なることを体感できました。
さらに、本展を監修する濱村繭衣子さんが、中廻しに能装束が使われていると見出したエピソードも。スライドで細かな部分に注目すると、ひとりで展覧会を見ていた時には気づけなかった視点に出会えます。
また、学芸員さんの「ここを見てほしい」というポイントに集中できるのも、このイベントならでは。展示室では、作品全体や浮世絵そのものに目が行くことが多いですが、一部分を拡大した写真を通して、作者のこだわりにふれられます。

宮川一笑《吉原正月の景》。正月の吉原にあふれる賑やかな声が聞こえてくるようです。
江戸の風俗を華やかに描いた、宮川一笑の《吉原正月の景》。中廻しに使われている小袖裂(こそできれ)は、着物の前身となる一般的な衣類ですが、この掛軸の布地には複数の技法が見られます。

宮川一笑《吉原正月の景》の中廻しを拡大した画像。
色糸や金糸の刺しゅうや鹿の子絞など、本紙と合わせて華やかさを演出。それと対比するように、上下に濃い萌黄色をあしらい、全体を引き締め主役を引き立てているところに、デザインセンスの高さが感じられますね。
■学芸員さんの専門的な視点と発見にふれられるイベント

展覧会のテーマを解説する赤木さん
ひとつひとつの作品を丁寧に説明してくださった赤木さんに、スライドトークの魅力についてお伺いしました。
「トークの後、実際に展覧会を鑑賞できるので、新しく学んだ視点をすぐに取り入れられるのが、このイベントの醍醐味だと感じています」
さらに、豊富なコレクションを持つ太田記念美術館だからこそ、多彩な企画が生まれていることが分かるエピソードも。
「企画のたびに、新しいテーマに沿って、収蔵庫から再発見する作業を行っています。すると、『こんな角度からも紹介できる』という気づきが毎回あるんです。テーマを探す目を作品に養ってもらっている感覚ですね」
スライドトークは、学芸員さんの専門的な視点や、新たに掘り起こした知見を共有していただけるので、発見の喜びを分かち合う場にもなっていました。
展覧会を見ることに加えて、学芸員さんの解説を聞いてみると、浮世絵の楽しみ方が広がっていきます。スライドトークに参加して、新鮮な角度から作品を味わってみてはいかがでしょうか。

「表装 ―肉筆浮世絵を彩る」展示風景。1階展示室の中央には、枯山水風の小さな庭園があり、和の空間を体感できます。
◆ ◇ ◆ 渋アート的視点 ◆ ◇ ◆
スライドトークと合わせて、さらに学びを深めるアイデアを2つご紹介します。
①スライドトークの開始前と終了後に、展覧会を鑑賞する
イベントが始まる前に、どんな作品が展示されているのかチェックしておくと、学芸員さんのお話をより理解しやすくなるでしょう。
また、聴講した後、もう一度展示室に足を運び、解説を思い出しながら見ることで、鑑賞体験を深められます。
②ミュージアムショップの書籍を読む
1階ミュージアムショップでは、展覧会に関連する書籍とこれまでに出版された図録が販売されています。浮世絵について詳しく知りたい方や、お気に入りの作品を見返したい方は、ぜひ購入して、ご自宅でも楽しんでみてくださいね。
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取材・文:浜田夏実
※本記事は2026年3月の取材に基づいて掲載しています。最新情報は渋アートサイト、太田記念美術館ホームページ等でご確認ください。
□3月29日(日)まで開催中!

太田記念美術館「表装 ―肉筆浮世絵を彩る」
会期:2026年3月6日(金)~3月29日(日)
学芸員によるスライドトーク:3月24日(火) 10:30 *各回30分程度・定員50名
開催概要やイベントの詳細はこちら

