2025.10.21 UP
文化が薫るまち歩き 〈渋谷の歴史に触れる〉

渋谷周辺には國學院大學博物館や実践女子大学香雪記念資料館など日本の歴史・文化を知ることができる施設のほか、そうした歴史・文化への興味をさらに深掘りできる多彩な文化施設があります。今回は、渋アート連携施設と合わせて訪れたい、渋谷の歴史に触れることができるおすすめの文化施設をご紹介します。

■ 旧朝倉家住宅
“屋敷町”代官山で伝統的な和風邸宅と日本庭園を愛でる

洗練された街並みに大使館や高級住宅が立ち並ぶ代官山は、かつては名士の大邸宅が集まる屋敷町でした。最寄り駅の代官山駅から5分ほど歩いた先にある複合施設「代官山ヒルサイドテラス」のすぐ裏に、そうした屋敷町の面影を残す伝統的な日本家屋が今もひっそりとたたずんでいます。この建物は、東京府議会議長や渋谷区議会議長を歴任した朝倉虎治郎が大正8年(1919年)に建てた「旧朝倉家住宅」。関東大震災や戦災を逃れた和風住宅と庭園を含む敷地が昔のまま丸ごと保存されていて、国の重要文化財にも指定されています。 門をくぐった先に見える木造2階建の主屋は、一家の住居だけでなく賓客をおもてなしする場の役割を果たしていた立派なもので、瓦葺屋根や下見板張りの外壁など大正時代前後に建てられた大邸宅の特徴を持っています。襖、飾り戸棚、羽目板など隅々まで細かい意匠が施された応接間や座敷を巡っていると、名家の邸宅ならではの格式高さと美意識、そして大正8年築という時代の重みが感じられます。洗練された代官山の街並みとのギャップも相まって、タイムスリップしたような気分になること必至です。

左)木造2階建の主屋。ほぼ全室が畳敷きで、応接間に続く1階廊下にも手織りの畳を使用。客人へのおもてなしの心が感じられます。
右)1階奥の「杉の間」。名前の通り杉板が多く用いられ、木の温もりを感じさせます。
さらに庭門の向こうには西渋谷台地の崖線(連続した崖の地形)を取り込んだ緑豊かな回遊式庭園が広がり、都会の喧騒を忘れさせる落ち着いた雰囲気に包まれながら散策を楽しめます。庭園は建物内からも眺めることができ、その芸術的な景観は写真に収めたくなるほどフォトジェニック。春はツツジや新緑、梅雨にはアジサイ、秋にはモミジの紅葉、晩秋にはサザンカと季節によって表情を変えるので、四季折々いつ訪れても楽しみと安らぎを得られることでしょう。

左)室内からの庭園の眺めは1階第1会議室がベスト。緑豊かな庭が木枠に縁取られ、まるで額縁の絵画のようですね。
右)敷地南側に広がる主庭。石灯篭や景石が所々に配置され、丁寧に手入れされた木々と共に豊かな景観を形作っています。
■ 渋谷区文化総合センター大和田
“プラネタリウムがある街”の歴史を継ぐ渋谷の文化発信地

渋谷駅から西口歩道橋デッキを南へ渡ると、オフィスや住宅が混在し、賑わいと落ち着きを併せ持った桜丘地区が広がります。その中でもひときわ存在感を放っているのが、渋谷の文化・教育・福祉・健康の拠点として2010年に誕生した、地上12階建の複合区民施設「渋谷区文化総合センター大和田」。春の桜並木で知られるさくら坂を上った先にあり、遠くからでも見える屋上のプラネタリウムドームが目印です。

大理石とブロンズによる彫刻を創作する安田侃によるパブリックアート。左が1階広場にある《天秘》。右がロビー階入口前に立つ《帰門》。
1階とロビーの入口前には、それぞれ彫刻家・安田侃(やすだ かん)によるパブリックアートが展示されていて、入館する前から文化体験の気分が高まります。館内には、伝統芸能などの舞台芸術に対応した「伝承ホール」、クラシックをはじめ幅広い用途に利用できる「さくらホール」という趣の異なる2つのホールがあり、さまざまな文化芸術公演を鑑賞できます。

伝承ホールとさくらホールでは文化芸術公演を定期的に開催。

左)コスモプラネタリウム渋谷ドーム内の座席は固定席と回転席の2種類(すべて自由席)。固定席は正面(南)向きで映像が見やすく音響も良く、回転席はドームを広く見渡しやすいのが特徴です。
右)かつて天文博物館五島プラネタリウム(東急文化会館)で使用されていた投影機。1957年4月の開館から2001年3月の43年間で、1600万人もの方がこの投影機の星空を見上げました。
まち歩きの休息も兼ねてぜひおすすめしたいのが、最上階にある「コスモプラネタリウム渋谷」です。2001年に閉館した渋谷東急文化会館の人気スポット・五島プラネタリウムの歴史と理念を受け継ぐ形で桜丘に誕生した施設で、“今夜見ることができる星空”の紹介をベースに、星と宇宙へのロマンをかきたてる投影プログラムを幅広く用意しています。天井に映し出される満天の星空をシートに身を委ねながら眺めていると、渋谷のど真ん中にいるとは思えないほど静かで心地よいリラックス気分を味わうことができます。個性豊かな星空解説員たちがそれぞれ独自の内容で星空を案内する生解説も興味深く、「次はこの人の解説を聞きたい」と何度も通いたくなるはず。
また2階には、旧五島プラネタリウムで実際に使用されていた投影機を展示・保存。明るい日差しが差し込む窓の近くで、“プラネタリウムがある街”渋谷の歴史を今も示し続けています。
■ 和カフェ yusoshi 渋谷
「リラックスできる和みの空間」をコンセプトに、渋谷東武ホテルの地下1階で営業している新感覚の和カフェ。お店の8割を占める広々としたマットレス席は、足を伸ばしたりクッションにもたれかかってくつろぐことができる、他ではなかなか体験できない癒やしの空間。その日の気分や体調に合わせておかずを選べるデリごはんから、宇治抹茶ゼリーを仕込んだ贅沢なパフェまで、和テイストの家庭料理やデザートを味わいながらほっこりしてください。

〈メニュー紹介〉
選べるおかずのデリごはん:黒米をブレンドした玄米と具だくさんの豚汁に、8種類のデリからその日の気分や体調でお好きな小鉢を選べます。
★渋谷駅から徒歩約10分

■ギャラリー同潤会(表参道ヒルズ 同潤館)
“表参道のシンボル”の面影を残す建物でアート鑑賞

1923年に起きた関東大震災の復興計画として、財団法人同潤会が大正末期から昭和初期にかけて東京と横浜の16ヶ所に耐震・耐火性能の高い集合住宅を建設しました。その1つとして1927年に竣工したのが同潤会青山アパートです。当時としては珍しい洋風モダンな鉄筋コンクリート造りが特徴で、築年数を重ねるにつれてツタや木が茂って表参道の代表的な風景として親しまれました。残念ながら老朽化のため2003年に取り壊されましたが、その記憶を未来に継承するため、2006年に同地に再開発された表参道ヒルズの建物東端を青山アパートそのままに再現する形で建造されたもの。それが「同潤館」です。

同潤会青山アパートを忠実に再現した同潤館の外観。取り壊し前の写真と見比べると再現度の高さが分かります。
同潤館の外観はまさにかつての面影そのままで、内部には階段や窓台の手すりなどの建築部材を一部再利用。新しい建物でありながら、かつての青山アパートの息づかいが確かに感じられます。3階建の同潤館にはレストランやショップが入居し、2階の「ギャラリー同潤会」では絵画・写真・立体作品・陶芸など幅広いジャンルの展覧会を定期的に開催しています。展示作品との距離感が近いため、より臨場感をもって鑑賞を楽しむことができ、異なるジャンルやアーティストの作品と出会うため何度でも訪れたくなります。窓の向こうにケヤキ並木が見える空間でアートを鑑賞するという、表参道のギャラリーならではの体験を楽しんでみませんか。

左)水平ラインを強調した階段の手すりは、同潤会青山アパートのオリジナルデザインだったものを再現。
右)かつての雰囲気を残したデザインの窓からは表参道とケヤキ並木が見え、ギャラリーの展示空間に独特の趣を添えています。
■ MEALS ARE DELIGHTFUL
食器デザインメーカー「マルミツポテリ」が代々木公園近くの奥渋谷エリアに構える直営店。1階の食器店「DISHES」では定番商品の他にも季節やシーンに応じた製品を提案し、生活空間をイメージしたディスプレイによって自分に合った食器を選びやすくなっています。2階のカフェレストラン「Meals」では、二十四節気を意識した月替わりの一汁三菜メニューを提供。ひと手間を丁寧に加えた優しい味付けの料理にほっこりします。実際の食事を通じて食器のデザインや使い勝手を体感できるよう、すべてのメニューに同店の食器を使用しているのも嬉しいポイント。まずは2階で食事を頂き、気に入った食器を1階で購入するのがおすすめです。

〈メニュー紹介〉
2025年10月の月替わりメニュー(Meal B):「ほうれん草のご飯」と「蒸しねぎの白みそスープ」に「鰆の竜田揚げ-柚子香るきのこ餡かけ-」をメインとした、季節を五感で感じる一汁三菜です。
★代々木公園駅から徒歩約5分/渋谷駅から徒歩約15分
近年の渋谷は大規模な開発が進められて街並みが大きく変化しましたが、中心の繁華街から少し足を伸ばしてみると、渋谷の歴史や文化を現代に受け継いでいるスポットと出会うことができます。時代や街が移り変わっても昔からの姿と精神が息づく、温故知新を探す散策をぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか。

\ 今回のまち歩きスポットはこちら /


■■スポット情報■■
*それぞれ外部サイトに遷移します*
旧朝倉家住宅〈代官山駅から徒歩約5分/渋谷駅から徒歩約20分〉
東京都渋谷区猿楽町29-20
TEL:03-3476-1021
[開館時間] 10:00〜18:00(11月~2月は16:30まで)※最終入館は閉館の30分前まで
[休館日] 月曜日(祝日または振替休日の場合は翌平日休館)、年末年始(12月29日~1月3日)
[入場料] 一般:500円、小中学生:50円
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/shisetsu/bunka-shisetsu/asakura/asakura_00004.html
渋谷区文化総合センター大和田〈渋谷駅から徒歩約5分〉
東京都渋谷区桜丘町23-21
TEL:03-3464-3381
※以下はコスモプラネタリウム渋谷の情報
[開館時間] 火曜日~金曜日:12:00~20:00/土日祝:10:00~20:00
[休館日] 月曜日(祝日の場合は翌平日休館)/年末年始
[観覧料金] 800円
https://shibu-cul.jp/
ギャラリー同潤会〈表参道駅から徒歩3分/渋谷駅から約20分〉
東京都渋谷区神宮前4-12-10 表参道ヒルズ 同潤館2階
TEL:03-5410-0660
[開館時間] 展覧会によって異なります
[入場料] 無料
https://www.gallery-dojunkai.com/
和カフェ yusoshi 渋谷〈渋谷駅から徒歩10分〉
東京都渋谷区宇田川町3-1 渋谷東武ホテルB1F
TEL:03-5428-1765
[営業時間] 日曜日~木曜日:11:00~21:00/金曜日・土曜日:11:00~22:00
[定休日] 年末年始
https://www.dd-holdings.jp/shops/yusoshi/shibuya
MEALS ARE DELIGHTFUL(代々木公園駅から徒歩約5分/渋谷駅から徒歩約15分)
東京都渋谷区富ヶ谷1-17-5
TEL:03-5465-1771
[営業時間] DISHES:11:00~19:00/MEALS:11:30~18:00(ラストオーダー17:00)
[定休日] 水曜日
https://www.marumitsu.jp/m_a_d/
*2025年10月現在の情報です。
*営業時間・定休日が急遽変更になる可能性もあります。各HP等でご確認の上、お出かけください。

