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シブヤから広がる文化ツーリズム 島根編
『マンガデザインで文化ツーリズム』は、マンガデザインを起点に日本各地の“文化”の魅力を学生たちの眼差しから紹介するとともに、地域に根差した歴史や祭、伝統工芸や食文化などの多様な文化を実際に体感できるような情報やストーリーを発信する新たな取り組みです。
山陰に流れる、静かで濃密な時間
今回フィーチャーするのは、山陰地方・島根県。
2025年4月、デザインの視点から各都道府県の“その土地らしさ”を編集するトラベルガイド『d design travel SHIMANE』が発刊されました。そして8月には、書籍と連動した新作落語の上演〈d47落語会〉も予定されています。
島根に秘められたその土地らしさ、そして島根だからこそ出会える風景や時間を少しだけご紹介していきます。
*d47 についてはこちら > meet at d47 番外編 シブヤで文化ツーリズム d47ってどんなところ?
閉じているからこそ、開かれるもの
「山陰にはどこか独特な空気が流れていて、良くも悪くも“開かれていない”ことが、島根らしさだと段々と腑に落ちてきたんです。」と語るのは、〈d47 MUSEUM ストアマネージャー〉で『d design travel SHIMANE』の取材にも携わった鹿子木千尋さん。津和野を中心に県内を巡り、出会った風景からにじみ出る「島根らしさ」を肌で感じ取っていたといいます。
たとえば、器の文化。島根には民藝の窯元が数多くあり、飲食店に入れば、島根の土で焼かれた器が料理を彩ります。その風景は、他の地域からみても珍しいそうで、地域の若者たちにとっても、それが“特別”ではなく“日常”として浸透しているという点に、長い間培われてきた美意識の深さが感じられます。
神楽などの伝統芸能も、地域に根を張る文化のひとつです。神楽と聞くと、神聖でかしこまった印象を受けるかもしれませんが、島根では日々の暮らしとともに生きる娯楽として、自然なかたちで受け継がれています。
閉じている、けれど、閉ざされているわけではない──。島根の文化には、そんな独特な開き方があるようです。外からの価値観に振り回されることなく、内部で静かに守られてきた文化があるからこそ、訪れる人にも実直に届く何かがあるのかもしれません。

津和野に伝わる食医の考え方
津和野は元々城下町で、山奥から出ると急に現れる、不思議なオーラを纏った場所。一番西側の、山口と県境に近い場所で、水路には錦鯉が泳いでいるのだそう。

町の中心にある〈糧(かて)〉という施設は、津和野の中でも特徴的な場所です。元々病院だった建物を改装してレストランギャラリーを営むご夫婦は、仕事をきっかけに移住されたそうですが、多忙な日々で体調を崩してしまったそうです。地元の食に癒された経験から、”食の大切さを伝える場を作りたい”という想いでカフェを始めたとのこと。土日には地元でオーガニック野菜を育てるおばあちゃんがコース料理を振る舞ってくださるのだとか。

津和野には「食医」という言葉があるように、食で体を整える考え方が生活に溶け込んでいて、地域特有の漢方薬もあるそうです。「流行りの思想ではなく、日々を楽しみながら食と向き合う姿勢が印象的で、それが津和野という土地全体に漂っているように感じました」と鹿子木さん。何気ない日常のなかに深く根ざした文化があることが垣間見えた一言でした。
暮らしにそっと触れる「生活観光」という選択
世界遺産・石見銀山のふもとにある〈群言堂〉は、そんな旅の在り方を体現する場所のひとつです。全国に展開する店舗の本店であり、地域の暮らしに根ざしたライフスタイルショップとして営業しています。
特徴的なのは、観光客向けに“見せる”というよりも、地元の人の暮らしを“そのまま開く”というスタンス。空間の設えや会話の端々からも、住む人と訪れる人のあいだに明確な境界がなく、暮らしの延長線上で自然に迎え入れられていきます。
石見銀山そのものは島根を代表する観光地ではあるものの、観光地としての体験ではなく、生活の一部に入ってきてもらうような感覚。島根では、そんな“生活観光”という旅のかたちが静かに息づいていました。

日常に宿る文化に会いに行く
「出身だから」ではなく、「好きだから」。『d design travel SHIMANE』刊行後、d47の島根展に訪れた人たちの中でも特に多かったのが、好きだから来ましたという声だったといいます。縁があるかないかは関係なく、土地に根ざした文化や空気感に導かれて足を運び、その魅力に引き込まれる人も多いのではないでしょうか。
渋谷と島根をつなぐ、落語会
そんな島根の文化をユニークな切り口で伝えようという試みが、近日d47発のイベント〈d47落語会〉で行われます。〈d47落語会〉は落語家・柳家花緑さんが、脚本家・藤井青銅さん書き下ろしの47都道府県の新作落語を上演するプロジェクト。『d design travel』の出版に合わせ、特集地域の会場とd47のある渋谷ヒカリエ内の〈8/COURT〉の2会場で、半年に1度実施しています。

8月の島根回では、まず古典落語を1席、続いて新作 “島根落語" をお披露目。そして『d design travel』発行人のナガオカケンメイさんと編集長・神藤秀人さんが聞き手として加わり、島根落語の創作秘話や、作品の中に散りばめられている島根ならではの表現が語られる、アフタートークの3部構成です。島根をよく知る人も、そうでない人も楽しめる内容になっています。会場ではスタンプラリーも行われており、ファンの間では収集する楽しみも広がっているのだそうです。
各地の空気感を渋谷で楽しめることも、この落語会の魅力。〈d47 MUSEUM〉や〈d47 design travel store〉と合わせて巡れば、渋谷にいながら島根の旅へと誘われるよう。
次回以降の落語会も、現地と2会場で開催予定です。47都道府県それぞれの“地域らしさ”を物語として楽しむ時間をぜひ体験してみてください。
\d design travel SHIMANE/
『d design travel』の特徴の一つは、編集チームが約2か月現地に滞在すること。観光名所やインターネットの情報には頼らず、まず地域らしい人や場を地元の人に挙げてもらうことから始めるそうです。その声を起点に、人から人へと“数珠つなぎ”のように旅を展開していき、”本当に感動したものだけ”を紹介するという方針で誌面作りをしています。

\渋谷と現地で体験!d47落語会/
〈d47落語会〉は、落語家・柳家花緑さん、脚本家・藤井青銅さんとd47が一緒に取り組んでいる47都道府県の新作落語プロジェクトです。
1県に1つずつ、各地を題材にした同時代の新作落語を創作し、現地とd47のある渋谷で上演するのが〈d47落語会〉の特徴です。古典落語・47都道府県落語・トークショーを通して、47都道府県それぞれの “個性” と “らしさ” を紹介していきます。

第31回目は、『d design travel SHIMANE』の出版を記念して島根県をテーマにした新作落語を披露。今回の東京会場(渋谷)は満員御礼となっており、残念ながら当日券の販売も予定されていないとのこと。島根会場のチケットはまだ販売されているので、島根会場へのご参加と現地での旅を組み合わせるのもお勧めです。
【島根会場】
日 程:2025年8月27日(水) 18:00開演(17:00開場)
会 場:興雲閣 2階大広間(島根県松江市殿町1番地59 松江城山公園内)
チケット:前売券 ¥3,630(自由席)・当日券¥3,850(自由席)
イベントの詳細・お申込みはこちら ※外部サイトに遷移します
【東京会場】満員御礼・当日券の販売はありません
日 程:2025年8月12日(火) 19:00開演(18:00開場)
会 場:渋谷ヒカリエ8F 8/COURT
イベントの詳細はこちら ※外部サイトに遷移します
「d47落語会」の詳細はこちら ※外部サイトに遷移します
\ ただいま開催中! /
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47都道府県から集めた“工夫のデザイン”が集結する展覧会
「LONG LIFE DESIGN 4 デザイン物産 2025 〜47都道府県の工夫のデザイン〜」
第36回となる〈d47 MUSEUM〉企画展のテーマは、47都道府県のその土地らしい「デザイン物産」から見る、「工夫のデザイン」です。湧き上がるように生まれた「工夫のデザイン」を各地から集め、「物産展」というスタイルで、暮らしや風景から生まれた“仕組み”や“ものづくり”を紹介します。石見の職人たちの意匠を凝らした、新感覚のクラフトホテル〈MASCOS HOTEL〉が、島根代表として参加。赤茶色の瓦で有名な、石州瓦と同じ土を使ってくるられた、陶器のボウルやプレートが購入できます。
★会期延長!★
期 間:2025年7月4日(金)〜10月19日(日)11月9日(日)
時 間:12:00〜20:00(最終入館 19:30)
会 場:d47 MUSEUM(渋谷ヒカリエ8F)
※入館無料(ドネーション制)
詳しくはこちら ※外部サイトに遷移します
文:元行まみ
取材協力:〈d47 MUSEUM〉
\こちらもあわせてご覧ください/
▶meet at d47 シブヤで文化ツーリズム 滋賀・つるやパン
▶meet at d47 シブヤで文化ツーリズム 滋賀・大與の和ろうそく
【出典】
- 県庁所在地:国土交通省ウェブサイト
https://www.mlit.go.jp/river/toukei_chousa/kasen/jiten/toukei/birn38p.html - 人口:総務省統計局ホームページ
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2023np/index.html - 面積:国土地理院ウェブサイト
https://www.gsi.go.jp/KOKUJYOHO/MENCHO-title.htm