「カルメン」で名高いビゼーが25歳の若さで完成させた「真珠とり」は、セイロン島(スリランカ)の海辺の村を舞台に、真珠とりたちの愛と運命が描かれた作品。美しい旋律にのせて、エキゾティックな世界が展開されてゆく。
久方ぶりに再会した、村の頭領ズルガと漁夫ナディール。幼なじみである二人には、かつて巫女レイラをめぐって争った過去があった。真珠とりのために祈願する巫女を乗せた船が、村へと近づく。巫女に、一生処女のままでいることを誓わせるズルガ。だが、ナディールは、ヴェールで顔を隠したその巫女こそが愛するレイラであることに気づいてしまう。ナディールに愛を告白され、抗いながらもその胸に抱かれてしまうレイラ。二人は捕らえられ、嫉妬に燃えるズルガによって死を命じられる。レイラの命乞いに耳を貸さないズルガだったが、その首飾りを目にして、彼女がかつて彼の命を救った少女であることに気づき、二人を助けようと決意。自ら村に火をつけ、混乱のうちに恋人たちを逃がしたズルガは、一人さびしくその場に取り残される――。
演出・装置・衣装を手がけたピエル・ルイージ・ピッツィは、イタリアのみならず世界で活躍するオペラ界の大御所。フェニーチェ歌劇場再建工事にあたっては内装面のコンサルタントを務め、“世界一優美なオペラハウス”の美しさをこの世によみがえらせる上で力を尽くした。「真珠とり」のエキゾティックな世界を表現する美の手腕に、注目が集まる。
ナディールを演じるテノールの中島康晴は、今回が日本での本格的なオペラ・デビューとなる期待の新星。ミラノ・スカラ座研修所出身、巨匠リッカルド・ムーティの秘蔵っ子と目される実力の持ち主が見せる、みずみずしさあふれる演技を心待ちにしたい。 |
text by 藤本真由 |
|
|
|