「エルナーニ」や「リゴレット」、そして2001年の来日公演時に上演した「シモン・ボッカネグラ」など、ヴェルディの名作を数多く送り出してきたフェニーチェ歌劇場。「アッティラ」も、同劇場において初演されたヴェルディの傑作の一つである。世界史にその名を残すフン族の王アッティラの物語に、ヴェネツィア建国のエピソードを創作で付け加えたこの作品は、あふれんばかりの郷土愛が話題を呼び、初演された1846年のシーズン最大のヒットを記録、イタリア全土を熱狂の渦に巻き込んだ。
 フン族の王アッティラは、ヴェネツィア近郊の町アクイレイアに勝利の入城をはたす。男たちと共に戦い、今は捕虜となった領主の娘オダベッラの勇気をたたえ、彼女に剣を賜るアッティラ。オダベッラはその剣でアッティラに復讐せんと心に誓う。オダベッラの恋人である騎士フォレストは、アドリア海の干潟に逃れ、ここに新しい町ヴェネツィアを作ることを決意する。アッティラの心をつかみ、王妃の冠を与えられたオダベッラは、一瞬の隙をついて彼を剣で刺し、復讐を成就する。
 情熱のヒロイン・オダベッラに扮するのは、前回の来日公演で日本デビューをはたし、大人気を博したギリシャ出身のソプラノ、ディミトラ・テオドッシュウ。当たり役のオダベッラで、再び日本の観客を魅了する。作品の舞台装置には焼失した旧劇場の外壁や緞帳が再現されており、輝かしい伝統を未来へと引き継いでいく真摯な誓いがこめられた舞台となっている。
text by 藤本真由
photo:フェニーチェ歌劇場提供


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