映画版の公開を前に来日したアイーダ・ゴメス。
10月7日、Bunkamura内のリハーサル室で、取材用の写真撮影が行なわれた。
©Atsutoshi Shimosaka
アイーダはよく笑い、よくしゃべり、スタッフが用意したBGMを聞きながら次々とポーズをとる。
「うーん、もう少しパンチの効いた音楽はない? タンゴとか……ヒーリング系の音楽って、スペイン人は眠くなっちゃうのよ(笑)」
長い足に、ドルチェ&ガッバーナの色鮮やかなパンツとTシャツがよく似合う。
素顔のアイーダは、はじけるような笑顔がチャーミングな女性で、極限の恋に生きるサロメとしての彼女とは、まるで別人に見えた。

撮影の後、彼女が情熱を注ぐ舞台『サロメ』のすべてについて聞いた。
こちらの映像をご覧になるには、
Windows MediaPlayer7以降

インストールする必要があります。
PART1
アイーダ・ゴメスが「サロメ」の物語や、女性としての魅力について語ります。

PART2
アイーダ氏が映画を最初に見たときのイメージや、映画と舞台それぞれの見どころ、アイーダ氏の一番好きなシーンを語っています。
観客の皆様へのメッセージもここから


今回の動画配信では、アイーダ・ゴメス氏の言葉を字幕でお送りしています。
ジェネラル環境の方は文字が小さくなり見づらくなりますので、以下をご覧ください。
《 PART1 》
――― アイーダさんは、「サロメ」の物語のどのようなところに惹かれたのですか。
最初にオスカー・ワイルドの作品を読んで、ぜひ「サロメ」を演じてみたいと思いました。女性としても非常に興味がありますし、彼女の持つ情熱、官能といったところをうつし出したいと考えました。
「サロメ」を読んで、彼女の感情の揺れ動きに大変魅力を感じました。その場ですぐに踊り出したくなるような、自分の踊っている情景が頭に浮かんでくるような感じでした。

――― 「サロメ」というと非常に幻想的、怪奇的なイメージが強かったんですが、アイーダさんの「サロメ」はとてもリアルで普通の女性だと思えたんですが。
まず「サロメ」を読んで感じたのは非常に魅惑的かつ官能的で、情熱を持った頭の良い女性だということです。この女性がどのように成長していくのか、その過程が出ていて興味を持ちました。一番最初はバージンで、その後成長していき、そして情熱の極限までいってしまう女性に成熟していく。もちろん私自身は、そんな人間ではないのですが、私が感じたような思いを皆さんにも感じていただければと思います。
 グロテスクで、怪奇的なイメージが強いですが、非常に繊細なところもある物語だと思います。
怪奇的にならないように表現をするのが難しかったです。
官能的でセクシーに表現出来るのですが、それを美しく見せたいと思っていました。
エロティックなところを見せたかったのです。
 誘惑は、女性の武器なんですが、それの見せ方に心を配りました。
例えば、“ヨハネ”に対して“サロメ”が、どのような視線を送っているのか。また“サロメ”が“ヘロデ王”に対してどのような視線を送っているのか興味深いです。憎しみを込めた強い感情を持っていますが、“ヘロデ王”は王様なのであくまでもオープンに出来ない感情を視線で表現している。そういうところをぜひ見ていただきたいのです。
“サロメ”は一人の女性なのですが、彼女の多面性というか、(対する)相手によってどのような視線を送っているか、どのようなダンスを見せるのか、その違いを見ることが楽しいと思います。
私自身が無意識に表現している部分もかなりあると思います。例えば、私自身は人の首を欲しいと思うことは絶対ないです。しかしながら彼女は欲しがります。
  一人の女性が、自身の感情を色々な視線と態度だけでいかに表現していくのかが難しかったです。
私は本当に女性であることをとてもうれしく思っています。

《 PART2 》
――― 今回は、映画と舞台が両方あるわけですが、最初に映画を見たときにどのように思いましたか。
一番最初ですか。
肉体的に疲れを感じることなく、自分が踊っているのを見られたのが、とても嬉しかったです。
自分自身が座っているのに、自分が踊っている姿を見る経験は、以前にはなかったので。
冗談はここまでにして。映画「サロメ」を見た第一印象ですが、カルロス・サウラ監督の作品の中でもっともすばらしい作品に出来上がっていると思います。映像的に美しいですし、また照明の技術もすばらしいと思います。
自分が想像していたものと、ぜんぜん違うものに出来上がっていました。撮影のときは、シーンごとにカットが入ってしまいますので。
また、サウラ監督は、私のことをよく知っているので、映画の中で監督が観客に見せたい「私」というものを撮ってくれました。
今回の作品は、一つの印象でまとめることは出来ないと思います。つまり、映画の中で皆さんがご覧になっている私は、ダンサーであり女優であるともいえますし、女優でありダンサーであるともいえます。見ている人によって意見は違うと思いますが、色々な面が出せたんじゃないかと思います。

――― 日本で上演される映画・舞台の「サロメ」の見所をそれぞれ教えてください。
映画と舞台とは全く違うものですから、ぜひ両方見ていただきたいですね。映画に関しては、すばらしい作品に仕上がっていますし、皆さんに落ち着いて座っていただいて、ファンタスティックな世界を味わっていただければと思います。ただ、舞台の方も来ていただかないと私のエネルギーは皆さんにダイレクトに伝わりません。皆さんが劇場で私と同じ時間を生きる、分かち合える経験が出来るのはやはり舞台だと思います。
アイーダが舞台でどのようなものを皆さんに見せようとしているのか。また舞台という自由な空間をどのように使って表現するのか。そういったことを劇場にいらしてぜひ見てください。
追加のメッセージなのですが、映画は1年半ぐらい前に撮影が終わったものです。あそこに出ている“サロメ”は、その時の私なのです。撮影が終わってから舞台の「サロメ」を70回上演しました。演じるたびに、私はより“サロメ”に近づけたと思います。映画が終わってから1年半の間に私の人生も色々な変化がありましたし、色々な経験をしましたのでぜひ舞台に来ていただいて、現在の「サロメ」を楽しんでいただければと思います。

――― 個人的に一番好きなシーンや見てもらいたいシーンがあれば教えてください。
「7つのベールの踊り」ですね。
「7つのベールの踊り」は、ダンサーが表現出来るもっとも美しいダンスだと思います。
私の楽屋に知人が訪ねてくれたとき、よく「どうやって踊るの。ぜひ夫の前で踊りたいの」と聞かれてしまうのですが、そのくらいインパクトのあるダンスです。
1,000人の観客の前で私は「7つのベールの踊り」を踊っています。自分の裏側をそこにさらけだしているわけです。そこで、自分の女性らしさや内面を皆さんの前で表現出来ればいいですね。

――― 最後に、日本の観客の皆さんに向かってメッセージをお願いします。
私は、日本が大好きです。日本の方もスペインが大好きだと聞いています。ですから、Bunkamuraで、皆さんの前で自分を表現することを楽しみにしています。絶対後悔するような公演ではありませんし、2時間の間、皆さんが色々なことを忘れてしまうような時間を共有出来ればと思います。
私自身にとっても皆さんにとっても忘れがたい2時間にしたいと思っていますので、ぜひ「サロメ」をご覧になってください。

「踊っているときが一番幸せ」というアイーダは、ダンスについて語るとき、ひときわ目を輝かせる。
「私はダンスが大好きです。でも、私の人生はそれだけじゃない。
もし、ダンサーになっていなかったら? なりたかったものはたくさんあるわ。写真も映画もファッションも好きだし……動物が好きだから、獣医になっていたかもしれない。
いろいろな人とコミュニケートしながら、一緒に何かを作り上げていくのが好きなんです」



ページの先頭に戻る
Copyright (C) TOKYU BUNKAMURA, Inc. All Rights Reserved.