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©榎本 敏雄 |
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公演を前にいよいよ来日したアグネス・バルツァ。
3月6日、黒田恭一氏(Bunkamuraオーチャードホール・プロデューサー)による最新インタビューが行われた。
オペラやコンサートなどの舞台はもちろんのこと、インタビューにもベストの姿勢で臨むバルツァを前に、さすがの黒田氏をはじめスタッフも緊張感に包まれる。
しかし、氏の愛情あふれるインタビューに、バルツァは喜びながら熱意をもって語ってくれた。 |
その場限りの、軽いことばなど、ひとこともなかった。アグネス・バルツァの口をついてでたことばはすべて、本気の、真っ直ぐなことばだった。今、自分のはなしたことが日本語に訳されている間、彼女はインタビュアーの目を
じっと見つめたまま、瞬きひとつしなかった。真剣勝負を挑まれているようで、ちょっと恐かった。しかし、このようなアグネス・バルツァだからこそ、ギリシャの情感ゆたかな歌の数々をうたっての、あのような、きく人の心を深く抉れる歌唱であろう、と納得した。
「私はオペラ歌手である前に、ギリシャの女なんです」といって、バルツァは誇らしげだった。カルメンをうたうバルツァも凄い。ロッシーニのオペラのヒロインをうたうバルツァも凄い。超人的なレパートリーの広さを誇るアグネス・バルツァは無敵のディーヴァである。しかし、歌い手としてのアグネス・バルツァの素顔の凄さを知りたかったら、何よりもまず、彼女がその持前の表現力を最大限発揮して、陰影濃くうたうギリシャの歌に耳をすますにかぎる。 |
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