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ノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館
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Masterpieces of Kunstsammlung Nordrhein - Westfalen
20世紀のはじまり ピカソとクレーの生きた時代
ドイツ、ノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館所蔵
2009年1月2日(金)-3月22日(日)
Bunkamura ザ・ミュージアム

ノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館

ドイツの負の歴史から出発

1960年、ノルトライン=ヴェストファーレン州知事は、州議会の反対を押し切りアメリカ人コレクターよりクレー作品88点を購入するという決断をしました。スイスのベルンに生まれたパウル・クレーは、幼少の頃より音楽と絵画の才能を発揮し、芸術家としての道を歩み始めます。しかし、1933年アドルフ・ヒトラー率いるナチスは前衛芸術を徹底的に弾圧し、クレーを含め、芸術家たちは「退廃芸術家」という烙印を押され作品は国外に流出してしまったのです。
戦後のドイツにおいて、クレー作品を高額の出費をしてまで取り戻すことはドイツ人が自らの負の歴史に立ち向かい、ナチス政権中に失われてしまった文化を取り戻すという政治的決断でもありました。
作品を購入した後、ドイツ外務省とノルトライン=ヴェストファーレン州はコレクションによるクレー展を東ヨーロッパの国々に巡回させ、戦後ドイツの外交的使者の役割も担ったのです。

初代館長ヴェルナー・・シュマーレンバッハ

さて、1960年代、ノルトライン=ヴェストファーレン州は、クレーコレクションを獲得したことを起点に、美術館を建設し、初代館長に任命されたヴェルナー・シュマーレンバッハは30年近くに渡ってコレクションを発展させていきました。
彼は、豊富な専門知識と圧倒的に優れた鑑識眼をもって、西洋近代美術の名品だけをコレクションに加えていきます。作品の質へのこだわりは徹底的で、最高の名品を手に入れる為には、最高の値段でも受け入れ、その値段の高さで州において激しい議論を巻き起こすことはしょっちゅうのこと、彼の収集によってドイツにばかり名品が奪われると、州を超えて外交問題に発展することさえありました。
シュマーレンバッハが築いたコレクションは、12点のパブロ・ピカソをはじめキュビスム、シュルレアリスムの作品、表現主義や新即物主義を含むドイツ近代美術など第2次大戦までの絵画、そして、ジャクソン・ポロック、アンディ・ウォーホルやフランク・ステラをはじめとする1945年以降の国際的な美術動向に関わる名品の数々です。まさに「量より質」の作品群は同館のコレクションの核となっています。

ノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館 K20 K21

ノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館は、設立当時はデュッセルドルフのイエガーホーフ城に収蔵され、そこで作品を公開していましたが、1986年に現在のモダンな美術館の建物が建造されました。シュマーレンバッハ(1962-1991在任)の後、アルミン・ツヴァイテ(1991-2007在任)を館長に迎え、現在ではドイツが誇る芸術家ヨーゼフ・ボイスやゲルハルト・リヒターをはじめ現代美術のコレクションが充実した美術館としても知られています。
2002年には1980年以降の美術作品を展示する分館K21(21世紀の美術*「美術」はドイツ語でKunst)が設立され、本館はK20(20世紀の美術)としてリニューアルされました。ノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館は、コレクションの創立から約50年という、ヨーロッパの美術館としては比較的新しいですが、その充実したコレクションによって、ヨーロッパにおける最も重要な近代美術館の一つとして強い存在感を示しています。

K20 Kunstsammlung Nordrhein-Westfalen, Düsseldorf
©Photo: Walter Klein, Düsseldorf

 

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