ポーラ美術館展の印象派コレクション展

2006/1/2(月)〜2/26(日)

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展示構成と主な作品紹介
 本展は、第1章「印象派前夜〜ドガ、ルノワール」、第2章「モネの印象派と点描派」、第3章「セザンヌとポスト印象派」、第4章「世紀末からボナール」の4章に分けて紹介します。
第1章 印象派前夜〜ドガ、ルノワール
 19世紀半ばのフランスでは、産業革命による都市の人口集中、資本家と労働者の対立などを背景に様々な芸術思想が生まれ、独自の絵画様式が形成されていきました。それまでの歴史画や神話画、宗教画など歴史的テーマから離れ、社会の現実をありのまま描く写実主義が登場しました。写実主義は、やがて日常生活や自然の観察を通じて作品を描く印象派を生み出すきっかけとなりました。
 バルビゾン派の画家カミーユ・コロー(1796〜1875)は、戸外で自然をあるがままに写生し、うつろいゆく大気と光にあふれた田園の牧歌的な風景や日常の様相を描きました。コローの風景画は、印象派の風景へとつながっていきます。
 1860年代からドーミエやマネの影響を受け、パリの都市生活を描き始めたエドガー・ドガ(1834〜1917)は、第1回印象派展開催にあたり、参加メンバーを集めるなど中心的な役割を果たしました。彼は戸外で制作することはほとんどありませんでしたが、当時発明されたばかりの写真に影響を受け、人物を極端にクローズアップするなどの斬新な構図で、カフェや劇場など社会の片隅に生きる踊り子や裸婦を描きました。
 印象派の巨匠と称されるピエール=オーギュスト・ルノワール(1841〜1919)。ドラクロワやクールベの影響を受けていたルノワールですが、やがて明るい色彩と柔らかなタッチで女性を描きます。日常生活における様々な女性の姿やモードが花開いたパリでおしゃれをして街に出かける女性の姿を、溶け合うような色彩で描きとめました。
第2章 モネの印象派と点描派
 かつて、歴史画の背景に過ぎなかった風景画が独立したジャンルとして認められるようになったのも19世紀です。セーヌ河口の港町、ル・アーヴルに生まれたクロード・モネ(1840〜1926)は、コローやブーダンらに連れられ、戸外で制作を始めます。明るい太陽や移り行く雲、大気の様相を肌で感じながら制作するモネは、風景から受けた印象や光によって様々に変化する色彩を描き出しました。人物よりも人物を取り巻く大気や光、風景から受ける印象を描きとめることに興味を持ち続けたモネは、晩年まで大気と光を描くことを追究しました。
 印象派展にも参加し、印象派の最年長であったカミーユ・ピサロ(1830〜1903)は、芸術の新しい動向に絶えず関心を持ち続けました。「光」を描くという点で、印象派を出発点としながらも、光学理論や色彩理論などの研究から生み出された点描法を用いたジョルジュ・スーラ(1859〜1891)やポール・シニャック(1863〜1935)ら点描派の画家たちとも交流を重ねました。
第3章 セザンヌとポスト印象派
 印象派に影響を受けながらも独自の芸術を生み出したポール・セザンヌ(1839〜1906)、フィンセント・ファン・ゴッホ(1853〜1890)、ポール・ゴーガン(1848〜1903)。彼らを総称してポスト印象派の画家といいます。印象派の画家たちが、大気や光をとらえようと試みたのに対して、彼らは印象派を出発点としながらも、形態や色彩など絵画の表現性の探究や人間の内面や感情を客観的に描くことを試み、その作品は、ピカソやマティスなど20世紀の画家たちに大きな影響を与えることになります。
 「近代絵画の父」といわれるセザンヌは、自分の感覚をもとに自然の本質を明るい色彩と堅固な形態によって構築的に描き出す独自の画風を生み出しました。
 本章では、セザンヌのほか、南仏アルルで共同生活をしたゴッホ、ゴーガンの作品を通じて、ポスト印象派の様相を探ります。
第4章 世紀末からボナール
 19世紀末のフランスでは、「アール・ヌーヴォー」が花開き、植物をモティーフにした装飾文様が都市の生活空間を支配し始め、装飾芸術の新しい概念が生み出されました。すでに印象主義が広まっていたなか、ピエール・ボナール(1867〜1947)やエドゥアール・ヴュイヤール(1868〜1940)らは、ゴーガンの絵画思想に影響を受け、「ナビ派」を結成するようになります。
個々の感性を重視し、個性を発揮したナビ派の画家たちは、ウィーン分離派などヨーロッパ各地で起きた世紀末運動と連なり、新たな芸術思想を生み出しました。ボナールは、ゴッホやゴーガンのような鮮やかな色彩やダイナミックな構図を用いて、家族や子どもなど親しいものへの慈しみを描こうとしました。


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