19世紀半ばのフランスでは、産業革命による都市の人口集中、資本家と労働者の対立などを背景に様々な芸術思想が生まれ、独自の絵画様式が形成されていきました。それまでの歴史画や神話画、宗教画など歴史的テーマから離れ、社会の現実をありのまま描く写実主義が登場しました。写実主義は、やがて日常生活や自然の観察を通じて作品を描く印象派を生み出すきっかけとなりました。
バルビゾン派の画家カミーユ・コロー(1796〜1875)は、戸外で自然をあるがままに写生し、うつろいゆく大気と光にあふれた田園の牧歌的な風景や日常の様相を描きました。コローの風景画は、印象派の風景へとつながっていきます。
1860年代からドーミエやマネの影響を受け、パリの都市生活を描き始めたエドガー・ドガ(1834〜1917)は、第1回印象派展開催にあたり、参加メンバーを集めるなど中心的な役割を果たしました。彼は戸外で制作することはほとんどありませんでしたが、当時発明されたばかりの写真に影響を受け、人物を極端にクローズアップするなどの斬新な構図で、カフェや劇場など社会の片隅に生きる踊り子や裸婦を描きました。
印象派の巨匠と称されるピエール=オーギュスト・ルノワール(1841〜1919)。ドラクロワやクールベの影響を受けていたルノワールですが、やがて明るい色彩と柔らかなタッチで女性を描きます。日常生活における様々な女性の姿やモードが花開いたパリでおしゃれをして街に出かける女性の姿を、溶け合うような色彩で描きとめました。
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