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2006/1/2(月)~2/26(日) |
Bunkamuraザ・ミュージアム学芸員 宮澤政男
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ルノワールの描く若い女性の透き通るような肌、モネの描く初夏の風景の輝く光。ドガの踊り子が着ているバレエ衣裳はいかにも柔らかそうで、シスレーが愛した水辺の朝には小鳥のさえずりが聞こえてくる―。印象派の作品には、私たちが考える限りの幸せな世界が、しかも明るく描かれている。日常の世界を肯定的にとらえ、そこに美しさを見出すその姿勢は、世界中の多くの人々に支持され、特に女性たちは本能的とも言えるほどの共感を示してきた。
日々の生活の中に見出す幸せ、そして美しさ。印象派絵画の魅力を知っている者は、化粧品会社が熱心に集めた美術品の中に、印象派の上質な作品群があることを聞かされたとき、妙に納得してしまう。ポーラ美術館の9,500点に及ぶ収蔵品の中で、フランス印象派の作品はそのまさに中核であり、古今東西の化粧道具の数々とともに、コレクションを性格づけるものとなっているのである。中でも、ほんのりと紅い瑞々しい肌をしたルノワールの描く若い女性の姿は、このコレクションのシンボルと言ってもいいだろう。
そんなポーラ美術館は、2002年の開館から、多くの美術ファンを魅了してきた。箱根の仙石原の深い森の中にたたずむ華麗な白い美術館は、それ自体としても美しい。そこでは常設展示の他に、意欲的な企画展も開催されている。しかし気楽に訪れるにはちょっと遠いと思っていた人も多いのではないだろうか。本展はそんな方々の期待に応えるべく企画されたと言ってもいいだろう。内容としては、印象派に影響を与えたコロー、クールベの作品から、印象派とその後の展開であるスーラやシニャックの点描作品、さらにその流れとしてのボナールなども含む豊富なものとなっている。同じ印象派の作品も、渋谷では箱根とはちょっと違った表情を見せるはずである。その意味で、本展は既にポーラ美術館に足を運んだことのある人にも、充分に楽しんでいただけるものであり、そこには新たな発見もあるかもしれない。
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