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『白野』制作発表レポート
 
 
 
 
 

06年秋、STUDIOコクーン・プロジェクトから生まれる注目の舞台『白野−シラノ−』。
エドモンド・ロスタンの戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック』を、幕末から明治へ移る日本を舞台に翻案した『白野弁十郎』は新国劇の沢田正二郎によって初演(1926年)され、島田正吾の一人芝居へと引き継がれた。
その名作に今、島田の弟子である緒形拳が挑む。時は6月初旬、これから本格的な稽古に入ろうとする緒形に師への想い、『白野』へ挑む意気込みを聞いた。

   
 

――『白野』は島田正吾さんが新国劇時代から一人芝居と、生涯演じ続けられた役ですね。

 島田先生という“巨人”がいなくなった(04年、享年98)前後から、その役者としての匂いと、新国劇の芝居を伝えていきたい気持ちが僕の中にずっとあったんです。それで今回「コクーンで芝居を」という話が出た時に、「それならば『白野』かな」と思わず、口から出てしまったんだね。
でも、『白野』は島田先生が作り上げた役だし、越えられない山のようなものだから物真似をしただけでは意味がない。そのどこをコピーし、どこで“緒形”を出すかだと思うんです。


――緒形さんご自身が考える部分にも、光を当てていこうと・・・・・。

 それは、なぜこの芝居を演じるかということにも通じるんだけれど。では何が理由かといえば、ここで描かれるのが純愛だから。愛は永遠なるものと、そう考えれば結果として白野の人生を狂わせてしまった千種という女性はもう一人の主人公ともいえるし、その恋人である来栖生馬も白野と同じくらいの一途さで、誰もが一直線に生きる人だよね。
その三人の世界を演じよう、では白野の“鼻”をつけずに素のままの自分で演じればいいかなと・・・・・。そう考えて島田先生のお嬢さんから台本を借りて、僕なりのものを書いてみたわけです。


――舞台姿として大きな鼻ではない、新しい『白野』になるわけですね。

 今は正直、どんなものが出来るか夢を見ていて、語れる段階ではないけれどね。だから、一番混乱している時期のインタビューであることを明記しておいてください(笑)。
でも、演出の鈴木勝秀さんはこのところ僕の原点になっている『ゴドーを待ちながら』(串田和美演出)をきちんと見てくれているし、初対面の時「この人となら、一緒にやっていける」と確信したので、これからの稽古が楽しみです。


――名作の復活と緒形さんの初役、期待しています。

 うん、『白野』は少しのセンチメンタリズムと、純情といえるほど無垢で、無償の愛と――。それだけの単純明快な話の中に、人の心を打ち、深々とさすようなところがあって・・・・・、そこがいいね。

 
   
  interview & text by 袴田京二(フリーライター)  
   
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