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本展出展作家の渡辺眸様がご来館、インタビューにお答えいただきました

2026.08.17 UP


 

―出展作品は、東大闘争を内部から撮影したシリーズですが、撮影を始められた頃の状況についてお聞かせください

東大闘争についてはもう知っている方は少ないかもしれません。当時に遡ると、日大が最初でした。日大には芸術学部がありますから、学生による写真は撮られていましたが、東大の場合は撮影する人は誰もいませんでした。みんな闘争に行っていたので、私だけでしたね。

-撮影された時のご苦労もいろいろとあったと思いますが、作品をご覧になると当時のことは蘇ってきますか。

私は以前から個人的に学生を知っていたのでその流れで私は(東大の内側に)入っていたんですけど、マスコミのスパイじゃないかと思われたこともありました。撮影腕章をつけていない時に何か言われたりしたことはありました。

-キャリアの中で長く大切にしていることはありますか。

作品は公費で撮影しているわけではなく、自費でした。特に東大闘争の写真はマスコミが撮っているわけではないから、個人的に学生を知っていたからこそあそこまで中に入れました。
私の作品はほとんど自費です。1972年に東南アジア、インド、ネパールの旅に出た時も、個人的に知り合いの編集者と一緒に行きましたけど、旅費を出すというようなことはなく、ただカメラをもって旅に出たという感じでした。

-撮影の旅に出る時は「こういうものを撮ろう」とイメージされて行かれるんですか。それとも現地での出会いでしょうか。

ドキュメンタリーは撮る側の癖もありますね。どういう世界があるか、自分ではわからない。写真学校の卒業制作で「テキヤ」(香具師)を撮りましたけど、そういう人たちは仕事中の写真って誰も持っていないらしく、焼き増しして渡したりするとすごく喜んでくれる。テキヤの親分にも「撮ってくれ」と言われました。あの世界は縦社会ですから、そうなると他の人たちも受け入れてくれましたね。撮っていくうちにそういうことを学んでいきました。

-東大闘争を撮影する時も、一番最初のきっかけはご自身で中に入っていかれたのですか。

最初は私のデザイナーの友人(山本美智代さん)と新宿で飲んだり一緒に仕事をしていたのですが、彼女のパートナーが後の東大全共闘議長の山本義隆さんだったんです。自宅で飲んでいる時に「こんにちは」なんて挨拶をしていて。彼は何学部所属というわけではなく、アナーキーに活動していました。それで彼を撮りたくなり東大の中に入らせてもらいました。
その時代って新聞社とかにも現場で撮影するような女性写真家っていませんでしたからね。みんな少し疑っていたんじゃないでしょうか、どこかのスパイじゃないか、共産党系じゃないか、といったように。

-撮影している中で危ないこととかはなかったですか?

危ないこととか…ありましたね。でもそんなに激しくはなく、話をすると別に怪しくないっていう風に感じたらしく。山本さんの近くにべったり貼りついていましたから。

-すごい貴重ですよね。バリケードの中で一緒に生活していたということですよね。

東大の本郷だけではなく駒場にも行って撮らせてもらいました。女性陣はわりと余裕があって、お正月にはお雑煮作ろう、なんてこともしていました。

-365日24時間、ずっと誰かが学校に常駐していたのですね。

そうですね。みんないました。買い出しにはいかないといけませんでしたが。

-撮影したフィルムはどうしていたのですか。

撮影したフィルムは兄のところに預けていました。兄は新聞社勤めでそのあたりのことはよくわかってくれて。撮影したフィルムは完全に後から落ち着いたときにまとめました。最後まで、みんなが捕まった後も私は(東大に)いましたから。

-公費ではなく自費で、しかも危険も感じながら撮り続けていたということですが、それほどまでに突き動かされた事が終わって、どんな心境でしたか?

やり切ったという感じはありました。

-そもそも渡辺さんはどうして写真を始めようと思ったのですか。

大学を卒業して最初は編集の仕事をしていました。取材で対談とかあると、写真も撮ってこいと言われるんです。オートマティックのカメラを押せばいいといわれて、まあ撮れてはいたんです。でもメーカーのこととか何も知らないから、そこから2年間仕事しながら写真学校に行きました。ただ、メカニズムより写真性の方に興味がありました。

-日吉の東京総合写真専門学校ですね。本展出展の西村多美子さんも卒業生ですね。さて、今回この展覧会は、男性女性問わず、若い人にも見に来ていただきたいと思っていますが、若い方へ向けて何か伝えたいことはありますか?

若い人たちと出会う機会が、私の場合はちょっと稀なんですけど。私が東大闘争の写真を撮った時のように、いまは台頭する大きな流れはないかもしれません。私も当時撮影している時はこんな流れになるなんて思ってはいかなかった。ただ、今の時代デジタル前の時代ですから、革命はデジタルの中で起こるのかもしれないですね。
 

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