Highlights見どころ
    
      POINT1国内過去最大規模となる
ウェグナー大回顧展
      織田憲嗣氏のウェグナー・コレクションは、半世紀以上にわたる研究・収集活動の中核をなし、世界屈指の質と量を誇ります。その中でも《ザ・チェア》の笠木に籐が巻かれたオールドタイプといった初期モデルは、織田コレクションの象徴的存在です。本展ではこうした希少作品を含む《ザ・チェア》のほか、体系的に収集された椅子約160 点とその他家具をご紹介。ウェグナーの生涯を3 期に区切り、家具メーカーとの協働とその特徴を俯瞰しながら、92 年の生涯を紐解きます。タイムレスな魅力を持つ名作椅子の数々を、ヒカリエホールの大空間で一度に目にすることができる大変貴重な機会となります。
      
        《ザ・フラッグハリヤードチェア GE225》 1950
        《パパベアチェア PP19》 1951 〈参考画像〉
        《スウィベルチェア PP502》 1955
        《ヴァレットチェア JH540》 1953
        《オキュラスチェア CH468》 1960
        《スリーレッグドシェルチェア プロトタイプ》 1963
        《ハンモックチェア GE2》 1967
        すべてハンス・ウェグナー 織田コレクション Photo by Kentauros Yasunaga
      
      
        ザ・チェアについて
        「ラウンド・チェア」として1949 年に発表された当初は話題にならなかった《ザ・チェア》。しかし、翌年にアメリカの雑誌で紹介されると瞬く間に注目を集め、シンプルで洗練されたデザインから「究極の椅子」を意味する《ザ・チェア》と呼ばれるようになりました。1960 年、腰痛に悩まされていたジョン・F・ケネディが大統領選挙における長時間に及ぶテレビ討論会のために自らこの椅子を選んで座ったことで、その地位は不動のものとなりました。
        
          
            唯一の“ ザ・チェア” は存在しません。
            最高の椅子とは、
            決して果たされることのない課題なのです。
            — ハンス・ウェグナー
           
          
            
            《ザ・チェア PPモブラー社ポスター》織田コレクション
          
          
            
            ハンス・ウェグナー《ザ・チェア JH503》1949 織田コレクション
          
         
      
    
    
      POINT2幻の椅子
      ファーストチェアを復刻展示
      ウェグナーが17歳のときに手掛け、今日では写真資料のみでその存在が知られている《ファーストチェア》(1931)を本展のために再現復刻、会場で初披露します。家具職人の見習い生として製作された本作品は、戦間期に隆盛を極めたアール・デコ様式の影響を色濃く感じさせ、明快な構造からは彼の才能の片鱗が見て取れます。また、3脚のみ製作された初期の作例である1938 年作の椅子も本展にて《セカンドチェア》として改めて再現復刻。若き日のウェグナーの2つの意欲作を、会場でぜひ間近にご覧ください。
      
        ハンス・ウェグナー 《ファーストチェア2024年復刻版》 1931 織田コレクション 製作協力:匠工芸
        ハンス・ウェグナー 《セカンドチェア2024年復刻版》 1938 織田コレクション 作図協力:中尾紀行(東海大学教授)、KOHSEKI 製作協力:匠工芸
      
    
    
      POINT3名作椅子の舞台裏
      製作過程から哲学に迫る
      飽きの来ない洗練されたデザインと機能性―。ウェグナーの椅子が名作と認められる理由は一体どこにあるのでしょうか? 本展では20点余りの原寸図面やワーキングモデル*などの関連資料を通して、それぞれの椅子の製作背景とデザインの要点を紐解きます。さらにウェグナー自身が語る貴重なインタビュー映像、ウェグナーと8回会見を果たした織田憲嗣氏への特別インタビューにてその哲学を明らかにし、今日まで私たちを惹きつけ続けるウェグナーの魅力と名作椅子の秘密を浮かび上がらせます。会場では、家具モデラー・濱田由一氏によるウェグナーがデザインした椅子の1/5スケールモデルを展示し、ミニチュア椅子の魅力もご紹介します。 * 製作途中のモデル
      
        
          ウェグナーは、一枚の図面に一脚の椅子全体を描き、
          しかも図面から直接に椅子が製作できるように
          すべての説明をそこに描き込める、
          数少ない一人である
          — アイナ・ぺダーセン(PPモブラー社創業者)
         
        
          
          ハンス・ウェグナー 《ピーコックチェア JH550》 1947 織田コレクション Photo by Kentauros Yasunaga
        
      
      
        Yチェアについて
        《Yチェア CH24》は、初期の代表作《チャイナチェア》をもとに生み出されました。一度完成したデザインをさらに深く掘り下げ、新たなデザインを生み出すウェグナーの製作プロセスを象徴する作品です。各パーツは、優れたクラフツマンシップと最新の機械工程技術を融合させることで効率的かつ安定した生産に成功し、現在ウェグナーのベストセラーの椅子となっています。
        
          
            家具に裏面があってはなりません。
              統一性が重要なのです。
              どこが始まりでどこが終わりか
              分かるようではいけません。
              あらゆる角度から観察されて、
              どの側面も視線に耐えられるようでなくてはならないのです。
              
            — ハンス・ウェグナー
           
          
            
            ハンス・ウェグナー《Yチェア 図面》 1950 織田コレクション
          
          
            
            ハンス・ウェグナー《Yチェア CH24》1950 織田コレクション Photo by Kentauros Yasunaga
          
         
      
    
    
      POINT4座れる椅子コーナー
      デザイン性、そして機能性にも妥協のない椅子
      ウェグナーは生前、自身のデザインの理念や考えを、何よりも自分をよく表現する自身の椅子を通して五感で受け取ってほしいと語りました。会場ではウェグナーの椅子を製造販売しているPPモブラー社、カール・ハンセン&サン社の現行モデルに座れるコーナーが出現します。目と手、そして体全体で名作椅子を体感することができます。
      
        
          私の作品は芸術作品ではありません。
          日用工芸品なのです。ですから手で触ってください。
          座ってみてください。そしてよく見てください。
          曲線を手で追って、つなぎ目を見て、
          そして心の流れを感じ取ってください。
          — ハンス・ウェグナー
         
        
          
          ハンス・ウェグナー 1990 ©Carl Hansen & Søn
        
      
      
        
          
            サークルチェアについて
            ウェグナーにとってリングの形をした椅子を作ることは長年の悲願でした。彼はPPモブラー社の職人で盟友のアイナ・ぺダーセンと試作を重ね、無垢材を11 層にスライスし、接着剤を塗り、大きなリングのフレームを成形し作り出す方法を開発。こうしてウェグナー72歳の時に完成したのが《サークルチェア PP130》です。唯一無二の名作椅子は職人との対話と探求心によって生み出されました。
           
          
            
            ハンス・ウェグナー 《サークルチェア PP130》 1986 織田コレクション Photo by Kentauros Yasunaga
          
          
            ピーターズチェアについて
            ウェグナーのコペンハーゲン美術工芸学校時代からの親友ボーエ・モーエンセン。彼に長男が誕生した際、ウェグナーは名付け親として自身の父の名「ピーター」を贈るとともに、本作もプレゼントしました。角が丸く、釘やねじを使わず手で簡単に組み立てられるデザインは、使い手であるピーターの健やかな成長を願うウェグナーの温かな人柄も垣間見えます。
           
          
            
            ハンス・ウェグナー 《ピーターズチェア》《ピーターズテーブル》 1944 織田コレクション Photo by Kentauros Yasunaga