2022.08.14 UP
【かこさとし絵本トリビア】 その⑤ かこさとしの言葉
かこさとしは絵本のみならず様々な著作を残しています。『未来のだるまちゃんへ』(文藝春秋、2016年)はその代表作といえる自叙伝。子どもたちにもわかりやすい表現を長年心掛けてきただけに、とても読みやすく、心に迫るメッセージとともに、ひとりの絵本作家の思想と生涯を知ることができます。
ひとつ、同著から引用します。
「はじめは考えなしにやったっていい。しくじることも、あるだろう。
だけど、しまったと思ったら、次は考えろ。自分でよく考えて、自分をちょっとずつ変えていけばいい。そうして、失敗を乗り越えてゆけるのが人間で、君もその一員なんだよ。」
『未来のだるまちゃんへ』(文藝春秋)より
人間誰しも間違いは犯すもの。問題は間違いを犯すことではなく、その間違いを放っておくことです。失敗を恐れるあまり貴重な経験のチャンスを逃さないように、という願いも込めた子どもたちへのメッセージですが、私たち大人も今一度この言葉の意味を考えてみる必要があるのではないでしょうか。しくじることを一番恐れているのは、そしてしくじったことを認め改めようとしないのは、むしろ大人の方ではないか。大人こそ、この言葉を素直に受け止めることの方が難しいのかもしれませんが、せめて、「未来を生きる子供たち」に大人の事なかれ主義を押し付けることだけはしたくないものです。
さて本展では、他にもいくつかの言葉を抜き出して壁面に切り文字でご紹介しています。作品や写真とともに味わうと感動もまたひとしお。ぜひ会場でご覧ください。
会場展示風景