見どころ
Chapter1絵を描く科学者
絵本作家かこさとし誕生の物語
子どもの頃から絵を描くことが何よりも好きだったというかこさとし(1926-2018)。少年時代から美術全集などを眺めては芸術に対する想いを深め、時間を見つけては絵を描いていました。一方、大学は工学部に学び、世の中の役に立ちたいと科学者を志しました。その後、戦争を経験。生きる意味を見失ったかこは、自画像など絵を描く行為を通して、自身を見つめ、己の生きる道を探ります。卒業後、研究者として勤めるようになった昭和電工で働く人たちの姿を目の当たりにし、生きるために懸命に働く人々のまっすぐな姿に感銘を受けたかこは、その姿を絵に描きました。
絵本作家として広く知られるかこですが、こうした絵を描いていたことはあまり知られていません。本展では、かこの創作の原点とも言える、初期の絵画作品もご紹介。初公開のものも含む貴重な作品が一堂に介することで、絵に対するかこの想いや姿勢、表現力を垣間見ていただけることでしょう。
「美術」と「科学」という二つの要素はかこの創作活動の中核をなし、その後の絵本作品の中に息づいています。