ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展

CHAPTERS章解説

エジプトを「探検」する

18世紀の末にナポレオンがエジプトへ遠征し、同行した調査団が著名な『エジプト誌』を出版したことでヨーロッパにおけるエジプト熱は飛躍的に高まりました。本章ではヨーロッパの旅行者や調査団による遺跡のスケッチや写真とあわせ初期のエジプト探検を紹介するとともに、現在ライデン国立古代博物館が行っている発掘調査の様子を、出土品や映像などを用いて展示します。

王の書記パウティのピラミディオン

新王国時代、第19王朝、セティ1世の治世 (前1290-1279年頃)

ツタンカーメン王の倚像

新王国時代、第18王朝、前1330年頃

ホルミンの供養像

新王国時代、第19王朝、セティ1世からラメセス2世の治世(前1290-1213年頃)

敵を討つラメセス2世

『エジプトとヌビアの記念物』第1巻図版79、1832-34年

エジプトを「発見」する

3000年にわたり繁栄した古代エジプト文明には少なくとも30の王朝が存在したことが知られています。各時代の代表的なスタイルの石碑や様々な遺物を通して当時の世界観や技術の発展等を探るとともに、エジプトがどのように発見・認識されてきたのかを紹介します。

動物の神々

古代エジプト人は一部の神が動物の姿をとると見なし、後期王朝時代とグレコ・ローマン時代には様々な種類の動物が特定の神へミイラとして奉納されました。たとえば、エジプトマングースのイクニューモンは、邪悪なヘビを退治することから、聖獣とされていました。動物の特徴がそのまま神の性格となることも多く、とりわけ文明の後半には関連する多くの遺物が発見されています。

イクニューモン

後期王朝時代(前722-332年頃)

猫の像

後期王朝時代(前722-332年頃)

エジプトの象形文字

古代エジプト文明ではヒエログリフ(神聖文字)、ヒエラティック(神官文字)、デモティック(民衆文字)の3種の文字が使用されました。そのうち墓や神殿などの建造物にも後代に多く用いられたヒエログリフはおそらく前3300年頃に登場し、エジプトの王朝時代全般を通じて使用されたほか、エジプトがクレオパトラの死後ローマの属領となってからも約400年の間生き残りました。 文字は表音や表意の要素を含み、外国人の名前などには音のみをあてて用いられることがありました。
本展では、碑や壺、彫像、パピルスなど多くの遺物に記された文字を間近に見ることができるほか、パピルスに記す際などに用いられた筆記用の筆やパレットなども展示します。

エジプトを「解読」する

古代エジプト人が「来世の家」と考えた墓からは多くの副葬品が出土しています。豪華なミイラ棺、来世の安寧を願う『死者の書』に記された象形文字、呪術的な意味を込めて作られた宝飾品や身代わりの人形「シャブティ」などを通じ、エジプト古代文明を読み解きます。

護符とビーズの首飾り

新王国時代(前1539-1077年頃)

プサムテクのシャブティ

後期王朝時代(前722-322年頃)

金彩のミイラマスク

グレコ・ローマン時代、プトレマイオス朝(前304-30年頃)

死者の書

「死者の書」とは、第2中間期の末頃に現れた葬祭文書の総称で、古代のエジプトでは「日中に出現するための呪文」と呼ばれていました。全体はおよそ200の呪文からなり、死者が永遠の生を来世で獲得するために必要な内容を含みます。有名な第125章は、死者の心臓と真実の女神マアトの羽を秤で比べ、死者が生前に正しい行いをしたかを判断するものでした。そうした文書はパピルスや護符に記され、棺やミイラの包帯の間に置かれました。

ネスナクトの『死者の書』

グレコ・ローマン時代、プトレマイオス朝(前304-30年頃)

棺について

棺は、物理的かつ呪術的に死者を保護するために制作されました。第3中間期以降は、墓の壁画に施されていた図像や呪文が棺やパピルス、碑などに表されるようになり、「死者の書」の一場面が描かれたり、女神ヌウトが描かれるなど、棺の装飾は多様さを増しました。

ホルの外棺

後期王朝時代、第25王朝(前722-655年頃)

アメンヘテプの内棺

第3中間期、第21王朝(前1076-944年頃)

来世への準備、埋葬習慣

来世で永遠に生きるためには、死者に食物と飲料を提供する必要がありました。そのため、墓には多くの食料だけでなくその図像や供物を求める呪文も記され、供物を置く卓が、「供物」を表すヒエログリフの形状を呈することもありました。 古代エジプトでは、死後の世界は現世と同様と信じられていたため、死後の世界で使うための日用品も埋葬されました。

エジプトを「スキャン」する

最新の科学技術により解き明かされつつある古代エジプト文明の新たな側面を紹介します。本章では本展のためにCTスキャンしたミイラの研究成果を世界初公開するとともに、ミイラ制作に使用されたカノポス壺の分析など、ライデン国立古代博物館が進める国際的なプロジェクトを通じ、古代エジプト研究の最先端を映像とともに紹介します。

ミイラを最新型のCTスキャンにかける様子

(2019年)

猫のミイラ

後期王朝時代もしくはグレコ・ローマン時代(前722年もしくはそれ以降)

男性のミイラ

第3中間期 第22王朝、前800年頃

葬祭用
(カノポス用)箱

後期王朝時代(前722-332年頃)

ワニのミイラ

ローマ時代(前30-後395年頃)

ミイラの制作について

来世での生活に備え、肉体はミイラにせねばなりませんでした。完全に保存された肉体のみが、永遠の生を得ることができたのです。防腐処理を担当する神官は遺体を洗って臓器を取り除き、それらを「カノポス壺」と呼ばれる容器に納めました。ついで彼らは約40日の間に4回ナトロン(塩の一種)で遺体を乾燥させ、再び洗い、それから樹脂と油で覆って亜麻布で巻きました。布の間には死者を保護する護符が置かれることもあり、制作時には呪文や祈りの文句が唱えられました。

All images © Rijksmuseum van Oudheden (Leiden, the Netherlands)