
展覧会
出発点―故郷ベルリンで画家を志して
ベルリンに生まれ育ったオットー・ネーベル(1892-1973年)は、初め建築を専門に学び、のちには演劇学校にも通いました。美術だけでなく、建築、演劇、詩作など、生涯、多分野に渡って活躍したネーベルの若き頃からの関心の広さが窺えます。
その後、兵役中にフランツ・マルクの作品に感銘を受けたネーベル。ナチスの弾圧を受けたパウル・クレー同様にスイスのベルンに移住した後も、芸術への純真な姿勢を失うことなく制作活動を続けました。
オットー・ネーベル《避難民》1935年、グアッシュ、インク・紙、オットー・ネーベル財団
クレーとカンディンスキー、バウハウスワイマール校での出会い
バウハウスで教鞭をとっていたゲルトルート・グルノウのアシスタント、ヒルデガルト・ハイトマイヤーと結婚したネーベルは、バウハウスの校舎のあるワイマールに滞在。パウル・クレーやワシリー・カンディンスキーと知遇を得て、彼らの作品から制作への多大なるインスピレーションを受けるとともに、生涯に渡る友情を育むことになります。
「バウハウス設立網領」表紙部分:リオネル・ファイニンガー《カテドラル》、1919年、ジンコグラフィー技法、宮城県美術館
シャガールとマルクに憧れて
1916年、大胆なタッチと非現実的な鮮やかな色彩で動物を描いて人気を博したフランツ・マルクが、36歳の若さで戦死。マルクに捧げられた展覧会をベルリンで見たネーベルは画家になろうと決心します。ネーベル自身「子供の魂から生み出された」と語る色彩豊かな明るい作品は、マルクやシャガールからの影響を思わせます。左の作品は、ドイツなどから移住してきた芸術家たちが集ったスイスのアスコーナで描かれました。
オットー・ネーベル《アスコーナ・ロンコ》1927年、水彩、グアッシュ・紙、厚紙に貼付、ベルン美術館
カラーアトラス―色彩と光に目覚めたイタリアへの旅
1931年の3か月間のイタリア滞在は、ネーベルを大いに魅了しました。風景の中のモチーフは四角い色面に置き換えられ、各都市の個性を色彩で表現しようと試みます。特に『イタリアのカラーアトラス(色彩地図帳)』は、イタリアの各都市での色と形の探求の成果が美しくまとめられた秀逸なスケッチブックです。ネーベルはその後も数回にわたりイタリアを訪れ、自身の視覚感覚によって制作された色彩パレットに基づいて、実際の都市の景観を変容させていきました。
オットー・ネーベル《ナポリ》『イタリアのカラーアトラス(色彩地図帳)』より、1931年、インク、グアッシュ・紙、オットー・ネーベル財団
オットー・ネーベル《ポンペイ》『イタリアのカラーアトラス(色彩地図帳)』より、1931年、インク、グアッシュ・紙、オットー・ネーベル財団
オットー・ネーベル《地中海から(南国)》1935年、水彩・紙、厚紙に貼付、オットー・ネーベル財団
後半生、移住先のスイスで試みた絵画的実験
敬愛するカンディンスキーと同じように、現実を再現するのではない抽象絵画を描こうとしたネーベルは、作品のタイトルにも音楽用語を使用し、音楽を感じさせる絵画を目指していきます。ネーベルは自らの挑戦を、オーケストラの指揮者になぞらえていました。
音楽―色彩によるオーケストラ
オットー・ネーベル《ドッピオ・モヴィメント(二倍の速さで)》1936年、ラッカー塗料・紙、オットー・ネーベル財団
オットー・ネーベル《コン・テネレッツァ(優しく)》1939年、テンペラ・紙、オットー・ネーベル財団
オットー・ネーベル《叙情的な答え》1940年、テンペラ・紙、オットー・ネーベル財団
オットー・ネーベル《満月のもとのルーン文字》1954年、油彩・板、はめ込み式の枠、オットー・ネーベル財団
ベルン

ネーベルが後半生を過ごしたベルンは、湾曲するアーレ川のほとりにつくられたスイスの首都です。中世の面影が残る旧市街が世界遺産に認定されているこ都市で、ネーベルは晩年のクレーとの親交を深めました。
- ■スイス政府観光局
- ベルン:https://www.myswitzerland.com/ja/bern.html
- パウル・クレー・センター:https://www.myswitzerland.com/ja/paul-klee-center-bern.html
- ストーリー クレーの足跡を訪ねる:https://www.myswitzerland.com/ja/story-klee-bern.html

オットー・ネーベル財団
オットー・ネーベルは、1969年にはベルン美術館に約200点の作品を寄贈、1971年には遺される全ての芸術作品や詩作、それに関する資料を設立される財団に遺贈する旨を記した遺言書に署名し、財団の設立を決定しました。財団の使命は、ネーベルから遺贈された作品を管理し、その知名度を高めて広く公開していくことであり、現在は特に絵画作品の展示および詩作品の出版が主な活動となっています。

パウル・クレー・センター
パウル・クレー・センターは4000点を超えるパウル・クレーの作品を所蔵する美術館です。現在オットー・ネーベル財団所蔵のネーベル作品は、ベルンのパウル・クレー・センターに寄託されています。

© Bern Tourismus
ベルン

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パウル・クレー・センター