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レオナール・フジタ展 ― ポーラ美術館コレクションを中心に

2013/8/10(土)-10/14(月・祝)

Bunkamuraザ・ミュージアム

展覧会構成と主要作品の紹介

第1章 モンパルナスのフジタ ―「素晴らしき乳白色」の誕生

 1913年に渡仏し、芸術の都パリで画家として成功することを夢見たフジタ。はじめはパブロ・ピカソらのキュビスムの影響を受け、またピカソのアトリエで目にしたアンリ・ルソーの絵画にも傾倒しますが、次第にパリ画壇で注目を集めていた画家たちとの交流を通して、彼らとは異なる独自の芸術を模索するようになります。1920年代はじめには、絹のようになめらかな乳白色のカンヴァスに、日本の筆と墨を用いて対象を描く独自の手法を完成させ、のちに「素晴らしき乳白色」と称賛される裸婦像をサロン・ドートンヌなどに出品すると、たちまちパリで最も人気のある画家の一人となりました。第1章では、彼をエコール・ド・パリの寵児へと押し上げた「素晴らしき乳白色」の成り立ちとその後の展開について検証します。
 また、「素晴らしき乳白色」の形成に必要不可欠なフジタ独自の絵画下地は、洋の東西における伝統的な絵画技法に対する彼の造詣の深さを反映しており、繊細な墨の描線と油絵具の薄塗りによって対象をとらえる、他に類をみない描法を可能にするものでした。彼の職人的な技法は、近年、保存科学的な調査手法によって解き明かされつつありますが、本章では過去のフジタ作品に対する技法材料研究をふまえ、あらためて彼の絵画の特質を考察します。

 フジタの乳白色の下地の特徴が顕著に表れた作品。滑らかな下地の上に施された日本の墨と、細い面相筆による描線、柔らかな陰影がモデルの肌やベッドシーツ、頭髪、傍らの猫に優美な質感を与えています。 1920年代初めのフジタは肌そのものの質感を表現することを最も重要な課題とし、独自の「乳白色の肌」を完成させました。この作品はフジタの卓越した技術を示しています。

○第1章出品作品:23点(モディリアーニ、スーティン、パスキンらエコール・ド・パリの画家の作品含む)

第2章 フジタの子どもたち―アトリエのなかの物語

 戦争画を描いた画家たちの代表的な存在であったフジタは、戦後、戦争協力の責任を取る形で日本を去り、パリに戻りました。日本とフランス、両国の間で揺れ動く彼の複雑な心境が、当時の作品に見られる、虚実のはざまに存在するような人物や動物の姿に表れているのかもしれません。二度と日本に戻らないと決意したフジタは、パリを活動拠点として、子どもを主題とした絵画を数多く制作するようになります。
 フジタの作品に登場する、東洋人とも西洋人ともつかない、大きな頭と突き出た額、吊り上がった眼と小さな鼻や口を持った子どもたち。彼らは大人にとって愛くるしい対象ではなく、むしろ無表情で思考も感情も読み取ることが難しい、どこかとっつきにくい子どものようにもみえます。
 フジタが描いた子どもたちは、ときにはフジタの理想とする家に住まう子どもであり、また彼のアトリエに訪れる空想上の子どもでした。彼らは私たちの住む大人の世界とは異なる、子どもだけですべてが完結する特別な世界の住人なのかもしれません。本章では、絵画のなかの子どもたちに囲まれながら暮らしたフジタとそのアトリエに注目します。

 大きな円卓を囲んだ11人の少女たち。正面奥に座り手を組んでいる少女は頭に花飾りをつけ、目の前にはプレゼントの包みがあります。窓の外には席につけなかった子どもたちが顔を覗かせ、ごちそうを給仕するメイドも同世代の少女のようです。この作品はフジタが71歳のときの傑作です。子どもたちの表情や動きはどこかバラバラで、フジタが観察する個人主義のフランス社会の特徴が描かれているようです。
 ポーラ美術館の創業家2代目鈴木常司が築いた9500点に及ぶコレクションの記念すべき第一号がこの作品です。

○第2章出品作品:26点

第3章 小さな職人たち―フランスへの讃歌

 フジタは晩年の1958年から翌年にかけて、子どもの「職人尽くし」ともいえるタイル画の連作〈小さな職人たち〉を制作し、それらをパリのアトリエの壁面一杯に飾りました。15センチメートル四方のファイバーボードに描かれた作品で、モティーフとなっているのは、「左官」や「指物師」、「椅子職人」のような手先の技術によって物を製作する人々ばかりでなく、古くからパリの路上でみられた「馬車の御者」や「ガラス売り」のほか、「コンシェルジュ(アパートの管理人)」や「掃除夫」などさまざまな職種の人々です。描かれた子どもたちは、それぞれの仕事に真剣に取り組んでいるものの、そのしぐさにはどことなくユーモアが感じられます。これらの作品は、フジタ本人によれば200枚以上にものぼり、本展では、ポーラ美術館収蔵作品の95点をご紹介します。
 また、フジタのアトリエの扉を装飾するために描かれたパネル画37点も合わせてご紹介します。

 また、本展では、連作〈小さな職人たち〉に先行して制作され、画家のアトリエのスペイン扉を装飾したパネル画も紹介します。これらは2011年8月にポーラ美術館のコレクションに加わった37点の絵画で、〈小さな職人たち〉と同様、タイル状の小さな支持体を用い、その限られた画面の中にユニークな仕草をみせる子どもの姿を描いたものです。舞台の書割りを思わせる装飾的な背景や、極彩色のチェック模様の壁や床、奥行きのない閉鎖的な空間などは、その後の〈小さな職人たち〉にも継承されています。

○第3章出品作品:132点