現存するものは十数点しかないといわれているダ・ヴィンチの絵画。その中から、《モナ・リザ》と同時期に描かれたとされる円熟期の傑作《ほつれ髪の女》(東京会場のみ)が初来日します。さらに、若き日の習作2点(3会場共通)も日本初公開します。
ルーヴル美術館、ロンドン・ナショナル・ギャラリーにも所蔵される《岩窟の聖母》。
ダ・ヴィンチとその弟子によるとされるもう一つの《岩窟の聖母》をプライベート・コレクションより公開します。19世紀に活躍したフランスの巨匠アングルがダ・ヴィンチ作とした作品。個人蔵のため、専門家でも展観の機会が少ない貴重な1点です。
美術史上、最高傑作といわれる《モナ・リザ》。もう一つのダ・ヴィンチ作ともいわれた話題の《モナ・リザ》、衝撃の《裸のモナ・リザ》が日本初上陸。様々な「モナ・リザ」から名画の謎に迫ります。
愛弟子が編集した「ウルビーノ稿本」をもとに17世紀に出版されたダ・ヴィンチの言葉を記した書籍『絵画論』を展示。ダ・ヴィンチの創作メモから、天才の「美の理想」を探ります。
様々な芸術が花開いた華やかなルネサンスの時代は、一方で、戦争の時代でもありました。男たちが強さや社会的権威を求められる中、女性たちは戦場に赴いたり、社会で厳しい状況に置かれている家族に対する憂いや哀しみを抱くことになります。時代を洞察する優れた眼を持つダ・ヴィンチは、こうした女性の内面を的確に作品に反映し、数々の名作を残しました。本展出品作の《ほつれ髪の女》(東京展のみ出品)に見られる、ダ・ヴィンチ特有の“憂いのある微笑み”は必見です。
また、ダ・ヴィンチが生きたルネサンス期のフィレンツェの工房では、衣のひだを素描する訓練が広く行われており、美しい衣紋を描くことは画家の力量を示すひとつのステータスでもありました。鋭い観察眼を持つダ・ヴィンチは、あたかもそこに人体があるかのように衣紋を描き、若いころから、その描写力は注目の的でした。本展ではその貴重な《衣紋の習作》のうち、日本初公開となる2点を紹介します。
美術史上、最高傑作と讃えられるダ・ヴィンチの《モナ・リザ》(ルーヴル美術館蔵)。この作品には、制作年代や絵のモデル、注文主など、未だ解決されていない、いくつもの謎が存在します。
1517年、フランスで晩年のダ・ヴィンチに会ったアントニオ・デ・ベアティス(ダ・ヴィンチと親交のあった枢機卿ルイジ・ダラゴーナの秘書)は、著作『旅行記』の中で、ジュリアーノ・デ・メディチの注文で描かれた彼の愛人「フィレンツェのさる貴婦人の肖像」を見たと伝えています。一方、近年ドイツで発見された1503年のハイデルブルク文書には、「レオナルドが(フィレンツェ出身の)ジョコンド氏の妻リザの頭部を描いた」と記されていました。この1503年に描かれていたという頭部の絵と、1517年にデ・ベアティスが見た肖像画(現在ルーヴル美術館に所蔵される《モナ・リザ》がこれにあたるとされています)。これらが、同じ絵であるという説もあれば、異なる2点の《モナ・リザ》が存在するという説もあります。
・本展では、多くの議論の中、「もうひとつの《モナ・リザ》ではないか」という説もある話題の作品を日本で初めて公開します。
また、上述のデ・ベアティスによる『旅行記』(ナポリ国立図書館蔵)も、貴重な同時代の資料として紹介します。
・「レオナルド派」の画家をはじめ複数の画家たちが描いた《裸のモナ・リザ》と呼ばれる作品が、素描を含め、世界に十数点現存しています。そのことから、未だ発見されていないダ・ヴィンチ本人作の《裸のモナ・リザ》の存在が推測されています。この上半身が裸の「モナ・リザ」の図像を、「ダ・ヴィンチ最後の偉大な絵画的発明」であると定義した学者もいます。
本展では、ダ・ヴィンチの愛弟子ジャン・ジャコモ・カプロッティ(通称サライ)が、師の構図に基づいて制作したとされる作品をはじめとする油彩3点の《裸のモナ・リザ》を紹介します。すべてが日本初公開です。
ダ・ヴィンチの代表作《岩窟の聖母》(1483-86年頃、ルーヴル美術館蔵)を原型とし、本展名誉監修者カルロ・ペドレッティが、ダ・ヴィンチと弟子による共同作品としている《岩窟の聖母》(個人蔵)を日本で初めて紹介します。フランスの巨匠アングル(1780-1867)が観てダ・ヴィンチ作と考えたという大変貴重な作品を、本展で心ゆくまでご鑑賞いただけます。
本展では、ダ・ヴィンチの弟子サライや、レオナルド派のジャンピエトリーノ、ダ・ヴィンチと同時代に活躍したラファエロ工房などの貴重な作品を公開し、ダ・ヴィンチが生きたルネサンス期の美の世界を紹介します。そのほとんどが日本初公開作品です。
ダ・ヴィンチは手稿と呼ばれる膨大なメモを残しました。一部を除きその大半は失われましたが、愛弟子メルツィが師の言葉を集めて編集した『ウルビーノ稿本』(ヴァチカン図書館蔵)の省略版が、17世紀以降『絵画論』として出版されました。そこには、ダ・ヴィンチの絵画に対する概念、画家になるための心得などが細かく記されています。本展では、1651年パリ版(フィレンツェ国立中央図書館蔵)を展示し、ダ・ヴィンチの言葉を紹介します。