ハムレット

Commentコメント

本公演の翻訳を担当する河合祥一郎よりコメントが到着!

『ハムレット』の魅力

シェイクスピア四大悲劇の最高峰『ハムレット』の魅力は、復讐劇の枠組みを逸脱して「人間としていかに生きるべきか」という哲学的問いを希求するスケールの大きさにあると言えるだろう。To be, or not to beの問いは、決して優柔不断な若者の苦悩ではなく、気高さを求める人間の苦悶なのだ。肉体を脱して魂の崇高さをめざすとき、人はいかに戦えるのか。サスペンス仕立ての芝居の作りがあまりにうまくできているので、つい「人殺しのクローディアスをやっつけろ!」と思いたくなるが、ポイントはそこではない。本作には、父を殺されて復讐を考える若者がハムレット以外に3人描かれる。オフィーリアの兄レアーティーズ、ノルウェー王子フォーティンブラス、そして旅役者が語るギリシャ神話の人物ピュロス。一人は激情に囚われ、一人は激情を理性で抑制する。ハムレットは、激情と理性の狭間に立ち、動けなくなる。それは、ピュロスが父アキレウスの仇をとろうとプリアモス王に剣を振り下ろすときに、その剣が「ぴたりと宙に凍りつく」さまに象徴される。まさに剣を振りかざしたとき止まってしまう――それこそがハムレット的状況なのだ。ぜひ舞台をご覧ください。

河合祥一郎 プロフィール

英文学者。東京大学大学院総合文化研究科教授。専門はシェイクスピア。東京大学大学院博士課程修了。英ケンブリッジ大学と東京大学より博士号取得。博士論文は『ハムレットは太っていた!』と題して刊行されている(2001年サントリー学芸賞受賞)。シェイクスピア研究の第一人者で、シェイクスピア全作品上演を目標に掲げる彩の国シェイクスピア・シリーズの企画委員長も務める。主な著書に『謎解きシェイクスピア』『あらすじで読むシェイクスピア全作品』『シェイクスピア 人生劇場の達人』など、訳書に『ピーター・ブルック回想録』『シェイクスピアの驚異の成功物語』などがある。角川文庫でシェイクスピア戯曲の新訳を刊行中。1960年生まれ。

<Present>

河合祥一郎も講師を務める「ほぼ日の学校オンライン・クラス」“シェイクスピア講座2018”の無料視聴クーポンを、オンラインチケット MY Bunkamuraにて本公演のチケットをご購入いただいた方の中から抽選で30名様にプレゼント!