見どころ

愛欲と破滅。ブラジルの太陽が落とす影——
最高のスタッフとキャストで挑む衝撃作。

 現代の若者の生態や心理、人間の欲望や愚かさを、リアルな手法であぶり出してきた作家・演出家の三浦大輔。赤裸々なせりふや過激な演出で賛否両論の話題作を生み出してきた才能が、満を持して、ついにシアターコクーンに初登場する!

 上演するのは、登場人物の複雑な心理を口語体のダイアローグで描き、近代ブラジル演劇の先駆者と言われるネルソン・ロドリゲスの戯曲だ。ある家族の崩壊、男女の愛とセックス、モラルにとらわれることへの警鐘、死への恐怖、そして生への執着——。さまざまなモチーフをセンセーショナルに描いた同作は、73年の映画版がベルリン映画祭銀の熊賞などを受賞し、各国の映画祭で好評を博した。

 キャストも豪華な俳優が集結。妻を乳がんで亡くし、心の傷を負った男やもめエルクラーノに、厚みのある演技で舞台・映像で幅広く活躍する内野聖陽。本能で生き、純粋な心を持つ娼婦ジェニーに、国内外での評価が高まる寺島しのぶ。兄エルクラーノを憎んでいる弟《パトリーシオ》には、音楽劇に初挑戦するなど精力的に活動している池内博之。
エルクラーノの息子《セルジーニョ》には、話題作に立て続けに出演し、注目の若手俳優、野村周平。
そして、エルクラーノの3人のおばに、演出家としても活躍する木野花、コメディエンヌ・池谷のぶえ、大人計画の宍戸美和公といった演技力を誇る女優陣が決定した。そのほか、三浦作品ではおなじみの米村亮太朗と古澤裕介、個性派俳優・榊原毅らがそろい、この問題作に挑む。

 物語はテープレコーダーに録音された娼婦ジェニーの告白から始まり、そこから時間が遡る。禁欲的な生活から一転しジェニーとの愛に溺れるエルクラーノを軸に、父に反抗的な息子セルジーニョ、世間体に縛られたおばたち、シニカルな態度の弟パトリーシオなど、複雑な人間関係が紡がれてゆく。

 激しい感情がほとばしり、心がむき出しとなった言葉、胸がヒリつく会話……。緻密かつ大胆な演出で常にわれわれの眼前に"人間"を見せてきた三浦が、最高のキャストとともにこの衝撃作をどう仕上げるのか。この春一番の話題作を、劇場で目撃してほしい。