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傑作音楽劇、奇跡のカムバック。

Bunkamura25周年記念 もっと泣いてよフラッパー

作・演出・美術:串田和美

2014年2月8日(土)~3月2日(日) Bunkamuraシアターコクーン

稽古場レポート

本格的な稽古開始から10日経った1月16日、稽古場で製作発表&ミニライブが行われた。まずはミュージシャンとキャスト計18名で構成された劇中バンド「オーケストラ・ラ・リベルテ」の演奏メンバーが入場。思い思いのスーツの着こなしが個性的で、すでに『フラッパー』の登場人物そのもののような雰囲気だ。「レディース・アンド・ジェントルメン!」というクラリネットの串田和美のMCで、2幕のオープニング曲と今回新たに採り入れられたベニー・グッドマンの名曲『フライング・ホーム』を演奏。続いて松たか子が登場して美しいバラード『スウィング・メモリー』をしっとりと歌い、最後はキャストほぼ全員が顔を揃えて、松・秋山菜津子・りょうのフラッパー3人娘のソロにコーラスで加わり、タイトル曲『もっと泣いてよフラッパー』の大合唱となった。
「個性豊かなミュージシャンの前で歌ってみて、いいバンドに巡り会えたと感じています」(松)
と歌い手からお墨付きをもらったビッグバンド「ラ・リベルテ」。昨夏からの練習の成果を披露したことで、本番に向けてますます音に磨きが掛かりそうだ。

撮影:細野晋司

年末からは、振付を担当する井手茂太さんも稽古に加わった。意外性あふれる脱力系の振付でコンテンポラリーダンスを身近に感じさせてくれる井手さんは、演劇作品でも、振付やステージングの役割を託され大活躍中。鍛えられたダンサーではなく俳優への振付は、「身体って素直でウソがつけないものなので、まずはその人の歩き方とか体型やしぐさを発見してその人なりの動きをつくり、それに役柄をプラス・アルファしていく感じですね。今回は、特に元自由劇場メンバーの方たちの器用さに驚いています。僕が何かする前に『こういうのどう?』って見せられた振りがすごくおもしろかったりして、そんな時はもう僕は出番ナシ(笑)」
とはいえ、ステージング・振付を託された箇所は少なくない。再演だけに演出家のイメージが鮮明に出来上がっているシーンも多いため、その意図をくみ取ることに努めているという。
「僕の振りって、意味がまったくなくて、不意打ちのようにワケわかんない感じでコミカルな方向にいってしまうことが多いので、今は極力抑えめにして、少しずつ出していければいいかなと思ってます」
今回の個性的で芸達者なキャストが、そのユニークな動きと共振したら、どんなに楽しいことだろう。音楽同様、チラチラと垣間見られる「井手振り」にも、大いに注目したいと思う。

取材:伊達なつめ 撮影:明緒