“悪魔のヴァイオリニスト”と呼ばれた伝説の音楽家、ニコロ・パガニーニ。不世出の才能に恵まれながらも、破滅型の異端児だった彼の人生を変えた知られざる二人の人物がいた。一人は敏腕マネージャー、もう一人は生涯ただ一度の純愛の相手――。パガニーニを演じるのは、欧米で爆発的な人気を誇る美貌のヴァイオリニスト、デイヴィッド・ギャレット。息を呑む超絶技巧で奏でる超本格的音楽エンターテインメントが誕生した!
ル・シネマのオープニング作品が『パガニーニ』だったので、25年ぶりのめぐり合わせですね。「悪魔に魂を売った」と表現される彼の超絶技巧が、前回は個性的なクラウス・キンスキーという役者で表現されていましたが、今回はデイヴィッド・ギャレットという現役のヴァイオリニストが演じることで、実際にヴァイオリンを弾ける強さがあります。彼自身、神童と呼ばれ、ジュリアードで学び、そこでさまざまな音楽と出会うことで、自由に音楽を楽しんで来た人。そんな彼がプロデュースから参加している作品として楽しんで欲しいです。
2013/イギリス/100分
©DNA Films
イギリスで熱烈に愛された大ヒットミュージカルを映画化! 80年代の名曲にのせて贈る、涙と喜びに溢れた家族と、彼らを取り巻く人々の感動の物語。曇り空が続く町、スコットランドのリースで、結婚25周年を迎えた夫婦。新たな人生を始めた帰還兵の息子。目の前の愛と、遠いフロリダで働く夢との狭間で悩む娘。そんな平穏な毎日に予想外の危機が次々と訪れる。バラバラになった家族を再び結びつけた、ある出来事とは――?
楽曲がミュージカルのために作られたものではなく、もともとあるプロクレイマーズのものが使われています。だから通常ならミュージカルとして語られないような、夫婦や若者のリアルな日常が描かれていて、それがかえって新鮮な作品です。舞台になっているスコットランドはリースの街並が本当に素敵。クライマックスの500人によるモッブシーンは圧巻で、音楽と映像の力を感じる作品です。
偉大なる美が集う永遠の都ローマ。ジャーナリストのジェップは、アーティスト、実業家、貴族、モデルなどが集うローマの華やかなセレブコミュニティの中でも、ちょっとした有名人だ。初老に差し掛かった彼は、内心では空虚な乱痴気騒ぎに飽き飽きしているのだった。そんなある日、初恋の女性の訃報をきっかけに、作家活動を再開しようと決意するが……。監督は、卓越した美学と深い感動で全世界を魅了する鬼才パオロ・ソレンティーノ。
ローマという古代からの歴史に押しつぶされそうになりながらも、そこに生きる人々の物語です。華やいだ時代を過ごした後、人生の黄昏時を迎えた主人公の作家と同年代の人は特に共感するところが多い作品かもしれません。この作品は理解しようとするより、ひたすら身を委ねて、世界観に浸って欲しいですね。観ていただければ「グレート・ビューティー」というタイトルの意味が理解できると思います。ローマの懐の深さや歴史、ただよう空気までが凝縮された作品です。
第63回ベルリン国際映画祭特別招待作品
キノフィルムズ
2012/ドイツ・スイス・ポルトガル/111分
©2012 Studio Hamburg FilmProduktion GmbH / C-Films AG / C-Films Deutschland GmbH / Cinemate SA. All Rights Reserved.
すべてを投げ出して、どこか遠くへ行き、別の人生を始めてみたいと思ったことはありませんか? これは、誰もが一度ならず願っては諦める"大人の夢"を実行した、ある男の物語。この世に100冊しか存在しない本と出会い、そこに綴られた一言一句に魂を揺さぶられた男は、スイスからリスボンへ。作家の素顔と謎が明らかになるにつれて、男の人生も色鮮やかに輝いていく──。 世界的ベストセラー小説を欧州のスターキャストで映画化!
衝動的にリスボンに旅してしまう主人公と、そのきっかけになった小説を書いた作家の若かりし頃のドラマが並行して描かれています。日本でいうと、団塊の世代の学生運動と重なるものがあります。その世代の方にご覧いただければ、若い頃を振り返るきっかけになるかな…と。出演者はヨーロッパ映画ではお馴染みの実力派がそろっていて、見応えがあります。映画を見ながら、リスボンを旅していただけるのでは。
2012/フランス・スイス/96分
©Adriano Heitman
今世紀最高のピアニスト、マルタ・アルゲリッチ。24歳の時、ショパン国際ピアノコンクールで優勝後、クラシック界の"女神"として君臨し続ける。しかし、急な演奏会キャンセル、一切の取材拒否、父親違いの3人の娘など、その私生活はミステリアスで謎に満ちている。彼女はいかにして"生ける伝説"となったのか? 実の娘が彼女の素顔にカメラを向け、家族だけが知る"女神"である母と娘たちとの関係をひもといていくドキュメンタリー。
インタビュー嫌い、突然の公演キャンセルと謎の多い、天才ピアニスト マルタ・アルゲリッチを実の娘が追ったドキュメンタリーです。監督自身が母になったことも動機となって、自分の母親にも対峙してみようと思ったのでしょう。天才ピアニストであり、父親の違う三人の娘の母でもあるアルゲリッチを巡る旅…彼女の若い頃の映像も出てくるので貴重ですよ。
2014/アメリカ
©DreamWorks II Distribution Co., LLC. All Rights Reserved
舞台は南フランス――ミシュランに輝く正統派フレンチ・レストランのわずか100フィート先に、インドから移住してきた一家がインド料理店を開店。文化も性格もちがう両店のシェフ兼オーナーは料理バトル勃発寸前に……。果たして料理の神様は、美味しい奇跡を起こすことができるのか?同名のベストセラー小説を映画化した感動の物語。『クィーン』でアカデミー賞主演女優賞受賞のヘレン・ミレンが、フランス料理店のオーナーを演じる。
美味しいものは人を幸せにします。フレンチとインド料理という一見、相容れない料理が人間関係とともに徐々に融合していく"異食"のストーリー。『大統領の料理人』のカトリーヌ・フロの男前なシェフぶりも記憶に新しいですが、オスカー女優ヘレン・ミレンのシェフも楽しみですね。
2013/フランス/93分
昨年10月10日のアデュー公演「椿姫」でパリ・オペラ座エトワールを退いたアニエス・ルテステュ。その姿を2年間追い、自身や多くの関係者の証言と映像で綴る、貴重なドキュメンタリー映画。マルティネス、イレール、ラコット、テスマー等のオペラ座ゆかりの関係者や演目の他、フォーサイスやキリアン、カールソンといったコンテンポラリーの振付家やその作品映像も。パリ・オペラ座に生きた“至高のエトワール”の証がここにある。
『バレエに生きる~パリ・オペラ座のふたり~』と同じ監督が、2013年にパリ・オペラ座のエトワールを退いたアニエル・ルテステュの引退までの2年を追ったドキュメンタリーです。エトワールとしてのプロ意識、誇り、努力といったものを、彼女のインタビューや踊りから知ることができます。とはいえ、その佇まいは決して力まずエレガント。アデュー公演の「椿姫」にはファンならずともぐっとくるものがあります。
2013/フランス・アメリカ・ベルギー/117分
©2013 Ce Qui Me Meut Motion Picture - CN2 Productions - STUDIOCANAL - RTBF - France 2 Cinema
『スパニッシュ・アパートメント』『ロシアン・ドールズ』から時を経て、40歳となったグザヴィエは、ある日、妻から離婚を言い渡される。仕事にも行き詰り、失意の底のグザヴィエは、再び子供たちと一緒に暮らそうとニューヨークへ。アメリカでの永住権を取得するため、奔走するグザヴィエの前に元恋人のマルティーヌが現れて――。"大人になりきれない大人たち"を描いたセドリック・クラピッシュ監督らしい恋愛狂騒曲となっている。
『スパニッシュ・アパートメント』『ロシアン・ドールズ』のその後を描いたシリーズ完結編です。40歳になった主人公のグサヴィエは、妻からは離婚を言い渡され、仕事にも行き詰まり…とまさに中年の危機の真っただ中。グサヴィエが今回住むのは、ニューヨークのチャイナタウンで、国籍や世代を超えた雑多な感じが楽しい。監督はル・シネマで上映した『PARIS パリ』のセドリック・クラピッシュ。今ではスケジュールを合わせることも大変になった人気役者陣が、彼のために再集結しています。
第66回カンヌ国際映画祭
コンペティション部門正式出品作品
2014年セザール賞最優秀監督賞受賞
2013/フランス・ポーランド/96分
©2013 R.P PRODUCTIONS - MONOLITH FILM
劇作家兼演出家のトマは、新作の舞台にふさわしい女優が見つからず落胆していた。そこに女優のワンダが現れ、勝手に役を演じ始める。彼女を無視して帰ろうとしたトマだが、見た目の派手さとは違う彼女の演技に、いつの間にか引き込まれていき――。"舞台"というワン・シチュエーションで、息つく間もない圧巻の演技に惹き込まれる傑作。『ゴーストライター』『おとなのけんか』に続く巨匠ロマン・ポランスキー監督最新作。
マゾヒズムの語源となった作家マゾッホの小説「毛皮を着たヴィーナス」に着想を得て映画にしたものです。女優ワンダを演じるのはポランスキー監督の奥様。正直、他の映画で観たときは演技派という印象ではなかったのですが、この映画で女優開眼。シチュエーションによって豹変する演技は、見ていてゾクゾクします。演出家を演じているマチュー・アマルリックがポランスキーの若い頃にそっくり。ふたりの火花散る演技合戦を、とくとご堪能ください。