ラインナップに戻る

N響オーチャード定期 2011-2012シリーズ
N響オーチャード定期 2012-2013シリーズ
N響オーチャード定期 2013-2014シリーズ
N響オーチャード定期 2014-2015シリーズ

N響オーチャード定期2011/2012シリーズ

第70回  2012/7/8(日)15:30開演

ソリストインタビュー | INTERVIEW

N響オーチャード定期には2度目の登場となる小菅優さん。N響とは2003年以来、07年、08年、11年と共演を重ね、信頼関係で結ばれている。小学生の頃からドイツに暮らす彼女に、シューマンなどについて話をきいた。(2012年4月19日・KAJIMOTOにて)

N響オーチャード定期には2003年以来、2度目の登場となりますね。

「N響と共演したのはそのときが初めてでした。N響は歴史があるオーケストラなので緊張したのですが、一緒に弾いてみたら、温かかった。それ以来、共演するたびに帰ってきたみたいな感じがしています。みなさん、すごく優しいし。一つ一つの楽器との対話もすごく楽しめます」

N響にはどのような印象をお持ちですか?

「細かいところまで洗練された音のする、繊細なオーケストラだと思います」

今回はシューマンのピアノ協奏曲を演奏されますね。

「シューマンは自分のレパートリーの中心です。協奏曲は何度も弾いています。すごく愛情のこもった曲で、クララへの思いが伝わってきます。これまでいろいろな指揮者の方のアドバイスを取り入れたり、いろんな実験をしたりして、私の演奏も変化しています。今回は初めて共演させていただく指揮者なので、どういうシューマンになるか楽しみです。シューマンのピアノ協奏曲は、第1楽章の中間部とか、管楽器との対話が多いので、N響の素晴らしい音楽家の方々とじっくりリハーサルをして、室内楽的な面を楽しみたいと思っています。第3楽章は、何かを求める意志の強さや心の流れが見えるようで、自分にもその気持ちが乗り移ります。そうすると、楽しくてしょうがなくなる。それはコンサートでしか味わえないものです」

この曲のどういうところが難しいですか?

「アンサンブル的なところですね。ソロだと自分の自由な表現ができますが、協奏曲ではオーケストラがどう応えてくるかで変わります。ルバートしたくなる曲ですが、そうするとアンサンブルが難しくなります。場面の移り変わりが多いので、それをどのようにまとめるかも難しいです。ピアノとオーケストラとのリズムの掛け合いも難しいけど、面白いです」

シューマンの音楽についてはいかがですか?

「シューマンの曲は最初に通して弾いた時に、こう弾きたいというのがわかります。自分と似ているのかもしれません。彼の物語から入っていくところが好きです。私も本や物語が好きで、物を書くのも大好きです。シューマンのファンタジーの世界には、ロマン派的な憧れ、戯れ、感情表現があり、それが自分にもぴったり合っています」

ザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学を卒業されていますが、今もザルツブルクにお住まいですか?

「ザルツブルクには10年住んで、昨年、ミュンヘンに引っ越しました。ドイツに戻りたかったのです。ミュンヘンはオペラとオーケストラが素晴らしいので。 私にとって、オペラとオーケストラが日常にあることが大事なのです。自分のリサイタルの日付を忘れて、オペラのチケットを買ってしまったり(笑)。モーツァルト、ワーグナー、シュトラウス、そしてプッチーニがすごく好きです。コンサートではハイティンク指揮バイエルン放送響のブルックナー交響曲第4番が素晴らしかった。コンサート通いはすごく楽しいです」

日本にもしばしば帰っていらっしゃいますね。 

「私は日本人の要素も大事だと思います。日本の食文化でも、陶器でも、N響でも、繊細で美しいものを大切にする誠実で真っ直ぐな姿勢を持っています。日本的な面も西洋音楽に反映していいと思っています。自分のパーソナリティにも日本的な面が入っています」

これからのご予定を教えてください。

「ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会は半年に1度のペースでやっているので、あと2年はかかります。秋にカメラータ・ザルツブルクとのツアーがあり、モーツァルトの最後の8つのピアノ協奏曲を弾くのですが、これはすごく大きなプロジェクトです(注:11月にすみだトリフォニーホールで演奏会あり)」

最後にお客様にメッセージを。

「聴衆が音楽を作るみたいなところがあって、お客様がどうかは弾いている側にも伝わってきます。それによって私の弾き方も変わります。それが楽しみです」

インタビュアー:山田治生(音楽評論家)