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民衆の敵

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正義の男はなぜ「民衆の敵」となったのか?
イプセンの慧眼が現代社会を映す傑作が登場

本当は知らない方がよかったかもしれない“不都合な真実”を告発するには勇気がいる。しがらみや忖度だらけの社会の中で「そりゃ正しいのはわかるけど、そう目くじら立てなくても」と、空気が読めない変わり者扱いされるのがオチだ。実際にそうなってしまった男が『民衆の敵』の主人公トマスである。

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“近代演劇の父”イプセンは、『人形の家』『ヘッダ・ガブラー』など日本でも人気が高い。人間のエゴ、モラル、欲望といった根源的テーマから時代や社会をあぶり出す目線は常に鋭いが、1882年発表の本作は正面から社会問題を扱った異色作だ。
地元の環境汚染に気づいた医師トマスは真実を告発するが、身内の権力者は隠蔽を謀り、協力を約束したマスコミには裏切られ、いつしか裸の王様に。それどころか真実を見ようとしない市民らに苛立ち、彼らを攻撃するトマスこそが「民衆の敵」だと糾弾されてしまう。嘘と不誠実が横行する政治の腐敗、保身に走る人々、権力におもねるマスコミ、告発側が犯罪者扱いされる逆転の構造、“標的”を完膚なきまでに叩きのめす大衆心理の恐ろしさ―。130年以上前に書かれたとは思えないほど現代社会に重なるイプセンの慧眼には驚愕する。トマスとて決して聖人君子的な正義のヒーローではなく、暴走する正義ゆえに家族の幸せを危うくしてしまう。ひと色ではない人間の脆さ、愚かさに満ちた登場人物たちが、みな人間くさくて魅力的だ。
2016年『るつぼ』でシアターコクーンに初登場した演出家ジョナサン・マンビィと堤真一が再びタッグを組み、この骨太な傑作に挑む。緻密に戯曲を読み解き、社会的テーマを劇場空間や群衆の動きも含めて立体的なドラマに仕立てる演出手腕に注目だ。孤高の主人公を演じる堤をはじめ、安蘭けい、谷原章介、大西礼芳、赤楚衛二、外山誠二、大鷹明良、木場勝己、段田安則と、芝居好きにはたまらない実力派から注目の若手まで厚みのある役者陣が揃った。追い詰められた男の告発の果てに何が待ち受けているのだろうか。

文・市川安紀

Storyストーリー

温泉の発見に盛り上がるノルウェー南部の海岸町。
その発見の功労者となった医師トマス・ストックマン(堤真一)は、その水質が工場の廃液によって汚染されている事実を突き止める。汚染の原因である廃液は妻カトリーネ(安蘭けい)の養父モルテン・ヒール(外山誠二)が経営する製革工場からくるものだった。

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トマスは、廃液が温泉に混ざらないように水道管ルートを引き直すよう、実兄かつ市長であるペテル・ストックマン(段田安則)に提案するが、ペテルは工事にかかる莫大な費用を理由に、汚染を隠ぺいするようトマスに持ち掛ける。一刻も早く世間に事実を知らせるべく邁進していた、新聞の編集者ホヴスタ(谷原章介)と若き記者ビリング(赤楚衛二)、市長を快く思っておらず家主組合を率いる印刷屋アスラクセン(大鷹明良)は、当初トマスを支持していたが、補修費用が市民の税金から賄われると知り、手のひらを返す。兄弟の意見は完全に決裂し、徐々にトマスの孤立は深まっていく。カトリーネは夫を支えつつも周囲との関係を取り持とうと努め、長女ペトラ(大西礼芳)は父の意志を擁護する。そしてトマス家に出入りするホルステル船長(木場勝己)もトマスを親身に援助するのだが……。
トマスは市民に真実を伝えるべく民衆集会を開く。しかし、そこで彼は「民衆の敵」であると烙印を押される……。

Chart相関図

Director演出

Castキャスト

★・☆…Wキャスト