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2025.03.01 UP

公演

【公演紹介】
情感にあふれる日本語で堪能するオペラとの出会い―日本オペラ協会《静と義経》―

※本公演は終了しました

 

オペラと言えばヨーロッパの総合芸術のイメージがありますが、日本の小説や神話、歴史などを題材にした日本語で上演されるオペラがあることをご存知でしょうか。それらは『日本オペラ』と呼ばれ《春琴抄》《夕鶴》《修禅寺物語》《天守物語》など、実に多彩な演目が、主に日本語の歌詞を用いて上演されています。

そんな日本文化と西洋文化の融合とも言える日本オペラの名作《静と義経》が、2025年3月に上野・東京文化会館で上演されます。今回は、イタリア語やドイツ語がわからなくてオペラは難しい、と感じている方にもぜひ観ていただきたい全編日本語上演の日本オペラの魅力をたっぷりご紹介します。

 

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■グランドオペラ『静と義経』

鮮烈な印象を残す言葉選びで昭和歌謡の黄金期を築いた作詞家であったなかにし礼氏。作家としても活躍し《長崎ぶらぶら節》で直木賞を受賞するなど、日本語の持つ情感と力強さで多くの人を魅了したなかにし氏が、ライフワークとして取り組んだのが日本オペラの創作でした。

そのなかにし氏が、1993年に開館した神奈川県・鎌倉芸術館の初代芸術総監督に着任し、オペラ《ワカヒメ》でもタッグを組んだ作曲家の三木稔氏に依頼して鎌倉芸術館の開館記念委嘱作品として制作・上演されたのが、グランドオペラ《静と義経》。鎌倉時代の有名な武将・源義経とその愛妾・静御前の情熱的で悲劇的な愛を、静御前の一途で強い思いを軸に描く、ドラマティックな日本オペラです。

2019年 日本オペラ協会創立60周年記念公演「静と義経」(C)公益財団法人日本オペラ振興会
鎌倉・鶴岡八幡宮の舞殿で静が白拍子を披露する場面。鎌倉で初演されたオペラにふさわしい厳かで迫力あるシーンです。

 

●なかにし礼による“全編日本語上演”のオペラ

この作品の一番の特徴は、全編日本語で上演されるオペラであること。なかにし氏の情感にあふれる力強い日本語の歌詞が、日本オペラに挑むために鍛錬を積んだ歌手たちによって、まるでセリフのようにいきいきと歌い継がれ、登場人物たちの心情を観るものに強く訴えかけます。

「オペラの世界に入って十三年、私は『日本・日本語・日本人』という熱い思いを抱きしめながら仕事をつづけてきた。三文詩人の魂の叫びというより、やはり、日本人の血のうずきと言って良いのではないかと思う。」(『鎌倉芸術館開館記念事業公演 オペラ《静と義経》全3幕◎プログラム』より)

と、なかにし氏が1993年初演時のプログラムで語るように、鎌倉時代を生きた日本人である静御前と義経、そしてそれを取り巻く人々の生き様や熱い思いが、なかにし氏の紡ぐ情熱的な歌詞から伝わってくるようです。

2019年 日本オペラ協会創立60周年記念公演「静と義経」(C)公益財団法人日本オペラ振興会
義経と別れ、形見の「初音の鼓」を手にした静が、義経への愛のために生きることを誓う第一幕のラスト。
静が絶唱するアリア《私は巫女》では、その歌詞や歌声から強い想いを感じられます。

 

●和楽器×オーケストラ 作曲家・三木稔が紡ぐ日本オペラの美しい世界

数々の日本オペラを手掛けた世界的な作曲家・三木稔氏の音楽も《静と義経》の魅力のひとつ。アリア(独唱曲)のドラマティックな展開はもちろんのこと、日本語の歌詞による重唱(2人以上で歌われる曲)の掛け合いは、ぜひ劇場で体感したい美しさと迫力です。

また《静と義経》の音楽は、通常のオーケストラに二十絃筝(にじゅうげんそう)と鼓(つづみ)が組み込まれた和洋の特別編成。一見相容れない組み合わせに思える西洋の楽器と和楽器が自然に融合し、オペラでありながら日本の伝統文化を感じさせる優雅で壮大な音楽が、観客を《静と義経》の世界へ誘います。

2019年 日本オペラ協会創立60周年記念公演「静と義経」(C)公益財団法人日本オペラ振興会
第二幕の幕開きに歌われる群衆や白拍子たちのにぎやかな合唱は、平安時代末期に編まれた《梁塵秘抄》の「今様(流行歌)」を基にしたもの。アリアや重唱とは異なった趣で、にぎやかな町の様子が伝わってきます。

 

●強く情熱的に生きた静を描きだす、現代の女性たち

一人の女性の情念とも言える愛を描く《静と義経》を演出するのは、生田みゆきさん(文学座演出部)。2024年には第31回読売演劇大賞優秀演出家賞、令和五年度(第74回)芸術選奨新人賞を受賞している、まさに新進気鋭の演出家です。オペラ・演劇ともに数多くの演出を手がけている生田さんならではの人物像をさらに深く掘り下げた演出で、なかにし礼氏から受け継いだ壮大で優美な日本オペラがさらに見応えのある作品としてブラッシュアップされることに、期待が高まります。

そして2019年の再演から引き続いてタクトを振るのは、田中祐子さん。錚々たるオーケストラとの共演だけでなく、オペラ指揮者としても着実に実績を残しており、2017年日本オペラ協会 原嘉壽子《よさこい節》、2018年名古屋二期会 團伊玖磨《ちゃんちき》、2021年池辺晋一郎《千姫》、2023年日本オペラ協会 三木稔《源氏物語》など、日本オペラにおいても多くの経験を持つ、現代の日本オペラ上演になくてはならない指揮者の一人です。日本オペラ演出初挑戦の生田さんが「得難いパートナー」(生田みゆき公式Instagramより)と信頼するマエストラ・田中さんと、東京フィルハーモニー交響楽団、そして二つの和楽器が紡ぐ三木稔氏の壮大で優美な音楽にも注目です。

左)生田みゆきさん(演出)、右)田中祐子さん(指揮)

鎌倉時代という嵐の中を生きた静の女の生き様と情念を、現代を生きる2人の女性が演出家と指揮者としてどのように描きだすのか、その挑戦をぜひ劇場でお楽しみください。

 

●愛と情熱を賭けて挑む、二人の静

□砂川涼子さん(3/8(土))

美しくまろやかな歌声と可憐な舞台姿で高い人気を誇るソプラノ歌手。《トゥーランドット》リューや《カルメン》ミカエラなど可憐で繊細なキャラクターを演じて聴衆を魅了し続けている彼女が、その高い表現力で静の情念をどのように演じるのか、注目が集まっています。

□相樂和子さん(3/9(日))

次代の日本オペラを担う存在として期待を寄せられているソプラノ歌手。2歳から民謡を学び、のちにオペラに魅了された彼女は日本オペラにも数多く出演し、自ら着物の着付けもこなし能の稽古にも励む、日本オペラへの強い愛の持ち主。そんな彼女が演じる強く一途な静に、期待が高まります。

◎相樂さんも出演された、本公演のレクチャーコンサートのハイライト動画が公開されています。こちらもぜひご覧ください。
 「静と義経」レクチャーコンサートハイライト(YouTube) > ※外部サイトに遷移します

 渋アートでのレクチャーコンサートご紹介ページも併せてご覧ください。
 【イベント】オペラ『静と義経』レクチャーコンサート >

 

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★3/9(日)アフタートーク開催

3/9(日)14:00公演の終演後、会場内にてアフタートークが開催されます。当日の公演チケットをお持ちの方は、事前予約不要で参加可能です。終演直後の興奮冷めやらぬ中、指揮の田中祐子さん、演出の生田みゆきさんをゲストに迎えてのトークをぜひお楽しみください。

《アフタートーク登壇者(予定)》
 MC:江原啓之さん(バリトン)、郡愛子さん(日本オペラ協会総監督)
 ゲスト:田中祐子さん(指揮)、生田みゆきさん(演出)

 

《公演開催概要》

※本公演は終了しました

日本オペラ協会公演 日本オペラシリーズNo.87《静と義経》全3幕

なかにし礼 作・台本/三木稔 作曲、字幕(日本語/英語)付き日本語上演

公演日時:2025年3月8日(土)、9日(日) 各日とも14:00開演(13:00開場)
     各日とも13:15より会場内にて作品解説あり

チケット:S席16,000円、A席13,000円、B席10,000円、C席7,000円、D席5,000円、E席3,000円(税込)
     チケットは、日本オペラ振興会チケットセンター(電話またはWeb)、各プレイガイドにて発売中。
     *3/8(土)14:00公演は残席僅少
     *青春割引チケット、ヤング・フレッシュマンチケット、障がい者割引あり。
     *くわしくは公式サイトをご確認ください。

会場:東京文化会館 大ホール
    JR上野駅 公園改札から徒歩約1分
    東京メトロ上野駅 7番出口から徒歩約5分
    京成上野駅 正面口改札から徒歩約7分

上演時間:約3時間

鑑賞サポート:ヒアリングループ、レティッサ、手話通訳(作品解説)、筆談ボード、点字パンプレット(概要版) ※くわしくは、日本オペラ振興会チケットセンターへお問合せください

 

オペラ《静と義経》公式サイト:https://www.jof.or.jp/performance/2503-shizuka ※外部サイトに遷移します

 

本公演のお問合せ・ご予約:日本オペラ振興会チケットセンター
 03-6721-0874(平日10:00~18:00)
 https://www.jof.or.jp ※外部サイトに遷移します

 

主催:公益財団法人日本オペラ振興会、公益社団法人日本演奏連盟
都民芸術フェスティバル主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団

 

参考:(以下、外部サイトに遷移します)
株式会社AMATI > 田中祐子 ​​​https://www.amati-tokyo.com/artist/conductor/post_6.php 
ぶらあぼONLINE > アーティスト名鑑 > 砂川涼子(ソプラノ) https://ebravo.jp/artists/ryoko-sunakawa
ぶらあぼONLINE > 期待のソプラノ・相樂和子が名作日本オペラ《静と義経》の静役に挑む https://ebravo.jp/archives/182623